95 無理、無理、無理、ぜ~ったいに無理。
案内されたのは、広い護衛スペースがある貴族用の応接室っぽい所。
宝石が沢山付いた上等そうなドレスを身に纏った女性が待っていた。
「伯爵家のソレニ様で御座います。」
スグニ様が御館様を紹介してくれた。
「ソレニ=ナオールで御座います。 英雄殿のお籠りに選ばれた事、光栄に存じます。」
カーテーシーって言うのだったかな、アニメで見た貴族女性の様な挨拶をしてくれた。
いや、貴族女性の様なでは無く、ナオール家の御館様だからモノホンのお貴族様だ。
20代前半に見えるめっちゃ綺麗な女性。
立ち姿からも、流石は貴族と言える気品が感じられた。
貴族女性に精密鑑定を掛けてはダメとレイに言われたので鑑定は掛けていないが、気配探知だけでもこの女性がかなりレベルの高い強者なのは判る。
あれ?
婿殿達がスグニ=ナオール、ハヤク=ナオール、ヨーク=ナオールで、御館様がソレニ=ナオール?
直ぐに早く良く治るのは良いけど、それに直ったら手打ちにされる?
ちょっと警戒心が湧いた。
「どうぞお掛け下さい。」
御館様に促されて、ソファーに腰を下ろした。
浅く腰掛け、背筋を伸ばす。
前世のネットで観た面接姿勢。
御館様は俺の向かい側。
3人の婿殿は御館様の後ろに立った。
壁際にはシバクさんと侍女さんらしい女性3人、メイドさんの服を着た4人の女性。
皆立ち姿がモデルみたいに綺麗でめっちゃカッコイイ。
流石は高位貴族家の使用人と言った感じ。
そんな中に、七五三服を着た12歳になったばかりの俺。
アウェー感が半端ない。
「ショータ閣下のご活躍はスグニから伺っております。 ショータ閣下はベルンの街を救われた英雄殿。 わたくしは今日のこの日を心待ちにしておりました。」
「えーと、難しい言葉は苦手なので、失礼があるかも知れませんがお許し下さい。 私は冒険者ですので、ショータと呼び捨てにして下さい。」
「恐れ入ります。 ではショータ殿と呼ばせて頂きますね。」
まあ閣下や英雄殿と呼ばれるよりはまし。
「うん。」
「ショータ殿はベルンの街の英雄殿。 これからもベルンに御留まり頂けるのですか?」
「うん。 ギルドで稼いだお金をこつこつと貯めて、いつかはこの街に自分の回復院を建てて、のんびり暮らしたいと思ってる。」
「ショータ殿はワーバーン討伐の寄付金を全額灯の家に寄付されたと伺いました。 そのお金で回復院を建てられたのではありませんか?」
「人から貰ったお金じゃダメなんだ。 自分で稼いだお金で無いと、俺の回復院だって言えないから。」
「そうなのですか。 灯の家はナオール家が後援している孤児院です。 寄付のお陰で壊れかけていた建物の建て直しが出来ました。 ナオール家として、私からもお礼申し上げます。 でもなぜ灯の家だったのですか?」
「ワイバーンを倒した時に、俺の専属護衛をしてくれたのが、”ベルンの灯“という灯の家で育った冒険者パーティーだったんです。」
「まあ、ベルンの灯がショータ殿を護衛していたのでしたか。」
「ベルンの灯はスグニ様の護衛部隊と一緒に、俺がレベルアップ出来るように魔獣を捕まえて来て、止めを刺させてくれたのです。 ベルンの灯とスグニ様達が俺をレベルアップさせてくれたお陰で、ワイバーンを倒せました。」
「まあ、そうでしたの。 スグニったらそんな事は一言も話してくれませんでしたわ。 そうですか、ベルンの灯の子達がショータ殿を護衛していたのですか。」
御館様はベルンの灯を知っているらしい。
「ベルンの灯とスグニ様達は、命の恩人です。 その恩返しにと思って灯の家に寄付させて頂きました。」
「暗殺ギルド殲滅の褒賞金も全額孤児院に寄付されたと伺っておりますが、こちらはどうしてなのですか?」
「灯の家の子供達が、寄付のお陰で夕食のスープにお肉が入ると凄く喜んでくれたのです。 だったら他の孤児院の子供達にも、夕食くらいはお肉入りのスープを食べさせてあげたいと思いました。」
「ショータ殿はお優しいのですね。」
「子供は国の宝と聞いています。 子供達の笑顔はまさに国の宝、少しでも笑顔が増えるよう、微力ですがお手伝いしたいと思ってます。」
公爵に貰った褒賞金を持って居たくなかったというのもあるが、子供達に“おにく”を食べさせてあげたいと思ったのは事実だ。
「12歳になったばかりでそこ迄考えて下さるとは、驚きました。」
「いえいえ、俺なんかスグニ様には全然かないません。 スグニ様は俺の様な平民にも気さくに声を掛けて下さいましたし、護衛部隊の兵士達も俺達の指揮官はベルン1と自慢しておりました。 良い人に巡り合えたおかげで俺も命拾いしました。」
「そうでしょうとも。 ナオール家の婿達は大陸1ですの。 見た目は勿論、仕事の能力も高いし、何よりとっても優しいのですよ。」
いやいや、いくら何でも大陸1は褒め過ぎじゃね?
「いえいえ、御館様程では御座いません。」
褒められたスグニ様が、直ぐに御館様を褒め返す。
妙に甘ったるい雰囲気がするのは、俺の気のせいか?
「そんな事はありませんわ。 3人の婿達は皆顔立ちが良いので、ベルン学院在学中は学院中の女学生達に毎日追い回される程の人気でしたの。 その上、スグニは剣術大会の優勝者、ハヤクは経営学科の首席、ヨークは会計学科の首席、女の子達が何とか婿にしようと争っておりましたのよ。」
御館様が甘ったるい声で婿自慢を始めた。
これって、どう答えれば良いんだ?
「ソウデスカ。」
「群がる女どもを、私が実力で蹴散らして婿にしたのです。」
「お館様こそ、ベルン学院1の美女と帝都迄名が轟いていたのです。」
「その上、入学時から卒業まで5年間連続で学院首席。」
「魔法練度の高さも群を抜いておりました。」
3人の婿が次々と御館様を褒める。
俺はどうすれば良いんだ?
口から砂糖が出そうなこの甘ったるい雰囲気の中で、俺が御館様と子づくりするの?
無理、無理、無理、ぜ~ったいに無理。




