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90 ベッドが回ったりはしないよね

「精通は子づくりを始めよという女神様からの合図だ。」

「うん。」

「子づくりは宝づくりとも言われている。」

「そうなんだ。」

「ところが、この大陸では女性が強いから、どうしても女性を恐がる男が多くなる。 そこで、この国には男が女性を恐れずに子づくり出来るよう、精通があった男に子づくり経験を積んで貰う為の“お籠り”という儀式がある。」

子づくり経験を積んで貰うって、アレをするって事?

某縦縞球団の監督じゃ無いから、“アレ”って優勝の事じゃ無いよ。



「お籠りって何?」

始めて聞く言葉なので、取りあえず聞いてみた。

「年明け2か月目は、お籠り月とも呼ばれていて、精通の来た者は、3日間女性と共に生活して、子づくり体験をする。」

「へッ?」

思わす変な声が出てしまった。

この世界では、精通の1ヶ月後に童貞喪失って決まっているの?

しかも3日間?

「大丈夫だ。 夜は女性の胸に手を置いたまま眠らせて貰える。 これがえも言えぬ心地よさで、男は1偏に女性嫌いが治る。」

いやいや、お籠りが嫌だから驚いたんじゃないぞ。

どちらかと言えば、いやどちらかと言わなくても俺は女性が好きだ。

「相手の女性と気が合わないとかは無いの?」

「3日間に子づくりする相手は1日に2人の6人だ。 子づくりの相手は男が選ぶのでは無いと言う事を体感して貰う為だな。 男は女性に子種を注ぐ事が大事なのであって、自分の楽しみの為に子種を放出するのは、神の摂理に逆らう事でもある。 動物も魔獣も雌が雄を選ぶ。 これは動物も魔獣も神によって生み出されたので、無意識に神の摂理に従うからだ。」



前世の男は、自分の性欲発散の為に射精する事が多かった。

男達のエロ話は、殆どが女性を性欲発散の対象にする話ばかり。

言い方は悪いが、女性を生きたオナホールの様に考えている男は多い。

男に選んで貰う為に女が着飾るのを、当然の事と思い込んでいる男も多い。

動物社会では雄は雌に選んで貰う存在なので、雄は毛繕いをして身ぎれいにし、声を磨き、雌に好まれる仕草を懸命に覚える。 

自分の子孫を残させて貰う為に、雌の関心を引こうと必死に努力するのが雄だ。

あれ?

雄が雌を選ぶのは前世の人間社会だけ?

今世が自然で前世が不自然?

訳が判らなくなって来た。



「6人って、そんなに大勢の女性を用意出来るの?」

「お籠り月は街の女性が総出で精通のあった男の相手をする。 花街にある男用の店も全て営業を止めてお籠り場となる。」

「総出って、結婚している女性もなの?」

「若者に子づくりを指導するのだから、経験豊富な既婚者が相手をするのは当然だ。」

えっ、婿殿は嫉妬したりしないの?

「婿殿は知っているの?」

「大抵の場合は婿殿が横について指導してくれる。」

まてまて、嫁の子づくりを婿殿が監視するのではなく、指導?

そう言えば祭りの時も婿が付き添って発射のタイミングを教えると冒険者のおっちゃんが言っていた。

それでも前世の意識が染み付いた俺には実感が湧かない。

判らん。

前世の常識、今世の非常識?

頭が混乱して来て何も考えられなくなって来た。

「そうなんだ。」

「お籠り月を楽しみにしている女性も多い。 初物好きという性癖を持つ女性は特に楽しみにしているらしいぞ。」

「・・・・。」

前世で童貞好きの女性を主人公にしたビデオを見た事がある。

ベルンにもそう言う趣味の女性が居るらしい。

俺としてはちょっと怖いかも。



「年越しの祭りまでまだ間があるのにショータを呼んだのは、ショータとのお籠り希望が殺到しているからだ。」

「へッ?」

またしても変な声が出てしまった。

「お籠り希望って、子づくりの相手って事?」

「この街で最も望まれている男は、血の澱みのない男だ。 そのためにわざわざ遠い街から男達に来て貰う為の祭りまで開くのだからな。」

「うん。」

「ショータは生れた所も判らない。 帝国中に問い合わせたが全く手掛かりが無い。 という事は遥か離れた遠い国か、別の大陸出身と考えられる。 すなわち、この地域の血が全く混じっていない男という事だ。 しかも属性は希少中の希少である光属性。 魔法属性は遺伝する事が多い。 さすがに光属性は希少なだけに遺伝する割合が少ないが、それでも光属性の者の血筋からは、光属性の者が生れる確率が他の血筋よりも高くなる。」

