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73 目には目を、屁には屁を

ブクマ頂きました。

ブクマとお星様はとっても嬉しく思っています。

これからも頑張りますので、宜しくお願い致します。

頼運

最近は図書館へ行く中央大通りの街角に、所在無げに立っている女性が増えて来た。

前世なら、“お姉さん幾ら?”って聞く男もいるだろうが、ここは女性社会。

話し掛けるようなバカな男は1人も居ない。

というより、この社会には異性に声を掛ける程胆力のある男は殆どいない。

女性を相手にする時は、女性の望む瞬間に子種を放出出来ないと、終わった後でボコボコにされるらしい。

冒険者のおっちゃんにチラッと聞いただけなのでよくは判らないけど、子づくりはあくまでも女性主体、男が自分勝手に子種を放出する事は許されないから、女性を相手にすると精神的疲労感が半端ないらしい。

それ程の胆力と精力があれば、風俗店が高給で雇ってくれるらしい。

それに女性の近くには護衛らしい数人の女性がいる。

女性の護衛だからと侮るのは前世の人間。

この世界では女性の方が男性よりも魔力練度が高く、上位魔法を使える者も多いから、瞬発的な身体能力では男性よりも遥かに優れているってズンさんが言っていた。



所在無げに立っていた女性が、俺に目を向けた。

背筋がゾクッとする。

俺を見る目付きもネコ科の猛獣の様に鋭い。

経験値レベルも、魔力練度も相当高いことが気配だけでも判る。

恐らくこの人はかなり高位の女性なのだろう。

この世界の男性が女性を恐がるのが良く判る。

俺も女神様のオーラを経験していなければ、かなりビビったかもしれない。



図書館に行く度に、こうした高レベルの女性をチラホラと見かける。

恐らくは貴族家と呼ばれる領主様。

俺に声を掛けてくるわけではないが、じっと観察しているようには思えた。

何でだろ。

・・・判らん。

こんな女性に”婿殿!“なんて怒られたら、絶対に震え上がる。

前世のTⅤで観た時代劇に出ていた、主人公の姑を思い出す。

余りにも名演技過ぎて、娘さんの縁談に支障が出たと言う逸話もある菅井ナンチャラという女優さん。

背筋が震えあがるような声で、主人公を”婿殿”と呼ぶシーンを俺は未だに覚えている。

やっぱり婿殿は嫌だ。



「ん?」

針で軽く突かれた様な、チクッというような感じがした。

痛いという感じでは無くて、アレって言う感じ。

“鑑定”を使われたようじゃな“

レイが教えてくれた。

”鑑定って、人間にも使えるの?“

”使えるに決まっておろうが“

“そうなんだ、でも何度か自分に鑑定を掛けたけど、何も見えなかったよ”

この世界に来た頃、自分に鑑定を掛けてみたが、全く何も見えなかった。

てっきり人間には使えないものと思い込んでいたが違うらしい。

そう言えばレイは俺に鑑定を掛けていた。

レイだから特別かと思っていたけど、そうではないらしい。

“鑑定レベルが低いうちは、人間の鑑定は出来ぬ”

“そうなんだ”

そういえば自分に鑑定を掛けたのは、この街に着いてすぐの時だった。

草の名前がようやく判る程度の鑑定レベルでは、人間の鑑定は出来ないのだろう。



“経験値レベルや鑑定レベルが高い者に掛けても、何も見えぬ。 自分よりも相手のレベルが低ければ見える。 試しに今鑑定を飛ばして来た婦人に掛けてみるが良い”

”鑑定“

“マール=ミーエ 18歳 人族 女 ミーエ子爵家長女”

見えた。

“人物鑑定の練度が上がれば、もっと詳しい事も見えるようになる”

“そう言えば、今迄植物と武器や防具しか鑑定した事が無かったよ”

“鉱物や魔道具類も、数多く鑑定すればもっとレベルが上がる”

“うん、鍛冶ギルドや商業ギルド、色々なお店にも行って鑑定の練度上げをする”

