表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/80

67 路地で立ち小便したら大惨事だ

ブクマありがとうございます。

頑張った成果が数字となって現われるので、ブクマと評価はとっても励みになります。

拙い作品ではありますが、これからも頑張りますので、宜しくお願いします。

頼運

剣の練習が終わると、遠視と遠聴の訓練。

小高い丘に登って遠くを見る。

遠い森の中の音に耳を澄ます。

自分のいる空間と、見たいものや聞きたい音のある空間だけを意識するのが大切。

途中を意識してしまうと上手く働かない。

目の前に見えている途中の景色を飛ばしてその先だけを意識するのは難しい。

見たいもの、聞きたい音のある空間迄の地面を折り曲げるイメージで自分のいる場所に接続する。

30分でふらふらに成る程精神的に疲れた。



時々鳥さんの群れが飛んで来るので、休憩がてらにバリアを連発する。

ドンだと普通の鳥はミンチになってしまうからバリア。

300m以上離れた所を高速で飛ぶ1羽1羽の目の前にバリアを張って撃墜する。

ベロが嬉しそうに落ちた鳥を拾いに行ってくれる。

俺にとってはベロとも遊べる、ほのぼのとしたひと時。

最近は鳥の群れを見付けたらベロが教えてくれる。

というより落とせと催促する。

投げたボールを愛犬が嬉しそうに咥えて来るような感じ。

口が3つあるから、どの口が咥えるかで喧嘩してるけど。

午後はベルンに戻って、レイと1緒に治療室で魔導具開発。

回復のレベルが上がったので、丁寧に診ても治療にかかる時間は1人当たりほんの数秒。

怪我人が居ない時は、レイと念話しながら魔道具に使う魔法陣を描いていた。



レイは何かを研究しているようで、今日は収納の奥に閉じ籠っていた。

怪我人が途切れたので、一昨日のチンに付いて、もう一度詳しく思い出しながら考えてみる。

思いついたには刃筋のブレ。

剣の練習を始めた頃は、振り下ろす剣が微妙に波打っていた。

1ヶ月半ほどで、刃筋が真っ直ぐになったまま振り下ろせるようになった。

“出来た”と思ったけど、ほんの僅かだけどまだ波打っているのかも知れない。

1mの剣の刃先が1㎜ブレれば判るが、0.1㎜だとブレに気付かない。

1m先が100m先になると、0.1㎜は1㎝。

100m先で高速で動くチンの刃が1㎝波打ったら空気抵抗に勝てない?