言われてみればその通り。

「う・ん。」



「その他にも英雄殿のお相手がしたいと希望する者もいる。 英雄殿の子種を浴びれば身が清められ、病魔や悪霊に取りつかれる事は無いと信じている者も多い。 まあ吟遊詩人の詩や芝居でそう思い込んでいるだけだろうがな。」

「はぁ。」

芝居の主人公と俺を同一視している人が多いらしい。

溜息しか出ない。

吟遊詩人さん、芝居の戯作者さん、お願いですから尾ひれは程々でお願いします。

「ともかく、是非お籠りの相手をさせてくれという申し込みが俺の所に殺到している。」

「殺到って、それは言いすぎでしょ。」

「文字通りの殺到だ。 既に大きな木箱が一杯になっている。」

「はぁあ?」



ベルンの街にはすぐに馴染めたが、性に関する事だけはビックリすることだらけ。

モテ期?

俺にもモテ期が来たのか?

って、喜んでいる場合じゃない。 

この世界は男が女を選ぶ世界では無く、女が男を選ぶ社会。

1気に不安が広がった。

「えっとぉ、どうやって相手の人を選ぶの?」

「基本的には、受胎可能日に当たる女性を、爵位の高い順に選ぶのが無難だな。」

「爵位って、貴族も申し込んでいるの?」

「貴族女性達がショータを狙っているのはベルン中に知られているから、平民はハナから諦めている。 何と言っても英雄殿の“初めて”だからな。」

何じゃそれ。

「という事は、今申し込んでいるのは全員貴族って言う事?」

「当然だ。 まあショータの場合はギルドに来たその日に、誰彼なく女性職員の乳をガン見していたから、誰が相手でも問題無いとは思うがな、ガハハハ。」

熊は俺を何だと思っているんだ?

確かに色々な女性の胸をガン見した覚えはある。

でも、それとこれとは違うだろ。

「・・・・。」

思わず黙り込んでしまった。

「相手が貴族の女性となると、早めに選んで連絡する必要が有る。 3日間のお籠りだから、誰の屋敷でお籠りをするのかも決めなければならないからな。 それで少し早いがショータに話をした訳だ。 爵位の順で問題は無いか?」

「俺には判らないから、任せる。」

「おう、任せろ。」



熊に丸投げしたのは、選び方よりも確かめておきたい事があったから。

「えっとぉ、貴族の女性が子づくりをする場合はぁ、お婿さんが傍についていて、侍女さん達が周りから掛け声を掛けるって、冒険者のおっちゃんが言っていたけど本当なの?」

ちょっと恥ずかしくて言い難かったけど、勇気を出して聞いてみた。

「おう。 だから初めてでも安心して子づくりに専念出来るぞ。」

いやいや、横で婿殿が見ていたら、全然安心出来ねえよ。

その上、侍女さん達が周りを取り囲んで、一斉に掛け声を掛けるんだぞ。

何の罰ゲームなんだ。



「えっとぉ、子づくりするベッドが回ったりはしないよね。

「ああん、ベッドが回る? なんだそりゃ?」

「いい、気にしないで。」

昔のストリップ劇場にはステージから客席中央に張り出した、“でべそ”と呼ばれる円形のステージがあって、そこで本番ショーをやっていたとネットに書いてあった。

本番ショーの間は踊り子さんと相手の男性を乗せたまま円形のステージが回転して、色々な角度からお客さんが観られるようにしていたらしい。

それを真似して、“夢の回転ベッド”と言う看板を掲げたラブホテルがあちこちに出来たそうだ。

貴族の屋敷だから、ひょっとして回転ベッドだったらどうしようと不安になったが、流石にそれは無いらしくて、ちょっと安心した。



「普通の男は、精通から2~3年して漸く子づくりに成功するが、80年前にワイバーンを倒した勇者は、12歳のお籠りの儀で2人の女性に子を授けたそうだ。 ワイバーン12頭を倒したショータなら、お籠りの儀で子を授けられるかも知れんな、ガハハハハ。」

笑い事じゃねえぞ。

結局お相手の選定は1つだけ希望を言って、後は熊に丸投げした。

俺が知っている貴族の女性は、変態のマール=ミーエ嬢だけ。

あの人だけは勘弁して欲しいと熊に希望を言った。

俺には聖水を掛けられる趣味は無い。

いや、聖水を掛ける趣味も無いぞ。


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