10 目指せ自衛隊!
お星様を頂きました。
感謝感謝です。
頑張って書きますので、これからもよろしくお願いします。
明日から”SSランク冒険者のお仕事は下着の洗濯です”の投稿を再開します。
第1部は1話が長いので、苦手な方は第2部から読んで頂けたら幸いです。
頼運
ズンさんに案内された職員寮の食堂で夕食を摂る。
職員食堂のメニューは日替わり定食だけ。
沢山食べたい人には大盛を頼むらしい。
初めてなので普通盛りを頼んだ。
パンとシチューと葉っぱのサラダ?
シチューには大きなお肉の塊がゴロゴロ入っている。
鑑定して2種類の肉と言う事は判ったけど、どちらも知らない名前だった。
どちらの肉もホロホロになるまで煮込まれていて、めっちゃ美味しい。
謎葉っぱのサラダはちぎった葉っぱを皿に盛っただけ。
これも鑑定してみたが、知らない名前の葉っぱばかり。
味付けはテーブルに置いてある塩だけ。
前世に比べればいまいちどころか、いまにいまさんだが、異世界の食事が美味しく無いのはファンタジーの常識。
というより、前世の日本が美味し過ぎ?
毎日色々な国の料理を家庭で作っている国はあまり無いらしい。
食事にはこだわりが無いので問題無い。
異世界に来た初日早々に、きちんとした食事を食べさせて貰えただけで有難い。
お腹が膨れれば上等。
贅沢は敵、欲しがりませんカツまでは。
ふと、前世の俺はトンカツが好物だった事を思い出した。
自分に関する記憶を思い出したのは初めてだったのでビックリ。
俺に関する記憶も、全部が全部消え去ったのでは無いらしかった。
ズンさんが貸してくれた灯りの魔道具に魔力を流して灯りをともす。
魔導具を使うのは初めてだが、教えられた通りに魔力を流したらすぐに明るくなった。
あれ?
俺は光属性。
光魔法なら使えるんじゃね?
灯りの魔道具をイメージして魔法を発動する。
”光“
天井に光の球が浮かんでめっちゃ光った。
「目が、目がぁ~!」
眩し過ぎて、めっちゃ目が痛い。
思わず両手で目を塞いで蹲った。
数分の間は目を開けられなかった。
魔力量が多いからなのか、光り過ぎ。
魔獣相手に使ったら、1瞬の目潰しにはなるかも知れない。
とは言え、部屋の中では眩しすぎる。
光の球を消して、そっと目を開く。
まだ目の前がチカチカしてる。
過ぎたるは及ばざるが五等分の花嫁。
今度は明るさも考えてLEDの天井灯をイメージする。
“光”
天井に50㎝位の丸い天井灯が出来た。
明るさも程々。
やっぱりイメージが大切。
俺の部屋は3畳くらい、引き出しの付いた机とベッドがある。
ベッドの下には箱があってこれも収納として使えるらしい。
俺の場合は標準装備の無限収納があるから要らないけど、無限収納を秘密にするのはファンタジー小説のお約束。
自分の持ち物が出来たらこの部屋に置いておこうと思った。
ベッドで横になって天井灯を消し、今日の1日を振り返る。
どういう経緯かは全く判らないけど、異世界に来たのは事実。
ファンタジー小説では前世知識や特別な能力を使って大活躍する主人公が多い。
その反面、ちょこっとしか登場せずに転生早々に死ぬモブ転生者や、不幸なまま殺される敵役の転生者も多い事を俺は知っている。
ゲームの世界ではいきなり死ぬ場合が殆ど。
俺の場合“設定時間”とかいうもののせいで攻撃魔法を授けて貰う前に異世界に飛ばされた。標準装備の無限収納・鑑定・言語理解に剣技・回復・バリアという3つのスキルのみ。
めっちゃ強い武器も、全ての攻撃を防ぐ防具も貰えなかった。
バリアのお陰である程度の防御力はあるものの、攻撃力はまるで無い。
どう考えても大活躍する主人公では無く、転生早々に死んでしまうモブの可能性が高い。
となれば、これからの生き方としてベストな選択は専守防衛。
災害派遣には行くけれど、戦いには行かない。
目指せ自衛隊!
幸い回復師と言う仕事で生活は出来そうな気がする。
“命を大切に”を座右の銘としてこっそりのんびり生きる。
目立つのはダメ、絶対。
街の外は危険なので出ない。
ギルドの寮に出来るだけ長く居座って、コツコツと小金を貯めて老後に備える。
小さな家を借りて、回復院が開けたら最高。
うん、異世界での人生設計が出来た。
魔法について考えてみた。
色々と試してみた結果、詠唱も魔法名も関係なく、大切なのはイメージだと判った。
イメージさえ固めれば魔法がイメージを現実化してくれる。
だったら、バリアも大きさや発動場所を変えられる筈。
回復も傷を内側から塞いでいくイメージなら治りが速い筈。
骨折は元の骨格をイメージして、元に位置に戻してから接合するイメージなら無理に引っ張る必要は無い?
消毒のイメージはどうすればいい?
毒の場合はどうする。
ふと気が付いたら窓の隙間から日が差していた。
色々と考えていたら、いつの間にか眠っていたらしい。
隙間から日が差し込んでいる窓を調べる。
窓枠の外側に窓枠より少し大きな木製の板がぶら下がっている。
板が古いからか、板と板の隙間から日が差している。
暖かい時は良いけど、寒い時は隙間風が入って来そう。
板の下側にあるフックを外して下側を押せば上に開く仕組み。
板を押し上げ、目の前にぶら下がっている、板の下側に付いている棒を窓枠の穴に差し込めば、窓板を開けたままの状態で固定出来た。
空を見上げると青空で雨は降りそうもない。
部屋の換気をしたかったので窓は開けたままにした。
寮の食堂で朝食を済ませると、ギルドに行った。
と言っても職員寮はギルドのすぐ裏、細い路地を渡ったらそこがギルドの裏口。
通勤時間は1分も掛からない。
満員電車も乗り換えも無い。
信号ねえ、ある訳ねぇ、ベルンの街には電気がねぇ。
銭貯めて、ベコを飼うのは有りか?
街についての知識も無いし、武器も持って無いから安全なのはギルドだけ。
街を歩かずに通勤できるのは有り難かった。




