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94 何なんだ、このコントは。

今日はいよいよお籠りの日。

朝から風呂に入れられ、公爵拝謁の時に作った服を着せられた。

この時期の子供服は直ぐにサイズが合わなくなる筈なのに、ほんの少し裾を伸ばしただけで、サイズ直しを殆どせずに着られるって何なんだ?

ぐぬぬ。

鏡を見ると、相変わらずの七五三。

はぁ。

容易が出来たらいざ出陣。

千歳飴は持たないぞ。



「用意が出来ました。」

ギルマス室に入ると、何故かナオール子爵、いや今は陞爵したからナオール伯爵がいた。

「おう。 お籠りの件についてだが、初めてのお相手は少しでも知っている所が良いと思って、ナオール伯爵家にお願いした。」

ええっ!

何じゃそれ、全然良くねえよ。

ナオール伯爵は、大規模討伐の時に沢山の魔獣を捕まえて、俺に止めを刺させてくれた護衛部隊の指揮官様だ。

いきなりお世話になった人の奥様とするのか?

しかもお世話になった人の目の前で?

予期していなかった出来事に、初めて会った時以上にテンパってしまった。



「えっと、本日は御日柄も宜しく・・・。」

「その節は世話になりました。 ショータ閣下のお陰で、我が部隊は1人の死者も出さずに全員が無事帰還出来ました。 改めて御礼申し上げる。」

確かに俺の敬称は閣下だが、閣下と呼ばれるとケツがこそばゆくなる。

「堅苦しい言葉は苦手ですので、ショータと呼び捨てにして下さい。」

「Aランク冒険者は侯爵待遇、呼び捨てはあまりにも恐れ多いので、ショータ殿と呼ばせて頂きます。 私の事はスグニと呼んで下さい。」

お貴族様にショータ殿と呼ばれるのも違和感満載だが、まあ仕方ない。

「はあ。」



「ショータ殿の戦いぶりは護衛隊指揮官としてすぐ傍に居りましたから、特等席で見させて頂く事が出来ました。 あの時のショータ殿は、全身から気魄を漲らせ、急降下で突っ込んで来るワイバーンを止めるがごとくに両手を差し出して、次々とワーバーンを葬って行きました。 今思い出しても体が震える程、それはもう見事な戦いぶりで、私の目にしっかりと焼き付いています。」

「いえ、偶々旨くいっただけですから。」

見事も何も、あまりの恐ろしさに闇雲にドンを連発しただけ。

誉められるような戦いでは無かったぞ。

「屋敷に帰ってお館様にお話した所、御館様は大の竜滅フアンになりまして、何度もお話を強請られただけではなく、ベルン劇場へも足を運ばれてショータ殿の劇をご覧になった程です。 今回ショータ殿のお籠り相手に決まった時にはそれはもう大喜びで御座いました。」

御館様にお話したのはいい、伯爵はあの場で実際に見ていたから事実を話した筈。

でも劇場の芝居はかなり尾ひれが付いていたと思うぞ。

観てしまったと言うなら、御館様が変な誤解をしていない事を願うしかない。



「いえ、その節は護衛部隊の皆さんに魔獣を捕らえて来て頂き、有難う御座いました。 あれだけ多くの魔獣に止めを刺していなかったら、ワイバーンを倒す事は出来ませんでした。 護衛部隊の皆さんは命の恩人です。」

「とんでもない。 ショータがワイバーンを倒していなければ、我が部隊は全滅でした。」

「いえ、いえ。 俺の方こそ。」

「いえ、いえ。 私の方こそ。」

「そこは魔獣に止めを刺せと指示した俺のお陰だ。」

ギルマスが割って入った。

「「どうぞ、どうぞ。」」

何なんだ、このコントは。



ギルドの皆に見送られ、ギルド前に待たせていたナオール家の馬車で屋敷に向かう事になった。

「公爵閣下より新しい屋敷を拝領いたしましたが、今はまだ改装中なのでお籠りの儀は以前から住んでいる屋敷で執り行う事となりました。」

「あっ、陞爵おめでとうございます。」

お祝いを言うのを忘れていた事に気が付いて、慌ててお祝いを言った。

「恐れ入る。 教会再建に尽力した事が公爵閣下に認められたそうだ。 偶々3伯爵家に何やら不正があったとかで、伯爵位に空席が出来た事で今回の陞爵となった。 運も良かったのであろう。」

「運も実力と言われています。 ナオール家の日頃の行いに女神様が応えたのでしょう。」

闇ギルドによる前公爵家暗殺については知らされていないらしかった。



屋敷に着くと、エントランスで優しそうな中年女性と、2人の青年が待っていた。

「領地を差配している第2婿のハヤクで御座います。」

スグニ様が第2婿殿を紹介してくれた。

「ハヤクで御座います。 少しでも英雄殿のお役に立てたらと思い、領地から駆け付けました。」

いやいや、駆け付けなくて良いから。

婿殿に傍で見られるのは、正直に言って嫌だぞ。

「事務関係を差配している第3婿のヨークで御座います。」

「伯爵殿から大活躍のお話を聞いて、是非お会いしたいと思っておりました。 精一杯お手伝いさせて頂きますので、宜しくお願い致します。」

いやいや、お手伝いは要らないから。

3人の婿殿達に見られながら子づくりすると考えたら、めっちゃ緊張して来た。

「そしてナオール家の家令、シバクで御座います。」

中年の女性は家令だった。

遠くから見た時は優しい感じだったけど、近寄ったらめっちゃ強いのが判る。

魔力も大きそうだし、練度も相当高そうだ。

「家令を務めさせて頂いておりますシバクで御座います。 何かご要望が有りましたら、私に申し付け下さい。」

家令って使用人達の総取締って聞いた事がある。

迂闊な事をしたらシバかれそう。 

「お館様が御待ちですので、ご案内致します。」


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