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50 ベルンの熊は俺を守ってくれる良い熊

ブクマ、有難う御座います。

ブクマや評価を頂けると、嬉しくて力が湧きます。

あちこちで熊さんが出没して大変なようです。

熊さん達が早く冬眠に入れる事を願っています。

頼運

熊に呼び出された。

「教会から、枢機卿達の遺体と遺品の捜索をショータに依頼する、という指名依頼の書類が提出された。」

「えっ、今頃?」

枢機卿達が行方不明になって、既に40日程経っている。

遺体なんて悪霊に食べられて、もう残っていない筈だ。

「前回依頼を断られてから、何度か教会騎士団と神官達が屋敷に突入したらしいが、階段に達する事すら出来なかったそうだ。」

「まあそうだろうね。」

屋敷への突入失敗よりも、行方不明になっている教会トップクラスの実力者達の捜索を、ペーペーの神官達に出来ると思っている教会指導部の判断に驚いた。

教会の指導者はアホばっかりか?

敷地内ならともかく、屋敷の階段は大勢が一気に登る事など出来ないし、廊下は狭い。

屋敷内では、大人数だと却って動き難いのは素人の俺でも判る。

力の無いものが大勢で押し掛けても、戦いの邪魔になるだけで戦力にはならない。

そんな事すら教会の指導者には判らないのだろうか。

指揮能力の低さに呆れてしまう。

「行方不明になって40日も経ったので、実は枢機卿達は生きていたと言い張る事は出来なくなった。 教会も仕方なく枢機卿達の死亡を認めたのだろう。」

食糧や水は持っていたかもしれないが、40日間も眠らずに戦い続けられる筈は無い。

「うん。」

「公爵からの悪霊討滅依頼も出されている。 この依頼、引き受けて貰えるか?」

「う~ん、・・・勝てるかどうかは判らないけど、行ってみようか。 やばいと思ったらすぐに逃げてもいいよね?」

何となくめっちゃ強いボスが出て来そうな予感はするけど、やばいと思ったら逃げれば良い。

「最優先はショータの命だ。 危険だと思ったらすぐに逃げろ。 今回も失敗の罰則は何も無いから、敷地に入った途端に逃げても何の問題も無いからな。」

「うん。」

今回はベロも一緒なので、ちょっと気持ちが軽い。

そんなこんなで、枢機卿達が行方不明になった元伯爵屋敷の悪霊討伐に出掛ける事になった。



今回は大神殿の神官が立ち会うということで、ギルドも職員5人とベルンの灯を始めとする3つの冒険者パーティー13人が俺の護衛として付き添ってくれた。

実は、直前になって討伐成功後に俺を襲うという教会の企てが、ギルドの情報網に掛った為。

要するに悪霊討伐で弱った俺を大人数で襲って殺し、“危機に陥った俺を救う為に教会騎士団や神官達が屋敷に突入したが、悪霊は討伐出来たものの俺の命は救えなかった”、という筋書きで、屋敷の悪霊討伐を俺では無く教会の手柄にする計画らしい。

ギルドは怪しげな依頼や犯罪から冒険者を守る為に、街のあちこちに情報源を持っている。

その1つに、今回の教会による竜滅殺害計画が掛かったそうだ。

やはり安全は金には代えられないとしみじみ思う。

ギルドは1人当たりの治療費は安いけど、安全な寝床を提供してくれるし、権威や金を振りかざす貴族や大商人が来ても熊が守ってくれる。

日本には冬眠する為の食べ物が足りなくて人間を襲う熊がいたが、ベルンの熊は俺を守ってくれる良い熊。

この世界に来てすぐにギルドに引き籠ったのは、本当に大正解だった。



悪霊討伐に成功すれば、教会関係者の遺体と遺品以外、屋敷の中にある物は全て俺の物になるので、ギルドが荷馬車や人足の手配をしてくれた。

討伐が旨く行くかどうかも判らないうちに、荷馬車や人足を手配するのはどうなのかと思った。

「まだ屋敷の様子も見ていないし、荷馬車や人足は気が早過ぎじゃない?」

ズンさんに聞いてみた。

「神官達が手も足も出ない悪霊でも、ショータならすぐに殲滅出来るという教会へのアピールよ。 教会のプライドを叩き潰さないと、討伐後にいちゃもんを付けて来るかも知れないからね。」

ズンさんが黒い笑顔を浮かべている。

うん、逆らってはいけない顔だ。



今回の屋敷も前回同様に元は伯爵屋敷だったお屋敷。

広い屋敷の門前には、教会の騎士団と神官達が大勢いた。

教会が俺を襲うかもしれないということで、教会騎士や神官対策として冒険者パーティー3つが護衛に来てくれたが、教会側の人数があまりにも多すぎる。

ざっと見ただけで150人近い。

俺の護衛をする冒険者は13人。

いくら何でも人数が違いすぎた。



「これはこれは、ギルマス自らお出ましですか。」

趣味の悪い派手な服を着た、教会の偉いさんぽいめっちゃ太ったおっさんが俺達を迎えた。

確かに“歩く姿は寸胴鍋”だ。

「ショータ1人で悪霊は倒せるが、悪霊よりも汚い事をする魑魅魍魎が居ると聞いて俺も立ち会う事にした。」

今日は何かあった時の為にと、熊も同行してくれている。

「ギルマスと言うのは暇な仕事のようですな。」

「教会は礼拝所も治癒所も人が来ずに暇を持て余していると聞きましたが、これ程多くの者が教会を離れる事が出来るのですから、成る程と納得出来ますな。 いやいや、お互い暇で何よりです。」

周囲では、教会の人達とギルドの人達が睨み合っている。



「教会関係者の遺品捜索を依頼した以上、我らが協力しない訳にはいかぬ。 無理を言って皆にも来てもらったのだ。」

「ショータが引き受けた条件は、教会関係者の遺体と遺品を教会に引き渡す事だけだ。 教会関係者が敷地内に入れるのは、討伐成功後に遺品確認をする為の2名だけとなっている。 武器を持った教会騎士団50余騎に神官100名近くが待機する理由が何処にある。 遺品確認をする2名の神官以外は護衛数人を残して教会にお帰り願いたい。」

「我らはショータ殿が危機に陥った時に、直ぐ救出に向かえるようこうして参ったのだ。 敷地内の除霊を先にして貰えば、我らはショータ殿の後詰として敷地内で待機し、要請があればいつでも屋敷に突入する覚悟である。」

敷地内にいる悪霊さえ自分達で討伐出来ないのに、俺がボスに苦戦していたら応援に駆け付ける?

敷地内の雑魚悪霊さえ倒せない神官達がボスと戦うって?

何の冗談だ?

そもそも屋敷の奥でボスと戦っている俺が苦戦しているって、どうしたら判るんだ?

もし俺がボスを倒せずに逃げ帰ったとしても、敷地内の雑魚悪霊に苦戦するような教会の勢力が、俺でも勝てないボスの居る屋敷に突っ込む筈など全く無い。

敷地内で待機している騎士団が動くのは、俺がボスを倒して屋敷から出た後しか無いのはアホでも判る。

それって、俺がボスを倒すのに力を使い果たした時に、俺に襲い掛かるって言う事だよね。


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