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92 冗談も休み休み言って欲しい

「ショータ、年越しの祭りの日はどうするんだ?」

冒険者のおっちゃんに聞かれた。

そう言えば去年も聞かれたような気がする。

「街に出るのは危ないから、今年もギルドで訓練する。」

年越しの祭りの日は、各ギルドも殆どがお休み。

冒険者ギルドは酒場と治療室だけが営業する。

年越しの日には各地で一斉に祭りが行われるから、遠くからベルンに来る者は殆ど居ないが、傭兵や冒険者達といった血気盛んな男達が休みを取るので、街に荒くれ者が増えてトラブルが起こり易くなる。

俺にとっては、何よりも身の安全が最優先事項。

祭の日は去年同様にギルドに引き籠り、剣や魔法の鍛錬に精出す事にした。



年越しの祭りが終わった。

去年同様に魔法や剣の鍛錬が出来るかと思ったが、怪我人がひっきりなしに来て忙しかった。

漸く怪我人の治療を終えて治療室を出たら、酒場にいた冒険者のおっちゃんが果実水を奢ってくれた。

「お疲れ。」

「こんなに怪我人が多いとは思わなかった。 去年は殆ど居なかったのに、今年は何かあったの?」

「周辺国が一斉に軍を引き上げたから、今年は砦の見張りも少なくして、殆どの兵がベルンに戻って来たんだ。」

「周辺国が一斉に軍を引き上げたって、何かあったの?」

「ベルンには最強のAランク冒険者が居るからだな。」

俺?

俺のせいで怪我人が増えたの?

判らん。



「どゆこと?」

「Aランク冒険者は1個師団、1個師団と言ってもショータには判らんか。 凡そ1万の軍勢を1個師団というのだが、Aランク冒険者の戦力はこの1個師団に匹敵すると言われている。」

「はぁあ?」

俺が1個師団?

俺は、強い兵なら1人でも余裕で倒せる、鼠の魔獣すら倒せないんだぞ。

俺が1万の兵よりも強い?

冗談も休み休み言って欲しい。



「そもそもショータは自己評価が低すぎる。 ワーバーン1頭は、1個師団が大損害を出しながら、ようやく勝てるかどうかという魔獣だ。」

「そうなの?」

「そうだ。 1頭でも1個師団と対等に戦うワーバーンを、12頭も倒したAランク冒険者がベルンにいる。 そんなベルンに攻め込もうとするような無謀な国は無い。」

「・・・・。」

ワイバーンは勝手に自滅しただけなので納得出来ない。



「ともかく国境線が平和になったから、国境の警備に就いていた領軍や傭兵も殆どがベルンに引き上げて来たということだ。」

「・・・うん。」

引き上げて来た理由には納得できないが、大勢がベルンに戻って来た事は判った。

「血の気の多い男達が大勢ベルンの街に戻ったんだ、当然喧嘩も起る。 元々血の気の多い奴が殆どの冒険者が指をくわえて見ている筈が無いだろ。 当然冒険者達も喧嘩に加わるからショータの仕事が増えたと言う事だ。」

「そうなんだ。」

「領兵や傭兵は教会で治療して貰うが、冒険者は腕が良い上に安く治療してくれるショータが居るから安心して怪我が出来る。 そいつらが治療所に来たって言う事だ。」

いや、安心して怪我をされても困るんだけど。

俺はギルド員しか治療しないから、他の怪我人は教会に行ったらしい。

教会と言えば、街の人達は中央公園で屋台を楽しんで、すぐ近くにある大教会に礼拝に行くのが例年の順路だったが、去年は殆どの人が礼拝には行かなかったと聞いた。

「教会で礼拝する人は増えたの?」

「おう、今年は殆ど例年並みの混雑だったぞ。」

改革によって教会の評判も回復したらしい。



年越しの祭りが終わったので、俺は12歳。

昨夜は遅くまで怪我人が来ていたので、起きたのはお昼近くだった。

ちょっぴり期待しながら、ズンさんに身長を測って貰った。

1年前は1つ歳をとったのに、身長は全く伸びていなかった。

まあその前に計ってから4か月しか経っていなかったから仕方が無い。

今回は前に計ってから丸1年、伸びていない筈が無い。

予想通り身長が伸びていた。

何と去年よりも2㎝も伸びて、142㎝

待て待て、確か俺の記憶では11歳の平均身長が大体145㎝位だった筈。

この年齢だと1年に6~7㎝伸びる筈だから、12歳なら150㎝を超えているのが普通だぞ。

元々身長が低いのに、伸びるのも少ないって何なんだ?

ササヤカお神ぃ~!

思わず怒鳴りたくなった。



あれ?

“ベロがちょっと大きくなった?”

何となく大きくなった様な気がして聞いてみた。

”我も1つ歳を重ねたので、少し大きくした。ショータと同じだ“

俺が大きくなったと言っていたので、ベロも大きくしたらしい。

大きくと言っても、少しだけなので気付かない人も多いと思う程度。

毎年少しずつ大きくなるなら、怖がられる事も無い。

可愛いのは変わらないので大丈夫。

“うん、毎年少しずつ大きくなれば大丈夫。 2~3年したら俺を乗せてね”

馬は大きすぎて無理だけど、ベロになら乗れそうな気がした。

”任せろ!“

ベロが嬉しそうに答える。

尻尾の蛇さんも嬉しそうに頭を振っていた。



新年の初日が終わり、眠りに就いた。

夢の中にササヤカお神が現れた。

以前と同じ殆ど透き通ったミニ丈のベビードール姿。

おめでたい夢は、“1乳2ケツ3うなじ”って熊に言われたけど、これは乳で良いのか?

俺の方を向いているから、ササヤカお神の尻やうなじは見えない。

めっちゃササヤカだけど、尻やうなじでは無いから、乳という事にしておこう。

ササヤカお神がニコッと笑う。

背筋がゾクッとして体が震える。

神様だけあって、威圧感が半端ない。

”私の世界に、光属性の種を撒き散らしなさい“

鈴を転がすような声で俺に伝えると、ササヤカお神の姿が、ス~っと薄くなって行った。



気が付いたら朝だった。

下着の前がゴワゴワしている。

”私の世界に、光属性の種を撒き散らしなさい“

ササヤカお神の声が今でも耳に残っている。

昨夜見た夢をしっかり覚えていた。

ひょっとして夢じゃ無かった?

判らん。



熊に呼ばれた。

「精通は有ったか?」

「うん。」

「それは良かった。 これでショータが12歳なのが確定したな。」

「どゆこと?」

「いや、背が低いから歳を間違えているかと思っていた。」

「うるせえ!」

ムカッと来たので熊に怒鳴ってしまった。

自分でも意外な程に背の低さを気にしていたらしい。

「すまんすまん、つい本音が出た。」

それって、全然フォローになってねえぞ。

「それはともかく、夢は見たか? って夢を覚えている奴なんていないか。」

「はあ。」

ササヤカお神が出て来た事は言わない方が良いと直感が告げていた。


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