85 仲良きことは美しき哉。
結局、警備隊の半数で捕らえた暗殺者を詰め所に連行し、隊長以下の半数が俺と一緒にアジトに向かう事になった。
監視の人達も、目立たぬようにしながらぞろぞろと付いて来ている。
少し増えて20人程になったが、場所を譲りあったり友達の振りをしているのを見ると、みんな仲が良さそう。
仲良きことは美しき哉。
俺の邪魔をしない事は判っているので、最近は監視の人達が気になら無くなった。
アジトへの案内人は屋根の上にいた見届け人の男。
交差点や分かれ道の度に「どっちだ?」と聞けば「こっちだ。」と答えてくれる。
途中で返事が遅れた。
自白が切れかけたらしい。
継続時間は1時間位か。
暗殺者のお陰で”自白”の事が色々と判って来た。
“自白”
自白を掛け直す。
素直に案内を再開してくれた。
自白は連続で掛けても大丈夫なようだ。
今回は色々と自白魔法の実験が出来たから襲ってくれたのは有難かった。
俺の自白もレイの睡眠も無詠唱なので、監視の人達にも何が起こっていたのかは判らない筈。
いざとなればAランクのオーラで暗殺者がビビった事にしておこう。
俺にはオーラなんて欠片も無いけど、報告書に困る人にはその辺で妥協して貰うしかない。
更に40分程歩くと、スラム街にしては小ぎれいな2階建ての建物に案内された。
”レイ、見張りを眠らせて“
”承知“
「ベロ、好きなだけ暴れて良いよ。但しボスは生かしておいてね。」
最近運動不足を嘆いていたベロには、好きに暴れさせてあげることにした。
「ワゥン(やった~)!」
雄叫びを上げて、ベロがアジトに突進した。
ギャーギャー、ゴンゴゴン、ドタンバタン、ガチャン、ドガンドゴン。
建物の中が急に賑やかになった。
少しでもベロの気が晴れたら俺も嬉しいから、心の中で思う存分暴れてやれと応援する。
騒ぎが収まるのを道の向かい側でぼけ~っと立ったまま待った。
警備隊の皆さんは時々飛び出して来る裏ギルド員に備えてスタンバイしている。
何となく俺一人がサボっているようで、申し訳ない感じ。
表に逃げ出して来た闇ギルド員は、即座にレイが眠らせ、警備隊が縛り上げる。
警備隊員達には俺の魔法で眠らせているように見せているけど、俺の睡眠魔法はまだまだ練度が低いので、近くで止まっている相手にしか効果が無い。
離れた所で、ましてや走っている人間には到底掛けられない。
やっぱりレイの魔法練度は凄いと改めて感心した。
20分程で建物の中が静かになった。
「終わったみたいだね。一緒に来る?」
「重要な書類などがあるかもしれないので、建物内を捜索させて頂きたい。」
隊長さんに声を掛けたら、警備隊で建物を捜索したいと言ってくれた。
探知で建物を詳しく見ると、建物の中には部屋が沢山あるし地下室もある。
「警備隊で捜索をしてくれれば手間が省けて助かるよ。」
「警備隊としては有難いです、お任せ下さい。」
長年追い続けていた闇のナーベなので、証拠などを色々と見付けたいのだろう。
探知によると、ベロは2階奥の部屋。
白い点と一緒なので、白い点がボスらしい。
他には白い点が全く無い。
俺の頼んだ通りに、ボスだけを生かしておいたらしい。
という事は、80人程の闇ギルド員は外に逃げ出して捕まった数人以外は、1人残らず全滅したと言う事。
ナムナム。
建物に近づくと、中から血生臭い匂いが漂って来た。
俺は血の臭いが苦手。
込み上げて来る吐き気を堪えながら魔法を発動した。
”浄化“
臭いや汚れには、範囲回復よりも浄化の方が効果は高い。
嫌な臭いが一瞬で消える。
前世のファ〇リーズよりも良く効いた。
「ボスは2階奥の部屋にいるようです。 他に生きている者はいません。」
