76 俺の乳好きはそんなに広がってるの?
「東虎会のシマは貴族街に近いから、貴族用の家具や古着とかは結構良い物があるぞ。 勿論花街も有る。 女の子達が是非ショータを呼んでくれと言っていたから、来てくれたらショータが好きな乳も触り放題揉み放題だ。」
俺の乳好きはそんなに広がってるの?
確かにおっぱいは大好きだから、女性を見るとつい胸に視線を向けてしまうのは事実だけど、めっちゃ恥ずかしい。
残念なのは、何で触り放題揉み放題が、前世じゃなくて今世なんだ?
前世なら鼻の下を伸ばしてホイホイ付いて行くのだろうが、今世の俺は絶賛監視され中。
監視している諜報員達をぐるっと見回した。
「こんなに多くの監視を引き連れて、花街に行けると思う?」
「大丈夫だ。 未婚の男なら問題無い。 どんどん子種を撒いてくれ、って子種はまだ無理か。」
「えっ、妊娠するのはいいの?」
「子供は国の宝だ。 この街の子供はベルンの宝。 子供が産まれる事は何よりもめでたい事だ。 ショータが公爵から貰ったワイバーンの討伐金を全部孤児院に寄付したって聞いて、ベルンの庶民は拍手喝采だったぞ。 孤児院はみんなの宝を大切に育ててくれている宝箱のような所だからな。」
この世界は子供を本当に大切にしているらしい。
「そうなんだ。 でも俺が寄付した事を、何で知ってるの?」
「花咲き月のお祭りに掛っていた芝居小屋の入り口横に、”我らが英雄竜滅のショータ殿が、公爵から貰ったワイバーン討伐の褒賞金を、全額孤児院に寄付した“と書いてあった。 灯の家の地図もあったから”竜滅のショータ殿お手植えの木“を見に行った者も多い。 灯の家への寄付も結構集まったらしいぞ。」
バンさんや院長先生にしては、段取りが良すぎる。
恐らくネーサン先生の指示だろう。
俺が植えた木は、本当に肉の木になったらしい。
今は朝のスープにも肉が入っているかもしれない。
「そうなんだ。」
「ともかく女が安心して子供を生めるようにするのは男の役割だ。 子が出来ると乳が大きくなって喜ぶ男が多いから店としても大歓迎だ。 まあ子種をばら撒けるほど精力の強い男は殆ど居ないがな。」
「今は無理だけど、撒けるようになったらお願いするかもね。」
いつまでも監視が付いている筈は無い。
監視が無くなったら、ちょっと行ってみたいかも、って思った。
可能性は広げて置く方が良い。
まだ一度も股間が元気になった事が無いのは、ちょっと気がかりだけど。
「おう、いつでも来てくれ。 監視している奴らも店に入ってくれたら売り上げが伸びるから、連中にも声を掛けて一緒に入店してくれたら有難いな。」
俺は花街の客引きか?
