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60 ケチは光属性のスキル

ブクマありがとうございます。

少しややこしい話になってしまったので、元気を頂けて助かります。

何とか間に合わせましたが、この先の展開次第で修正するかもしれません。

今は本業が忙しいので、ごめんなさい。

頼運



熊に呼ばれた。

「依頼者はやはり教会だった。 教会が前回の悪霊討伐の時に譲歩したのは、ショータが苦戦して死ぬか逃げ出すかのどちらかだと考えたからだ。 ところが、ショータは僅か数時間で討伐を完了させた。 今迄何度も討伐に挑んで失敗した教会としては、全くもって面目がまる潰れ、恥の上塗りという結果になった。」

熊が暗殺者を取り調べた結果を教えてくれた。

「はあ。」

「神官達よりもショータの方が遥かに優れていると、教会自らが宣伝した様な状態となった。 その結果、ベルンでは教会の治癒所は民間の治療所よりも遥かに高い金をとるのに腕が悪い、という評判が定着しつつある。」

「はあ。」

「いずれ“ショータは悪魔の手先で、神敵である”という神託が出るのではないかという噂すらある。」

「神敵って何?」

「神敵とは即座に討伐すべき悪の権化という事だ。」

「教会が討伐軍を送って来るって事?」

「それも有るが、神敵認定されると、教会だけでなく全ての貴族が敵になる。 領主も貴族も神敵は見つけ次第討伐する事が義務付けられている。」

待て待て待て、それってめっちゃヤバいじゃん。

「神託って、そんなに簡単に出るの?」

「法皇猊下が“神託を受けた”と言えば、誰も否定出来ない。」

「そうなの?」

「そうだ。」

断言された。

無茶苦茶だ。

常に自分達は正しい事をしていると思い込んでいるから、宗教は嫌い。

今は多様性を大切にする時代だぞ。

って、それは前世でこの世界じゃ無かった。

めっちゃヤバいじゃん。



「ただ、今回は枢機卿達が大々的に悪霊討滅を宣伝していたから、あまりにも多くの者に事実が知れ渡り過ぎている。 今ショータを神敵とする神託が出たと言えば、偽の神託に違いないという声が上がる可能性がある。 何と言ってもショータは英雄だからな。 最近の教会指導者の腐敗は目に余ると思っている者も多いから、神託を切っ掛けに教会への不信が爆発する恐れもある。 そこで教会としては、ショータを闇から闇へ葬ろうとしているらしい。」

教会が暗殺者を送って来た事情は分かったけど、・・・。

「・・・、どうしたらいい?」

「教会が暗殺者を送って来た事をギルドや領主が公表すると、今度はギルドや公爵が神敵扱いされる恐れがある。 今はショータが教会の暗殺者に狙われている事を、背景も含めて情報屋達に流している。 いずれ噂として大陸中に広がる。 その時教会がどう出るかだ。」

