↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/185

18 帝国で1番危険な街って何だよ

図書館には周辺国や古代語の本もあった。

標準装備である言語理解のお陰で、どの国の言葉も日本語の様に読めるので、違う言語だと言う事すら感じずにスラスラ読める。

この国はマルキド帝国。

キンバークという大きな大陸の中央西部にある大国らしい。

女帝ムーチー陛下が統治している。

アイマスクをしてハイヒールを履いているイメージがするのは俺の偏見?

ともあれそんな偉い人に会いたいなんて、全く思わない。

俺はモブ。

偉い人に見つからない様に、こっそりひっそり暮らすのだ。



図書館には歴史書も沢山あった。

現在の帝国は中央にある広大な皇帝直轄領とそれを取り巻く東西南北4つの地域に別けられ、それぞれを公爵家がほぼ独立した形で統治している。

元々は5つの国であったが、中央にある帝国とそれを取り巻く4つの国の勢力が拮抗していた為にお互いに手を出せず、長く平和な時代が続いた。


平和な時代が長く続くと、当然のように起こるのは支配者層の腐敗と不正。

国を作り上げた当時には命懸けで大きな功績を上げた家も、貴族に叙されて4代目・5代目となると国の為に命懸けで働こうとする者は少なくなる。

特に、名門貴族を優遇した4王国は貴族の腐敗と不正によって国力が大きく低下した。

それに対し、血筋よりも実力主義で人材登用した帝国は発展が目覚ましく、周囲の4王国よりも国力が頭1つ、いや2つ3つ突き抜けた。

4王国の王家が帝国との国力の違いに気付いた時には、政権中枢や上級役人にも不正が広がっていて、各王国の収入は半減、軍を維持する事すら困難な状況だった。

国力に大きな差が出来た事を実感した各王家は、王家の持つ領地支配権を維持する為に、幾ばくかの領地を差し出し、強大な軍事力を持つ皇帝の臣下となって王家の滅亡を免れた。



帝国は元からの領地に加え、少しずつではあるが4王家から領地を得る事で、旧4王家それぞれに対しては圧倒的な力を得られると同時に、帝国の周りが全て臣下となったので周辺国から攻め込まれる危険が無くなる。