次に荒野に行けた時に検証してみよう。

仮説は検証する事が大事。

間違っていたら、また新しい仮説を考えれば良い。

それまでは右切り上げは一旦お休みして、ひたすら振り下ろしの稽古を重ねる事にした。

振り下ろしが出来たと思ったのに、その後も熊が振り下ろしだけの練習も続けさせたのはまだ微妙に刃筋がぶれているからなのかもしれない。

試行錯誤も大切だが、一旦落ち着いて考えるのも大切だと実感した。



少しでも早く、少しでも鋭く振る事意識しながらひたすら剣を振る。

10m位の距離なら振り下ろしのチンで岩に傷を付けられるようになって来た。

目標は鼠っぽい魔獣を剣で倒す事。

今迄に自力で倒せたのは高速で飛ぶ鳥さんとアンデッドだけ。

というよりも危険なので地上の魔獣には近づいた事も無い。

転生初日に見た、あの素早く動く鼠の魔獣を倒すにはまだまだ速さも鋭さも足りない。

自信を持って魔獣に立ち向かえるようになろうと、今日も頑張って剣を振るった。



ブンさんがギルドの入り口で、ベロを絶賛モフモフ中なので、手持無沙汰になったバンさん達が、街で聞いた俺の噂を色々と教えたくれた。

相変わらず竜滅人気が凄いらしい。

飽きられない様に、吟遊詩人や芝居で面白おかしく脚色しているらしく、新しい話が次々に生み出されているそうだ。

少し変わったのは敵役。

この街では、今まで芝居や吟遊詩人の詩で敵役とされていたのは、神殿と尊大で自分勝手な婿殿貴族。

ところが最近は公爵が批判されているらしい。

権力者が批判されるのは前世も今世も同じなのだろう。



「竜滅は腐敗した神殿勢力を倒す為に、たった一人で神国へ向かおうとしていたらしいぞ。」

「大規模魔法で聖殿を叩き潰すつもりだったそうだ。」

「竜滅なら一発で潰せるかもしれんな。」

「そうそう。 だから、法皇は物凄く竜滅を恐れていたんだ。 そこで法皇は切り札として、“竜滅は神敵である”という偽の神託を出そうした正にその時、竜滅の心意気に心を打たれた女神様が神国に鉄槌を下されたんだって。」

「竜滅は女神様にも愛されているということか?」

「女神様はこの世界の事は全てお見通しだ。 英雄がはるか遠い国迄行くのは大変なことだと思われたのだろう。」

「女神様は1瞬で神国を消し去ったそうだぞ。」

「流石は女神様だな。」

「遠いだけじゃ無く、神都は広いから竜滅でも大変だと思われたのだろう。」

「聖殿なら竜滅のションベンで破壊出来るんじゃねえか?」

「聖殿以外にも腐れ神官のおこぼれに預かっている悪徳商人達が大勢いるんだぞ。 幾ら竜滅のションベンが強力でも、そんなに大量には出せねえよ。」

「そりゃあそうだ。」

ビンさんが、身振り手振りで酔っぱらいの噂話を再現してくれるから思わず笑ってしまう。



でも、内容は笑えない程、現実離れしていた。

誰だよ、こんな話を作ったのは。

勝手に話を盛りすぎだろ。

魔獣が怖くてベルンの街から出ねえ俺が、大神国なんて遠くまで行く筈ねえし。

聖殿を壊すような大規模魔法なんて知らねえよ。

そもそも属性魔法は一切使えねえっちゅうに。

俺のションベンで建物は破壊出来ねえから。

ションベンで建物が壊れるんなら、路地で立ち小便したら大惨事だぞ。

俺の住んでいるベルンの街でもこれ程話が大きくなっているのだから、ベルンから遠い街ではどんな話になっているのか、想像もしたくない。

吟遊詩人さん、面白くするのも程々でお願いします、ほどほどで。

芝居の脚本家の皆さんも、俺がおしっこを振り撒く芝居は勘弁して下さい。

ついでに、勝手に毛を生やさないで下さい。

未だにツルツルの俺としてはめっちゃ恥ずかしいです。



今迄批判の矢面に立っていた教会の改革が進むと、批判の矛先が貴族に向いたらしい。

その中でも、公爵家への批判が目立つようになったそうだ。

「吟遊詩人や芝居で竜滅人気が高まっただろ。 最近の詩や芝居の中に出て来る敵役は誰がどう聞いても公爵様なんだよね。」

ベンさんが声をひそめた。

「そうそう、詩や芝居の中での公爵様はめっちゃ意地悪でケチだから、かなり評判が悪いんだ。」

ビンさんも声をひそめる。

大きな声で領主様の批判をするのは拙いらしい。

大きな声では言えないけれど、小さな声では聞こえない。

何事も程々が大事。

「勿論、吟遊詩人の詩でも芝居でも、不敬にならない様にベルン公爵様の名前は出していないよ。 でも、領主ヘランとかペロン閣下、プルン様みたいに、吟遊詩人や芝居の敵役は名前が公爵様に似ているから、みんな公爵様の事だって判っちゃうんだよね。」

バンさんが小さな声で教えてくれた。

そう言えば忠臣蔵も大石内蔵助では無く、大星由良助だった。

前世も今世も戯作者は同じような発想をするらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