48 百聞は一見にシカゴカブス
ブクマありがとうございます。
年末が近づき、本業が忙しくなって疲れているときだけに、ブクマやお星様を頂けると元気が出ます。
もう暫く、何とか毎日の投稿を続けられるよう頑張りま。
ちなみに、カブは子熊や子犬。
ベロは頭が3つあるのでカブスにしました。
野球シーズンは終わりましたが、ゴー・カブス・ゴーの意気で頑張ります。
頼運
「我は隠蔽や影潜みが得意だ。」
俺も参加させろとばかりに、左側の頭が口を開いた。
3つの頭がそれぞれ違う役割をしているらしい。
「隠蔽って、探知され難くする魔法だよね。」
「闇属性の魔力を、極々薄く纏って気配を遮断すれば、探知には掛からなくなる。」
「厚いとダメなの?」
「厚く纏うと、魔力自体を探知される。 体内の魔力を外には出さないが、魔力自体を探知されない程度の厚さが隠蔽だ。 ショータの結界でも出来る筈だぞ。」
「そうなの?」
万が一、ベルンから逃げるような事になった時には、魔獣に見つかり難い隠蔽が使えたら有難い。
「よく見ておけ、これが普通の結界。」
ベッドの上にベロの魔力で囲われた、直径40㎝の黒い球体が現れた。
図書館で色々と調べたが、実際に俺以外の結界を見るのは初めて。
イメージ造りが難しくて、魔鉄棒にしか結界が張れなかったのが、色々と試行錯誤して漸く自分の周りに結界が張れるようになったばかり。
その結界も今はまだ5分しか持たないし、強度も弱い。
ところがベロの張った結界は全く違った。
俺が使っているバリアを張り合わせたなんちゃって結界とは違い、魔力が結界面をゆっくりと動いている。
魔力が見える俺には、結界自体が一つの生き物の様に見えた。
俺の結界が短時間しか持たないのは、強度を維持する為に魔力を空間に固定しようとしたせいだと気が付いた。
俺の結界は、元がバリアなので、展開時だけに魔力を使っている。
ベロの結界は展開した後も魔力が供給されている。
これなら結界を長く維持出来る。
実際に全く発想の違う結界を見せられると、目からウロコダキサコンジ。
百聞は一見にシカゴカプスだった。
「闇属性の結界は黒いんだね。」
「普通は黒だが、我程になれば透明にも出来るぞ。」
「そうなんだ。」
「魔法は何度も使って練度が上がれば、色々な事が出来るようになる。 結界も色や形だけでなく性質も変えられる。」
「うん、頑張る。」
「今度は隠蔽だ。」
ベロの全身に張り付くように薄い魔力が広がる。
探知に映っていたベロの赤い点が消えた。
「探知から消えた。」
「隠蔽だから当然だ。 ショータの探知精度がもっと上がれば見えるようになるぞ。」
「うん。」
この薄さが難しいらしい。
他の人間は探知出来るのに、熊を探知出来ないのは熊の纏う魔力が薄いのだろう。
「少し厚くするとこんな感じだな。」
ベロに張り付いている魔力が、少しだけ黒い色を帯びると同時に探知に赤い点が現れた。
魔力が見えるようになってだいぶ経つので、今は魔力の変化が細かな所まで良く判る。
さっきとは魔力の厚さが明らかに違っていた。
何となく俺にも出来る予感がした。
「ショータの結界はまだまだ練度が足らん。 まずは自分の周りにしっかりとした結界を張り続ける練習からだな。」
そう言われれば、魔鉄の棒に張った結界には魔力を流し続けていた。
先ずは自分の周りにも魔力を流し続けられる結界を張りたい。
ベロに教わりながら結界の練習に励むことにした。
「僕は暗い穴に潜るのが得意だよ」
尻尾の蛇さんもしゃべるんかい!
「暗い穴?」
「ちょっと湿った暗いあ・・」
「ストップ! それ以上は言っちゃダメ。」
蛇さんがスカートの中が好きな理由が判った。
「どうして?」
「どうしても。」
「主がそう言うなら言わない。」
蛇さんがしょんぼりしてしまったが、何とか黙らせる事が出来た。
それ以上言わせると、R15の枠を超えてしまう。
今日も午前中は剣と魔法の訓練。
師匠のベロが居てくれるので、練習にも気合が入る。
1人で黙々と練習しているよりも、誰かに見ていて貰う方が集中力も上がる気がする。
今日は自分の周りに持続結界を張る練習。
ベロの結界を見せて貰ってから、色々とイメージを変えながら試行錯誤する事3日目。
ようやく自分の体を中心にした、2mの持続結界を張る事に成功した。
バンさんが拳で軽く叩いたら、いとも簡単にパリンと割れたけど、成功は成功。
長い間出来なかった事が出来るようになって嬉しかった。
ベロが俺の訓練をじっと見つめている。
「どうかな?」
「キャウン(魔力の使い方が下手だ)。」
魔力の無駄が多過ぎるらしい。
「どうしたらいい?」
「きゃきゃわんわんク~ン(結界は常時張っておけ、寝ている時もだ)。」
練度を上げて魔力の無駄を無くすには、ずっと張ったままにしておくのが良いらしい。
「難しいよ。」
流石に寝ている時は、集中力を維持出来ない。
「キュンキャンワォ~ン(寝ている時も探知は発動出来ておる)。」
「そう言えばそうか。」
恐らくは発動時のイメージに問題があるのだろう。
「うん、練習する。」
まだまだ試行錯誤は続きそう。
「クン、クウ~ン、キャンクンクン(バリアを水平にして足場にしてみろ)。」
ベロが新しい提案をしてくれた。
水平に張ったバリアを足場にするという発想は無かった。
またしても目からウーロン茶。
「うん、やってみる。」
水平なバリアのイメージを考える。
バリアは体の正面、顔と平行で地面に垂直。
チンは剣の先だけど剣の方向だから、振り切った位置は顔に垂直で地面にも垂直。
足場にするバリアは地面に平行。
名前を変えないと間違える。
階段状に使いたいから、階段を略して“ダン”と名付けた。
足元に20㎝程の高さで、地面と水平に小さなバリアを作るイメージを練る。
“ダン”
バリアの練度が上がっているせいか、1発で上手く作れた。
20㎝程の高さに張ったバリアに乗ってみる。
透明なバリアなのでちょっと怖いが、頭の中にはバリアの位置がはっきりと見えている。
片足を掛けて、バリアの感触を確認する。
体重を乗せてみてもしっかりと受け止めてくれている。
うん、大丈夫。
両足を乗せても問題は無かった。
バリアの上で跳ねてみる。
うん、大丈夫。
今度は、今乗っているバリアよりももう1段上をイメージする。
“ダン”
出来た。
乗ってみる。
地上からだと僅か40㎝程の高さなのに、めっちゃ視界が広くなった。
俺は大人達に比べると40㎝位身長が低いので、大人の目から見た風景ってこんな感じなのかと思った。
いつかはきっとこれ位の目の高さになる、・・といいな。
ササヤカお神が、“成長を遅らせて長く楽しめるように”する、と言っていたのを思い出してちょっとへこんだ。




