表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/81

44 蛇さんの頭は亀の頭に似てる

あれ?

目の前には扉一杯の、というより扉から一部が溢れためっちゃ大きい黒い毛玉。

毛玉がゆっくりと動いているので、呼吸しているのが判る。

俺が扉を開けても動く気配が無い、と言うよりも動けない?

毛玉が邪魔で見えないけど、結構広そうな部屋に毛玉がミチミチに詰まっているように見えた。

「何じゃこりゃ?」

目の前にある毛玉が、探知に映っている大きな赤い点なのは間違い無いからボスの筈だけど、めちゃめちゃ大きな毛玉しか見えない。

「これをどうしろって言うんだ?」

思わず呟いてしまう。



ザザザザザ~。

大きな音がして毛玉が寝返り?を打った。

大きな音は毛が壁に擦れた音らしい。

扉の右側からボスの頭が少し覗き、6つの目が俺を見つめた。

土佐犬よりも獰猛そうな犬っぽい顔が3つ。

扉の左側からは大きな蛇が頭を出して、俺を睨んでいる。

3つ首の犬で尻尾が蛇。

前世のアニメで観た事がある。

地獄の番犬ケルベロス。

何故かは分からないけど、恐ろしさは全く感じなかった。



「え~と、こんにちは?」

右側に見える3つの頭に向かって挨拶した。

挨拶は大事。

「ほう、神の愛し子か。」

「愛し子? って、俺の言葉が判るの?」

「当然じゃ。 そなたも我も神に愛されし者だからな。」

「そうなの?」

「神の1柱であった我の主は1600年ほど前に勇者に討たれて死んだ。 一人になった我はあちこちを彷徨い、700年程前にここに腰を落ち着けた。」

「そうなんだ。」

「そなた、神に会ったであろう。」

「あ、うん。」

「我を気遣って神がそなたに会わせてくれたようだ。」

「気遣って?」

意味が判らない。

「惰眠をむさぼっている間に、ブクブクと太ってしまい、身動きが出来なくなった。 このままでは床ずれが酷くなって体が腐ると、神が心配したのであろう。」

「ケルベロスでも床ずれが出来るの?」

「我は神獣である。 獣であれば床ずれは出来る。」

神獣でも床ずれになるんだ。

知らなかった。

って、床ずれが出来る程太るなよ。



「俺は回復を使えるよ。 回復で床ずれを治せば良いの?」

ササヤカお神が俺をここに招いたのなら、ケルベロスを治療しろという事なのだろう。

「そうだな。 そなたの回復ならば我を殺せるであろう。」

殺してどうするんだよ。

床ずれが治れば元気になるんじゃないの?

「殺す気は無いよ。」

「我の体は瘴気に侵されて悪霊化しておる。 それ故、冥界に戻る事も出来ぬ。 そろそろ生きて行くのも面倒になった。 神の愛し子であるおぬしなら、我を殺せるであろう。」

「話が出来る人、いや人じゃないけど、話の出来る相手を殺すのは嫌なんだよね。」

「そなたは優しいのだな。」

「こうして話したから、もう友達だよ。 友達に優しくするのはあたりまえだろ。」



「そうか、この屋敷でのんびり過ごして来たが、潮時だな。 そなたの名を教えてくれ。」

「ショータだよ。」

「良き名である。我の新たな主になる気は無いか?」

「大きすぎるから、飼えないよ。」

「召喚獣となれば大きさは変えられるぞ。」

「召喚獣?」

「我に名を付けよ。」

「ケルベロスだからベロ?」

「安直な名だが良いだろう。 我の名を呼べ。」

「ベロ。」

「ショータ。」

何かが俺とベロの間に流れ、俺とベロが光の帯で繋がった。

「えっ、ええっ?」

初めての光景にビックリした。



光の帯が消える。

「“送還“と唱えよ。 我が消えたら”召喚“と唱えよ。 我は小さな姿となって現われよう。」

「うん、送還。」

言われるが儘に唱えたら、ケルベロスが消えた。

「召喚。」

目の前にケルべロスが現れたけど、大きさは1.5m、だいぶ小さくはなった。

大型犬の感じ、首が3つあるし尻尾は蛇だけど。

小さくなったのにめっちゃ迫力がある。

スリムになって元気が出たせいか、大きかった毛玉の時よりも威圧感を感じた。

戦っても勝てそうな気が全くしない。



「凄い、ちゃんと小さくなった。・・・でももう少し小さい方が可愛いかな。」

ダメ元で言ってみた。

「こうか?」

ベロが縮んだ。

体長が40㎝位、小型犬サイズで、体型もコロコロ。

顔も丸くなって、威圧感が消えた。

子犬っぽくてめっちゃ可愛い。

尻尾の蛇さんも可愛くなった。

尻尾の蛇さんが俺の足に絡みついて股間から顔を出す。

小さくなった蛇さんの頭は亀さんの頭に似てる?

「蛇さんの頭は足の間から出さないでね。」

「キャン(何故じゃ)。」

「人間の世界では、足の間から蛇さんの頭が出ていると色々と拙いんだ。」

股間から出ている亀の頭みたいな蛇さんの頭を見ると、おしっこしながら範囲回復を唱えた前回の事を思い出してしまう。

「ワウ(そうなのか)?」

「そうなの。 って、人間の言葉じゃ無くなってるよ。」

「ク~ン、キャワ(小さくなったせいで人語が話せなくなったようだ)。」

「でも今の方が可愛い感じだから、俺は好きだよ。 俺にはベロの言葉が判るし。」

「キャキャン(そうか、我は可愛いか)。」

あれ?

ケルベロスの主になるって言った覚えがないのに、いつの間にか召喚獣になってる?

判らん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