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52 油断大敵、おでんたいやき

「扉は開けたままにしておけ。」

「ちょっとでもヤバいと思ったら逃げるんだぞ。」

「うん、判った。」

前回同様、ベルンの灯に見送られて元伯爵屋敷の門を入った。

ベロも一緒なのでちょっと心強い。

今回は小便も童謡も無しにして、真っ直ぐに屋敷の正面へと向かった。

余計な事をして、これ以上尾ひれの付いた話が広がると、この街で暮らし難くなる。

”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“

帽子をかぶった悪魔やボワッと燃えている火の玉が出て来たが、だいぶ範囲回復の練度が上がっているようでいとも簡単に倒せて、普通に歩く速度で屋敷に向かえた。



敷地を真っ直ぐに突っ切り、屋敷の正面にある大きな扉の前に立った。

いよいよ屋敷への突入。

油断大敵、おでんたいやき。

某燕球団マスコットの言葉を思い出す。

神経を研ぎ澄ませて精神を集中する。

「良し!」

声を出して、自分に気合を入れた。

ドアのハンドルを押し下げ、ゆっくりと前に押す。

ギギギギィ~。

不気味な音と共に扉が開いた。



生ぬるい風を頬に感じたが、これは前回経験したのと同じ。

悪霊が窓を塞いでいるのか、中は真っ暗。

眼には見えないが、頭の中に見える探知の地図は真っ赤。

沢山の悪霊がいるのは前回と一緒。

”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“

”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“

探知の地図に示されている赤い点が急速に消えて行った。

前回の悪霊退治でレベルアップしたお陰なのだろう、前回よりも悪霊の消える速度が上がっている。

範囲回復を連発しながら、エントランスの奥に進んだ。

まだかなり暗いけど、窓を塞いでいた悪霊が減ったせいか、幾つかの窓から光が漏れて奥にある階段がどうにか見える。

脳内の探知地図には、2階の奥に大きな赤い点が見えた。

めっちゃ大きな赤い点。

大きさから見ると、ケルベロスと同じレベル?

ヤバいじゃん。



さて、どうしよう。

さっき屋敷に入った所。

まだ10分も経ってないけど、ボス部屋に進んでいいのかな。

まあいいか。

”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“

出直すのは面倒なので、取りあえずボスを確認する事にした。

範囲回復を連発しながら、エントランス奥の大きな階段を登る。

今回はベロも一緒だから、ボスを見るだけなら何とかなる筈、たぶん。



2階の廊下は悪霊で一杯。

探知の地図では赤い点が重なり過ぎて、奥の部屋へと続く真っ赤な絨毯の様に見える。

レッドカーペットを踏み締める気分で奥へと進む。

最高速度で範囲回復を撃ち続ける。

次々とレッドカーペットが消えて行く。

範囲回復の威力が予想以上に大きかったので、ちょっと余裕が出た。

途中でモデルさんの様にターンしてポーズを決めてみようか。

余計な事を思いついて一瞬立ち止まるが、ベロが胡散臭い目で見たのでやめた。

ここはランウェイでは無いし、そもそも俺には決めポーズが無い。

今度カッコイイポーズを考えておこう。

”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“

範囲回復を連発しながら、奥へと進んだ。

赤い点の大きさから考えると、2階の廊下に居るのは相当強い悪霊なのだろうが、範囲回復の威力が前回よりもだいぶ上がっているようで問題は無い。

相手の姿を確認する前にどんどんと赤い点が消えて行った。



2階の廊下を無事に突破して、ボスがいる部屋の前に着いた。

部屋の中には大きな赤い点が1つだけ。

いよいよボス部屋。

ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。

大きく2回、深呼吸をする。

ボス戦前恒例のルーティーン。

恒例と言っても、ボス戦はまだ2回目だけど。

「良し!」

気合を入れて扉を開いた。



広い部屋の奥では、立派な椅子に腰掛けた悪霊のボスが俺を見つめていた。

目が黒い穴だから、本当に見えているかは判らないけど。

悠々と椅子に腰かけているのは、豪華なマントを身に着け、禍々しい杖を持って、宝石が沢山ついた王冠を被った骸骨さん。

この姿はアニメで観た覚えがある。

間違い無く、レイスキング。

ササヤカお神程では無いけれど、キングだけあってオーラがめっちゃ凄い。

余りにも凄い威圧感に体ごと吹き飛ばされそうになる。

背筋には悪寒が走り、おしっこをちびりそうになった。

下腹にグッと力を入れて、ちびるのだけは何とか堪えられた、かな?

ちょっと股間が生温かい感じがするけど、気付かなかった事にした。

でも、ボスと正対した一瞬で俺には勝てない相手と判った。

余りにも格が違いすぎる。

ヤバい、ヤバい、ヤバい。



「キャンキャンキャン。」

俺が逃げようとした瞬間に、ベロがレイスキングに吠え掛かった。

慌ててベロを呼び戻そうとしたら声が聞こえた。

「ほう、ベロと言う名を貰ったか。」

えっ、話が出来るの?

ビックリしてレイスキングとベロを交互に見る。

ベロがレイスキングの足元に立ち、3つの顔をレイスキングに向けて何やら吠えている?

「キャウン、キャン。」

言語理解がある筈なのに、ベロの言葉が判らない。

「街は楽しいか。 そうか、儂も街を見たいのう。」

何故かレイスキングの言葉は判る

どうなってんの?

訳が判らなくて、頭が混乱して来た。

「キュン、キャンキャウ。」

「そうか、その手があるか。」

「キャウン。」


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