やっぱり当分の間は、風俗店に行くのはやめておこう。
「はぁ。」
溜息しか出ない。
「それはともかくとして、もう少し先で北亀会のタトルが待っている。 図書館の近くには西龍会のドラゴがいる。 軽く声を掛けてやってくれるとありがたい。」
「うん、判った。」
どうやら大手の裏ギルドは街の顔役と言った感じで、犯罪組織という訳では無いらしい。
挨拶くらいはしておくのも有りかと思った。
ひょっとして花街に行くかもしれないし。
まだちょっとだけ、心を惹かれていた。
少し歩くと、ずんぐりした背の低い髭モジャのおっさんがいた。
前世のアニメで観た事がある典型的な姿。
1目でドワーフと判った。
鑑定が飛んで来た。
俺も鑑定を返す。
“タトル 58歳 ドワーフ族 男 裏ギルド北亀会元締め 鑑定阻害発動中”
北亀会のタトルさんに間違い無かった。
裏ギルドのボスは皆さん鑑定阻害の魔道具を使っているらしい。
立ち止まって声を掛けた。
「えっと、こんにちは?」
「早速の挨拶、恐れ入る。 ショータ殿とお見受けした。 鑑定には自信があったのだが、このように見事に弾かれたのは初めてなので驚いたぞ。 流石は英雄殿と感服致した。」
「あっ、堅苦しいのは無しね。 ショータと呼んで。」
「それは有り難い。 俺の事はタトルと呼んでくれ。 北亀会は北門の近くを縄張りとしている。 地獄ギルドからは一番遠いが、公爵軍の駐屯地が近いから武器や防具の店が沢山ある。 武器や防具が欲しくなったら、一声掛けてくれれば俺が良い店を紹介するぞ。」
最近は大門ギルドでは無く地獄ギルドと呼ばれていると聞いてはいたが、言われたのは初めてなのでちょっと戸惑った。
「うん、ありがとう。」
いつの日か、鼠の魔獣と戦う日が来たなら、武器や防具が必要になる筈。
まだまだずっと先の気はするけど。
「大規模討伐でのショータの大活躍は、駐屯地でも話題になっていた。 俺がショータに挨拶したと聞いたら羨む奴が大勢いるぞ。」
「あの時ワイバーンを倒せたのは、護衛部隊の皆さんが俺のレベルアップを手伝ってくれたお陰なんだ。 もしも護衛部隊の方に会ったら、感謝していると伝えて下さいね。」
「おう。 そう言えば、大規模討伐の時に治癒師の護衛をしていた奴らが、”竜滅は俺が育てたんだ“、などと言っていたが、本当だったんだな。」
「うん。 みんなが縛り上げた魔獣を運んで来てくれたからね。 沢山の魔獣に止めを刺させてくれたから凄くレベルアップ出来たんだ。 あれが無かったら俺は死んでたよ。」
「ショータがワイバーンを倒してくれなかったら、ベルンの街でも大勢の死者が出た。 ベルンの住民は皆ショータに感謝している。 お陰でショータを称える吟遊詩人と芝居小屋は大儲け、ベルン北公園横にある常設劇場は2軒とも竜滅の芝居で連日大入り満員だ。」
「あはははは。」
公演されている演目が、恥ずかしい芝居になっていない事を願うしかない。
戯作者の皆さん、くれぐれも創作は程々でお願いします。
「足を止めさせて悪かったな。 俺達はショータと敵対するつもりは無い。 うちの縄張りで若い衆が何かやらかしたら、すぐに俺の名前を出してくれ。 若い奴らは血の気が多いから、つい突っ走る事もあるが悪い奴らじゃねえ。 殺されても文句は言わないが、出来れば生かしてやって欲しい。」
「うん、判った。」
タトルさんと別れて暫く歩くと、図書館の近くには2mを越える大男が待っていた。
恐らく西龍会のドラゴさんなのだろう。
「こんにちは?」
上を見上げて挨拶した。
足を止めずに近寄ってしまったら、見上げる程に背が高かった。
「早々の挨拶痛み入る。 拙者は西龍会支配人のドラゴと申す。 見た通りの竜人族だ。」
「ショータだよ。 丁寧な言葉は苦手なので普通に話してね。」
「そうさせて貰う。 西龍会のシマは中央大通りの西側にある魔導具工房や鍛冶工房が並んでいる区域だ。 他には無い珍しい魔道具や希少な金属も沢山ある。 是非1度覗きに来てくれ。」
「俺も今、魔導具の研究をしてるんだ。 今度覗きに行かせて貰うよ。」
「それは丁度良い。 もしも来る時があったら、是非うちの事務所に寄ってくれ。 俺がショータの望む店に案内させて貰う。」
「その時はお願いするよ。」
ドラゴさんの居場所が直ぐに判るように、探知の地図に旗を立てておいた。
色々な金属や素材の鑑定もしてみたい。
どうせなら地元の店に詳しいドラゴさんに案内して貰えたら有難い。