どう出るかって、気楽に言うな。

神敵にされたら俺が殺されるんだぞ。

「はあ。」

取りあえず俺に出来る事は何もない。

何かあったら教えてくれるように熊に頼んで、様子を見る事になった。



俺はいつも通りの日常を送っている。

今はいざという時の為に力を付けるのが最優先。

朝はギルドの練習場や山の荒地での訓練。

訓練に一層励むようになった。

昼過ぎから、ベロはおやつ目当てに“ギルドの門番“。

俺とレイは治療室。

怪我人が居ない時はレイと魔法について話す事が増えた。



「これは古文書に描かれていた、勇者が作ったと言われる魔法陣だ。 ショータはこの文字が判るか?」

レイが1枚の紙を渡して来る。

「うん、前世で使っていた文字だよ。 漢字って言うんだ。 表意文字だから少ない文字数でイメージを表せるね。」

「表意文字であるか。 それならこの文字数の少なさも納得じゃな。 儂に漢字とやらを教えてくれ。」

漢字を教えろと言われても、漢字は数が多い。

俺が知らない感じも沢山ある。

取りあえず魔法陣に使われている漢字1文字1文字の意味をレイに教える事になった。



「俺も魔導具を作りたいと思ってるんだけど、図書館に行けないから基本的な事が判らないんだ。」

「そうであったか。 うむ、儂は魔導具を作るのは得意じゃ。 魔導具の基礎から教えよう。」

「ありがとう、お願いするね。 灯りの魔導具は1度だけ使った事があるけど、魔導具の構造や魔法陣については全く知らないんだ。」

「良い魔導具を作るには、自分の属性魔法を魔法陣にする事が大事じゃ。 発動した経験がある魔法を魔法陣にすると、魔法の練度が魔法陣にも反映されて効果が上がる。 魔道具も良い物となるから、まずは光属性の魔法を使った魔導具から始める事じゃ。」

「俺としては、俺が発動出来ない属性魔法の魔導具を作りたいんだけど。」

「それは魔導具作りに慣れてからの方が良い。 属性魔法を使った魔導具は既に沢山作られているから、魔導具屋に行けば相当なレベルの物を売っておるぞ。」

「そうなの?」

「殆どの者が4大属性のどれかを賜っておるので、4大属性についてはどの属性も魔導具師の数が多い。 魔導具師の数が多いから、それぞれが競い合って、色々な種類の魔導具が開発されておる。 ところが、光属性を持つ者は数10万人に1人、いや百万人に一人程度しかおらぬ。」

「えっ、そんなに少ないの?」

光属性自体に希少性があるらしい。

「時々光属性を持つ平民も見つかっているので、皆は偶然光属性を賜る事があると思っておる。 だが、儂が詳しく調べてみたら、異世界から来た者と、その子孫のうち偶々先祖返りした者だけが光属性を持つと判った。」

光属性を持つ人が少ない理由が判った。

「ただ、大抵は4大属性の1つか2つを併せ持っておる。 ショータの様に光属性だけというのは儂も聞いた事が無い。」

「そうなんだ。」

俺が光属性だけなのは、ササヤカお神が時間切れになって属性魔法を与え損なったから。

他の勇者の場合には、ちゃんと属性魔法も与えられたらしい。

ササヤカお神ぃ~。

下らない理由で時間切れになった事を思い出してササヤカお神にムカついた。



「光属性は神の属性として敬愛される。 ベルン公爵が領主の地位に就けたのも公爵が光属性を持っていたからだ。 今の皇帝も光属性。 この国の4公爵家では、1族に光属性を持つ者が生れた場合には、公爵本家の相続権を与えられる事が多い。 まあ光属性の者が生れるのは極稀なので、光属性を持つ者が公爵家を継いだのはベルン公爵が160年ぶりじゃ。 男なので領主とするのは如何なものかという意見もあったがな。」

ベルン公爵も光属性と聞いてビックリした。

俺と公爵が2人共光属性とすると、2人に共通しているのは何?

思いついた共通項はケチ。

光属性の人間って、ケチなの?



俺も、自分ではもったいない人間と思っているが、ギルドではケチと言われている。

服も熊に買って貰ったし、図書館の入館料もギルドに払って貰っている。

食事は無料の日替わり定食以外は食べた事が無い。

タダで食べられる物があるのに、わざわざ自分のお金を払って違う物を食べると言う選択肢は俺には無い。

俺の目標は治療院の開業。

無駄遣いはダメ、絶対。

あぶく銭を使うのはもっとダメ。

悪銭身に付かずで、身を亡ぼす事になる。



目標に向かってこつこつとお金を貯める事こそが小市民の生き方。

“この治療院は、俺がこつこつと貯めた俺の金で作った俺の治療院だ“

胸を張って、そう言えるようになるのが俺の目標。

オブ・ザ・ 俺、 バイ・ザ・俺、フォー・ザ・俺の治療院を作るのだ。

今迄に俺が払ったのは、バンさんの大怪我を治した後に頼んだ果実水の銅貨2枚だけ。

俺の勿体ない精神が、神の恩寵である光属性のせいなら、俺は神に導かれた正しい道を歩んでいる事になる。

ケチは光属性のスキルという事にしておこう。

うん、俺は悪くない。

ケチな公爵は嫌いだけど。


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