43 小便で悪霊を倒すのが俺の討伐法
ブクマありがとうございます。
連日の投稿で疲れ気味の頼運ですが、もう少し頑張れそうです。
もう少しでモフモフが出てきますので、楽しみにして下さい。
頼運
「神官達が毎日浄化に行っているから、ショータも屋敷に行って小便して来い。」
熊の一言で、前回から4日後、またあの悪霊屋敷に行く事となった。
「おい、これを飲んでいけ。」
「これもだ。たっぷり貯めて行けよ。」
「水筒に果実水が入っている。小便が切れたらこれで補充しろ。」
「腰帯を作った。これに水筒をぶら下げておけ。」
冒険者のおっちゃん達が次々に果実水や水筒を渡してくれる。
バンさんがしゃべり捲ったせいで、小便で悪霊を倒すのが俺の討伐法、という話が広がってしまった。
みんな俺の事を心配して言ってくれてるので断れない。
沢山の水筒を、腰蓑のようにじゃらじゃらぶら下げている、という珍妙な格好になった。
これでフラダンスを踊ったらめっちゃ喧しそう。
次々と飲み物を飲まされたので、お腹もチャポンチャポン。
馬車に乗って、いざ出発。
途中で馬車を止めて貰い、路地に入って立小便した。
小便しながら大股を開いて攻撃するよりも、普通に範囲回復した方が攻撃し易い。
当たり前だ。
いや、股間を露出した方が、ケガ無い?
馬鹿な事を考えてしまった。
悪霊のいる屋敷に着いた。
「今日はちょっとだけ屋敷の中を覗いてみる。」
ギルドから遠いので、めんどくさくなった。
ちょろっと偵察するくらいなら大丈夫だろう。
「気を付けろよ。」
「扉は開けたままにしておけ。」
「ちょっとでもヤバいと思ったら逃げるんだぞ。」
「うん、判った。」
ベルンの灯に見送られて門を入った。
真っ直ぐに屋敷に向かおうとしたが、今日は前回よりも早くから骨が出て来た。
”範囲回復“ ”範囲回復“
回復で消滅させるが、どんどん骨が出て来る。
今日はホネが大豊作?
「今日はホ~ネが満作でぇ~♫、村は総出の大祭ぃ~♬」
ふと前世の童謡を思い出して口ずさむ。
範囲回復が骨に効く事は判っているので今日は余裕がある。
”範囲回復“ ”範囲回復“
「ドンドン、ヒャララ~♫」
“範囲回復”
「ドン、ヒャララ~♫」
”範囲回復“ ”範囲回復“
「ドンドン、ヒャララ~♫。ドン、ヒャララ~♫」
”範囲回復“ ”範囲回復“
懐かしい童謡を機嫌良く口ずさみながらでも、問題無く通路を確保出来た。
小便をしながらでも倒せたんだから、歌いながら倒せるのは当たり前。
敷地の中に出て来た骨達を機嫌よく倒しながら屋敷のエントランスに着いた。
屋敷の大きな扉の前に立つ。
鍵は開いている筈。
ギィ、ギギギギィ~。
ドアのハンドルを押し下げて前に押すと、恐ろしげな音と共に扉が開いた。
生ぬるい風を頬に感じる。
頭の中に見える探知の地図が真っ赤過ぎて、視界がぼやける。
見えないながらも、沢山の悪霊がいる事は判る。
”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“
”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“
探知の地図に映されている赤い点が急速に消えて行く。
範囲回復を連発しながら、エントランスの奥に進んだ。
かなり暗いけど、扉から差し込む光と高い所にある窓からの光で何とか見える。
探知の赤い点が俺を避け始めた。
俺をヤバい敵と認識したらしい。
俺の進む方向にある赤い点が、俺が進むのにつれて左右に別れて行く。
モーゼかよ。
2階の奥に大きな赤い点がある。
恐らく悪霊のボス。
さて、どうしよう。
偵察に来て即ボス戦なんて洒落にもならないけど、ギルドからこの屋敷までが遠い。
帰るのは面倒。
めんどくさい時は運頼み。
前世にそんな名前の低辺作家がいた事を思い出す。
え~い、ままよ。
エントランスの奥にある大きな階段を上り、2階の奥に向かった。
2階の廊下には、俺から逃げようとしない悪霊で一杯。
1階にいた悪霊よりも上位の悪霊らしい。
探知の地図は赤い点が重なり過ぎて全面が真っ赤。
地図に映る赤い点が視界を邪魔して、悪霊の姿がぼんやりとしか見えない。
臭いがきついのでゾンビ系の悪霊も居るらしい。
”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“ ”範囲回復“
たぶん強い悪霊なのだろうが、廊下が狭いせいで範囲回復の威力が高くなってる?
相手の姿を確認する前にどんどんと赤い点が消えて行った。
屋敷に入ってから沢山の悪霊を倒したので、範囲回復の練度が上がったのかも知れない。
廊下にいた悪霊を消し去って、奥の部屋の前に着いた。
部屋には大きな赤い点が1つだけ。
いよいよボスとの戦い。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。
扉を開ける前に、大きく2回深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「良し!」
気合を入れて両開きの大きな扉に手を掛け、左右に大きく引くと同時にボスの攻撃を避ける為に後ろに跳んだ。