4王家としては多少の領土は失うものの、旧王国領全体に対する支配権が保証された形で強大な軍事力を持つ帝国との戦争を回避出来る。

更に、帝国との境界に配置していた軍事力を近年急速に軍事力を強めている周辺国との国境に配備できる上、万が一の場合には帝国の軍事援助を受ける事が出来る。

そうした利害関係で現在の強大なムーチー帝国となった。



ベルン王家は帝国に併合される際に領地の1部を帝国に差し出したが、東部地域の支配権は旧ベルン王家であった公爵家が保持する事が出来た。

俺が住んでいるのはマルキド帝国の東端にある帝国第3の街ベルン。

元王家であるベルン公爵家が、直轄領として統治している東部地域の中心地でもある。

ベルン公爵領は幾つもの周辺国と領地が接していて、隣国との戦争がしょっちゅう起こるので、戦場を稼ぎ場とする荒くれ者の傭兵も多い。

領地内には深い森が沢山ある帝国随一の辺境で、領都ベルン付近にも強い魔獣がしばしば出没するという大陸有数の危険地帯。



図書館でこの街について色々と調べた結果がこれ。

安全第一をモットーにしている俺の住んだのが、帝国で1番危険な街って何だよ。

思わずササヤカお神に文句を言いたくなるが、文句を言っても安全になるわけでは無い。

おもしろきこともなき世におもしろく、すみなすものはカニとたわむる。by高杉啄木。

うん、嫌な事は忘れて、楽しく訓練に励もう。




未だに熊が利用料を払ってくれているので毎日図書館に通えている。

この国の女性の地位について調べてみた。

この大陸では、殆どの国が小国乱立の時代から、神を祀り神託を賜る巫女を中心に発展して来た。 

まあ前世の日本でも女性の巫女を中心としていた時代があったし、この世界には神が実在していて、何度も神託を下したり神罰を与えている。

居るかいないか判らない神ではなく、逆らえば災害級の神罰を下す神が実在するのだから神の言葉を聞ける能力が重視されるのも当然だろう。



神の声を聞き、魔法で奇跡を起こせるのが巫女。

古来より、魔力量も魔法を操る能力も、何故か男性より女性の方が優れていたらしい。

神の声を聞き、魔法を操る為に大切なのが血筋。

髪の声が聞ける血筋を途切れさせない為には、後継者である子供が確実に血筋を受け継ぐ者でなくてはならない。

必然的に女系の子孫が後継者となり、財産も全て女性が受け継ぐ事になった。

そう言えば、日本でも平安時代までは女性が荘園などの財産を受け継いでいた。



指導者層が女系の後継者を立てるのだから、必然的に平民層も女系の子供を後継者とするようになる。

血筋を受け継いだ女性は、血筋を守る為に危険な戦場に赴く事は無くなり、戦場で戦える強い男を婿にするようになったと、色々な本に書かれている。

男は莫大な財産と優れた魔力の血筋を持つ女性の婿に迎えて貰う為に、生れた時から体を鍛え、武技を磨くなどの努力をするらしい。

第一婿となれば名実共に貴族となれるので、皆が必至に努力する。

もっとも、貴族家の当主となっても、家の実権は女性が握っている。

幾ら男が強くなっても高い練度の魔力を身に纏わせた女性には力でも敵わないらしい。

〇〇侯爵閣下や△△伯爵殿と呼ばれてふんぞり返っていても、女主人は〇〇侯爵家閣下や△△伯爵家殿と“家“付の敬称で呼ばれる1ランク上の存在。

家臣達も、女主人の事は領主館の主という意味の御館様と呼ぶし、当主であっても重要な決定には御館様の承認が求められる。

今の貴族は生れた時から良い家柄の女性と結婚する為に努力を重ねて来たせいで、貴族の家柄に婿入り出来た男はいわゆる“勝ち組“。

“負け組”の下位貴族や平民を見下す事で、家庭内で伴侶や姑に押さえつけられているストレスを解消していると書いている本もあった。

プライドが高く傲慢な男性貴族が多いのはそうした背景があるかららしい。



いつものように、治療室で怪我人の治療をしていた。

ふと、回復の時に治療する筈の傷から逸れた魔力が流れた先が視えた。

行き先は見えにくい小さな傷。

その後も注意して視ていると、小さな傷だけでなく内臓に流れる場合もあると判った。

どうやら俺が気付いていない傷や病気を治しているらしい。

今迄はイメージした傷だけだったが、回復の練度が上がったから治療範囲が広がった?

どうやら回復が勝手に患部を見つけてくれるようになったらしい。

あれ?

と言う事は傷が治る手順をイメージしなくても、“治るイメージ”だけでも回復が発動する?

ここからは試行錯誤。

きちんと手順をイメージして掌を翳す場合。

治るイメージだけで掌を翳す場合。

治るイメージだけで掌を翳さない場合。

少し離れた所から掌を翳す場合。

少し離れた所から治るイメージだけを送る場合。

治療を受けている冒険者に気付かれない様に注意しながら色々と試している。

仮説は実験で証明するのが早道。

毎日大勢の治験者相手に実験できるので、治療室で働けている事がめっちゃ有難かった。



熊に教えて貰った、魔力を思ったところに集める練習も続けている。

足・腰・足・腰・背中・腹・背中・腹・肩・腕・肩・腕。

毎晩ベッドに入ると、体の色々な所に魔力を集めるイメージをする。

最近は、ちょっとだけだが魔力が動いてくれている感じがする時もある。

はっきりと見える訳では無いが、頭の中には全身の魔力がぼんやりと見えるようにもなった。

進歩が見えるとテンションが上がる。

ガンバ大阪。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。