”それが良い“

”と言う事は、鑑定の練度が高い人には俺のステータスとかが見られていると言う事?“

ちょっと不安になる。

”儂の鑑定でも、神の愛し子という事と幾つかのスキルしか判らぬ。 人族で儂以上の鑑定レベルの者は殆どおらぬから心配は無用じゃ“

”殆どという事は、居るって事?“

”ショータ同様に神の愛し子ならあり得るな“

そうなんだ。

レイって、AI搭載の検索エンジンみたいでめっちゃ便利。



”鑑定されたら、自分が鑑定されたって判るの?“

”レベルにもよるが、判る事が多いな“

“じゃあ、無暗に鑑定は出来ないね”

”鑑定を飛ばして来た相手になら問題無い。 やられたらやり返すのが当然、目には目薬をだ“

そう、目薬を点したら目が良くなるんだぞ、って違うだろ。

目には目を、屁には屁をだ。

“そうだね”

これからは鑑定を飛ばして来た人は即座に鑑定し返す事にした。

鑑定の練度を上げるには繰り返し使うのが一番。

鑑定バッチ来い。



「但し、女性には精密鑑定を掛けるな。 女性は精密鑑定には敏感だ。」

精密鑑定は、じっと見続ける事で相手の持つ情報を詳細に知る鑑定。

暫くの間じっと見続けなければならないし、大きな魔力を使うので相手にも判り易い。

「そうなの?」

「3サイズや体重を知られたら能力を推測されてしまうので、精密鑑定を掛けた人間は相手の女性に執念深く狙われる事が多い。」

「女性の体重は秘密なの?」

「魔法を使えば使う程体重が減る。 3サイズと体重を見れば、おおよその魔法練度が推測出来る。 女性にとって実力を知られる事は、何よりも危険な事だ。」

ただ単にスタイルを気にしているのでは無いらしい。

この世界でも女性は体重を気にするんだ、なんて気楽に思っていたら違っていた。



”まあショータを監視している男連中を鑑定するなら問題は無い。 自分が誰に監視されているかを知って置くのは良い事だからな“

”俺って、監視されてるの?“

“かなりの人数が監視しておるな。毎日の者も居るし、交代で監視に就く者も居る”

”交代している事も判るの?“

“探知を個人に絞れば魔力波動が見える。 ショータは教会の暗殺者に襲われた時、探知相手に旗を立てていたが、それは無意識に魔力波動を覚えていたと言う事だ。」

「そうなんだ。」

「相手の魔力波動を見るように意識すれば、探知の練度も上がる。 旗と同様に、魔力波動が判れば印を付けられるから、近くにいればすぐに判る。 旗と違う所は、何種類かの識別も可能になる事だ。 ショータが意識して消さない限り印は付きっぱなしになる。 監視相手の魔力波動を覚えて印をつけて置く方が良い”

“そうなの?”

”試しに左側の屋根にいる男だけに探知を絞ってみろ“

“うん”

左側の屋根の上にある白い点だけを頭の中でズームアップすると、男の魔力波動が見えた。

魔力波動の形を頭に叩き込むと、白い点が青い点に変わった。

“どうじゃ?”

”白い点が青い点に変わった“

”それで良い。 色は自在に変えられるが、監視者は青と決めておけばよいであろう。 余計な事まで見る必要は無いから軽い鑑定を掛けて見よ“

”鑑定“

ちらっと見て鑑定を発動した。

“ツケール 37歳 人族 男 帝室諜報部員”

皇帝陛下の部下?

何で陛下が俺を監視してるの?

判らん。

“次は大通りの反対側に建っている男だ”

“カンシー 31歳 人族 男 裏ギルド闇鴉構成員”

“次は後ろ30m右側の男だ”

“ビーコウ 28歳 人族 男 ワルダー侯爵家諜報部員”

レイに言われるままに次々と鑑定を掛ける。

全部で16人。

“こんなにいたんだ”

”裏ギルドや闇ギルドは何軒もの得意先に情報を流しているから、ショータの情報を持っている者はかなりの数になるぞ“

”知らなかった“

“儂がショータの従魔になった時、既に10人程監視が居ったから、かなり前から監視しておったのじゃろうな”

”でも殺意は持って無いから問題無い?“

”ショータはこれだけ離れた者の殺意まで判るのか?“

”最近は探知のレベルが上がったみたいで、殺意があるとチラチラ瞬くんだ“

教会の暗殺者に狙われた時に、殺意や憎悪が探知で判別できる事が判った。

“やはりショータは面白いのう。ショータの従魔になって良かったと思うぞ”

“うん、ありがとう”


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