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79 ”セィヤ、セィヤ、セィヤ、セィヤ“

今回も少し性的な話となります。

あくまでもフィクションです。

フライノベルとして軽く読み流して頂ければ幸いです。

苦手な方は飛ばして下さっても全く問題はありません。

宜しくお願いします。

頼運

「そう言えば、ショータは花咲き祭の時はずっとギルドにいたな。」

「うん。 よその街から大勢の観光客が来るって聞いたから、危ないと思ってギルドの外には出なかった。」

「まあいつもより揉め事が多いのは事実だから、その方が安全だな。 それはともかく、この大陸では、どの街も年に1度は大規模な祭りをする。」

「そうなんだ。」

「何で祭りをするか知っているか?」

「おめでたいから?」

「記憶を無くしたせいで、祭りの知識も全然無いみたいだな。」

「祭りの知識?」

「祭りは、離れた所に住んでいる男の子種を貰う為にやるんだ。」

「離れた所に住んでいる男の子種?」

また訳の判らない言葉が出て来た。



「普通の住民は危険な街の外に出る事は無い。 生れてから1度も他所の街に行った事の無い者が殆どだ。 ベルンは大きな街だが、それでも顔見知り同士が結婚する事が多くなる。 つまり、長い年月が経つと、近所の人は皆が遠い親戚になってしまうという事だ。 親戚同士で子づくりをすると血が澱んで流産や死産が増えるし、成長できない子供も増える。」

そういえば前世でも、血の濃い親戚同士では結婚出来なかった。

「うん。」

「それで、年に1度、領主が金を出し、芝居小屋や吟遊詩人、大道芸人達を呼んで祭りを開く。 これは遠くに住んでいる男達に娯楽を提供するから街に来てくれという事だ。」

「領主が娯楽を提供するの?」

「目的は、街で子づくりをして貰う為だ。 ベルンの住人と血の繋がりの薄い男達が沢山来て、この街の女性との間に子供を作ってくれれば、血の澱みが少なくなる。」

意味が良く判らない。



「街で子づくりって、花街に来て貰うって事?」

「そうじゃねえ。 街の者は、宿を無償で提供する代わりに、奥様や娘達に子種を貰うんだ。」

「え、ええっ!」

ビックリ仰天だ。

「街に来る男達も、只で泊まらせて貰えて祭りを楽しめるのだから、子づくりするのは当然の宿泊料と承知してきちんと協力する。」

「知らない人で大丈夫なの?」

見ず知らずの男を家に泊めるだけでも怖いのに、奥様や娘さんに子種を貰う?

訳が判らない。

「勿論大丈夫なように、婿が付き添うぞ。」

「ええっ、お婿さんの前でするの?」

お婿さんが見ている前で、奥様が知らない男と子づくりするのか?

“寝取られ“とかいう趣味の人がいるって聞いた事はあるけど、この世界は寝取られ趣味の世界なのか?



「当り前だ。 奥様や娘達が最高に高まる瞬間にどういう反応をするかを知っている者がいないと、子種を出すタイミングが合わなくて、子づくりが失敗し易いからな。」

寝取られ趣味じゃなくて、妊娠し易くする為なの?

お婿さんが見ているのは、子種を出すタイミングを教える為らしい。

自分の奥さんが寝取られているのを見て興奮する為では無いようだ。

いや待て。

前世でも交通が発達していなかった頃は、他所の村から子種を貰う為に祭りを開いたと聞いた事がある。

祭が最高潮に達した時に、全ての灯りを消して暗闇にし、その場で子づくりをする“暗闇祭り”というのが日本全国のあちこちで催されていた。

暗闇祭りは無礼講で、既婚未婚関係なく子供を作れる年代の女性であれば全員が参加したと何かの本で読んだ覚えがある。

暗闇では無く、明るい部屋でお婿さんが見ていてくれるなら、前世の暗闇祭りよりも安心なのかも知れない。

って、そう言う問題じゃ無いだろ。

俺は自分の奥様が目の前で、知らない男と子づくりするのを見るのは嫌だぞ。



「祭りの晩にはあちこちで、”セィヤ、セィヤ、セィヤ、セィヤ“という声が聞こえただろ?」

「そう言えば俺の部屋にも聞こえていたね。 祭の掛け声なんでしょ?」

「“セィヤ”というのは、子種が女性の子壺に向かって進んで行く力を増す為の呪文だ。 平民の場合は婿が隣から声を掛ける程度だが、貴族の場合は大勢の侍女達が一斉に”セィヤ、セィヤ、セィヤ、セィヤ“と声を上げるから、それはまあ賑やからしいぞ。」

子づくりしている傍で侍女達が囃し立てている?

ちょっと俺の想像の域を超えてしまって、イメージが湧かない。

昔ストリップ劇場でやっていたという本番ショー?

いや、子づくりはショーでは無いか。

大勢の人が見ているだけでなく、掛け声を掛けている?

訳が判らない。



「え~とぉ、貴族の御館様も祭りの晩には他所の街の男と子づくりをするの?」

「勿論だ、相手はよその街の貴族だ。 貴族の婿は、よその街に行って子づくりするのが義務になっているからな。 毎年何回かは他所の街に行って子づくりをしている。」

ふと思い出したのは、昔は都の貴族が遠い田舎に行くと、領主の妻や娘が子種を貰いに押し掛けて来たと言う話。

日本は農耕民族で隣村であっても行った事が無いという農民が殆どだから、血を澱ませない為に色々と工夫をしていたという話は聞いた事がある。

俺がキリスト教文化に染まり過ぎた現代日本人だから違和感を覚えるだけで、昔の日本人が性に関しては驚く程オープンだったことは俺でも知っている。

為政者にとって何よりも重要だったのは、血を澱ませない様にしながら子孫繁栄を目指す事だった。

“子供は国の宝だ“と、裏ギルドのボスが言っていたけど、昔の日本も子供は村の子としてみんなで育てていた。

今は隣の子を叱っても大問題になってしまうけど。



「えっとぉ~、普通に子づくりをする時も、夫婦の2人だけではしないの?」

ちょっと気になったことを聞いてみた。

「当り前だ。 人間が魔獣に勝てるのは、知恵を伝える事が出来るからだ。 薄っぺらい知識で子づくりをしていたら、子供の数が減って魔獣に圧倒されてしまうだろ。 子種を元気にする呪文を唱える人も必要だからな。 子供は国の宝。 子づくりは皆が知恵を合わせてするのが当然だ。 夫婦だけでするのは余程人が居ないか嫌われている家位だな。」

「・・・、そうなんだ。」

「普通の家では、物心付いた子供達に子づくりを見せて、“セィヤ、セィヤ“の掛け声を掛けさせる。 どこをどうすれば性感が高まり易いか、どのタイミングで子種を出すかを子供の頃から教えるんだ。 だからこの大陸では子供が沢山生まれて、人間が生き残れているとも言える。」

「そうなんだ。」

いつの日にか、素敵な奥様と結婚して、2人でイチャイチャしたいという俺のささやかな願望は泡となって消えた。

自分で財産を築いてお嫁さんを貰っても、2人でしっぽりという事は無理らしい。

婿殿になるのはもっと嫌。

俺のピンク色の脳細胞が活動を停止した。


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