警備隊長に声を掛け、警備隊を引き連れて建物に入る。
「流石は竜滅殿、中の様子も判るのですね。 情報感謝します。 俺は竜滅殿と一緒にボス部屋に向かう。 1人は警備本部に応援を頼みに行け、荷車の手配も頼む。 他の者は手分けして建物を捜索しろ。」
警備隊長の声で、隊員達が部屋や地下へと散った。
壁のあちこちに肉片がこびりついているので気持ち悪いが、血は全く残っていないし、臭いも無いので我慢できる。
浄化の練度がだいぶ上がっている事が判った。
暗殺者さん達は色々と役に立ってくれる。
警備隊長と2人でボス部屋に向かった。
2階奥の部屋に入ると、大きな机の前にベロが寝転んでいる。
横に転がっている痩せたおっさんがボスなのだろう。
睡眠魔法で寝かされている様なので、ボスをそのままにしてまずは部屋の捜索。
探知でボス部屋を詳細に調べた。
探知には、奥の大きな机の後ろにある壁の向こう側に隠し部屋らしい狭い空間が映っていた。
壁に近寄ってみるが、どう見ても普通の壁。
調べてみるが、どうやって壁の向こうに行くのかが全く判らない。
AI搭載の検索エンジンに念話で聞いてみた。
“レイ、壁の向こうにある隠し部屋に入れる?”
”魔糸を使ってからくりを動かせば造作ない。 壁の前に立って机の真後ろの壁に手を当てていろ“
レイが即座に解答を出してくれた。
うん、便利。
レイに言われた通りに壁に手を当てると、壁が奥に押し込まれて開いた。
レイが開けたのだが、これなら俺が開けたっぽく見える。
レイの存在は秘密なので、有難いやり方だった。
奥の部屋に入って、天井にライトを浮かべる。
部屋の中が明るくなって、部屋全体が良く見えるようになる。
3畳程の狭い部屋には高さ1.5m、幅1m程も有る大きな金庫と、天井まである大きな棚が2つあった。
大きな棚には大小様々な箱がぎっしりと置かれている。
「えっとぉ~、この部屋の物は俺の物という事で良いのかな?」
一緒に部屋に入った警備隊長さんに聞いてみた。
熊が、盗賊や犯罪者のアジトにある物は、討伐した冒険者の物だと冒険者達に言っていたのを思い出したのだ。
一応この場の責任者である警備隊長に確認を取った。
「この大陸では、盗賊のアジトに有る物は討伐者の物となります。 闇ギルドは盗賊に準じるとされておりますので、ここに有る物は竜滅殿の物です。 ただ、違法薬物や盗品が混じっている場合は、手続きが少々複雑になりますので、出来れば一度確認させて頂けると有難いです。」
「そっか、そうだよね。 じゃあ、一旦俺の魔法袋に入れて、警備隊の本部で確認して貰おうか。」
「そうして頂けると有難いです。」
沢山ある箱を、大きな棚ごと収納に入れた。
警備隊長が目を丸くしている。
1個ずつ入れるのはめんどくさかったから仕方が無い。
棚ごと収納しておけば、出すのも楽。
「この金庫は開けた方が良い?」
「開けられるのですか?」
警備隊長が驚いている。
“レイ、金庫の鍵を開けられる?”
”造作ない。鍵の所に手を翳せ“
「精密探知で調べたら何とかなりそうな気がした。ちょっと待ってて。」
レイに言われたとおりに、金庫の鍵の所に手を翳す。
カチャッ。
小さな音がした。
“開いたぞ”
「開いたみたいだよ。」
金庫のハンドルを引くと扉が開いた。
「竜滅殿は鍵の掛かった金庫も開けられるのですね、驚きました。」
これはあまり人前で使わない方が良さそう。
金庫破りが俺の本職だと思われたら拙いし、俺の家系が盗賊の家系と思われるのも拙い。
そもそも俺は大盗賊の3世じゃないし、ワ〇サーP38も持っていない。
ベロも斬〇剣は使わないぞ。




