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96 郷に入らば、ごまめの歯ぎしり。

「私には4人の子がおりますが、この3人の婿達は子づくりの才能もありまして、出産1年後の最初の月にきちんと子づくりを成功させてくれるのです。 他の方々の様に何か月にも渡って子づくりをしなくて良いので仕事が捗るのですよ。」

「御館様に魔力の使い方をご指導頂いたお陰です。」

「お館様はお忙しいのに、我々の訓練に何度も付き合って下さったのですよ。」

「お館様のお陰で、子種を出すタイミングが良く判るようになったのです。」

「えっとぉ、貴族の家でも子づくりの訓練をするのですか?」

高位貴族家である御館様が、婿殿達の子づくり訓練に付き合ったと聞いて驚いた。

「勿論ですわ。 子づくりは屋敷の総力を挙げて取り組む大切な行事ですからね。 屋敷に居る者全員が心を1つにして取り組むのです。 皆が参加するからこそ、生まれた子供は皆の子供となり、大勢の愛情に包まれて良い子に育つのです。」

御館様が教えてくれた。

「はあ。」

子供が大切にされるのは子づくりに皆が参加するかららしい。

前世の常識では全く理解できない仕組みに、俺の頭が付いて行けない。



「この3人は出張子づくりでも、沢山の子宝を授けましたのよ。」

「出張子づくり?」

なんじゃそれ。

「帝国にある高位貴族家の婿には、国内における血の穢れを薄めるため、年に1回婿の1人が遠い街まで出かけて子づくりする事を義務付けられています。 この3人は初めて会った方を相手にして、4割近い子宝率を残しているベルンでも指折りの子宝師なのですよ。」

そういえば遠い街まで出かけて子づくりすると言う話は、聞いた事があるような気がする。

子宝率って、妊娠させた率かな。

打率4割?

イチローでも達成出来なかったぞ。

いや、盗塁率か?

しかもアウェーで。

「スゴイデスネ。」

同じ相手と何回子づくりをしたかなど、詳しい事は判らないけど、子宝率4割は凄いのかもしれない。

知らんけど。



冒険者のおっちゃんに、花街にある男性用の店が子づくりの訓練をしていると聞いた事が有った。

どうやら、前世とは違って、今世の子づくりには訓練が必要らしい。

俺、訓練なんて何もしてないけど、大丈夫かな。

「平民でも子づくりの時には家の者だけでなく、近所の者達も大勢が協力しますわ。 ですから生れた子は家の子であると同時に近所の子として大事に育てられるのよ。」

スグニ様の言葉で、祭りの夜にあちこちから聞こえた“セイヤ、セイヤ”の掛け声それぞれが、大勢の声だった事を思い出す。

自分達が子づくりの手伝いをして生まれた子だからこそ、近所の人も叱るべき時にはきちんと叱れるのかもしれない。

「そうなんだ。」

俺の頭は混乱したまま。

ピンク色の脳細胞は勿論、灰色の脳細胞でも付いて行けなかった。



「子づくりは貴族屋敷にとって、一番大事なお祭りですの。」

「前日は本番に参加する者達が皆、栄養のある美味しい料理を食べて英気を養うのです。」

「当日は早朝から参加者全員が身を清め、本番に備えます。」

「3日間の子づくり期間が終わると、参加した使用人達全員に酒や料理が振る舞われます。」

御館様と婿殿達が代わる代わる説明してくれた。

「使用人全員にですか?」

「はい。 特別手当も頂けるので、休みの日に街に繰り出す者も多いようです。 勿論、裏方に回って祭りを支えてくれていた使用人達全員にも相応の御祝儀が渡されます。」

「そうなんだ。」

子づくりがそんなに大々的なものとは知らなかった。

夫婦以外は誰も居ない寝室で、こっそり声を潜めてする前世の性行為とは全然別物という事は何となく判った。

まあ大きな声で掛け声を掛ける時点で、“秘め事“ではなくなっているよな。

ご近所にも今子づくりをしていますって宣伝している様なものだから。

この世界では、隣の家から子づくりの声が喧しいと怒られる事も無いのだろう。



貴族の女性は怖いと聞いていたけど、話してみたら御館様は明るくて優しい若奥様だった。

婿殿達も偉ぶる所の全くない良い人たちだった。

偉そうにしている貴族に限って、誇れるのは爵位や血筋・先祖の偉業だけで、本人には何の能力もない事が多いと熊が言っていたが、ナオール家の婿殿達は違っていた。

それぞれが皆一芸に秀でているだけでなく、容姿も優れている。

御館様と婿殿達との仲も良く、お互いを大切に思っている事がひしひしと感じられた。

ともかく、この世界では、恋愛と子づくりは全くの別物だと言う事は何とか理解出来た。

驚いたけど、ちょっと安心。

婿殿達の前で子づくりしても大丈夫らしい。

とは言え、初めての事なので不安も大きい。

ええい!

郷に入らば、ごまめの歯ぎしり。

経験など全くない俺だけど、体力だけは自信がある。

力の続く限り腰を振るだけと開き直った。



お茶を頂きながら暫く話をしたら、いよいよお籠りの準備。

俺は風呂へと案内された。

朝入ったばかりだけど、お籠りの直前に風呂に入って体を清めるのは当然の事らしい。

メイドさん達大勢が風呂場で待っていた。

これはワイバーン討伐の祝賀会の時と同じパターンだと気が付いた。

あの時はギルドのお姉さん達に全身をめっちゃ丁寧に洗われた。

あの時と違うのは、体の1部が元気になっている事。

精通があった時から、やたらと元気になる事が多くなった。

ギルドのお姉さん達の胸をガン見すると、前屈みに歩かないと不味い事になるので、最近はなるべく見ない様にはしている。

見ない様に気を付けても、自然と胸に目が行ってしまうけど。

予想通り、風呂場ではメイドさん達に全身くまなくめっちゃ丁寧に洗われた。



風呂から上がると、柔らかな布で全身を拭かれた。

「ご案内致します。」

厚手のガウンの様なものを着せられて廊下に出た。

冬の最中なので、ちょっと肌寒い。

廊下を進むと、先の方から賑やかな声と手拍子が聞こえて来た。

「「「「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!」」」」

「「「「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!」」」」

どゆこと?

訳が判らないままに賑やかな声のする方に連れて行かれた。


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