表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

文化祭、すれ違う2人

文化祭の興奮がまだ校内に残る中、俺とゆうなは並んで歩いていた。手を繋ぎながら、どこか照れくさそうな空気が漂う。


「奏汰、今日…すごく楽しかったね」


ゆうなが、少しだけ恥ずかしそうに言った。俺も同じ気持ちだった。


「うん、俺もすごく楽しかった。でも、まだちゃんと言えていなかったことがあるんだ」


その言葉に、ゆうなが少し驚いた表情を見せる。


「何か、気になることでもあった?」


「いや、なんていうか…今日は、気持ちを伝えられたから、すごく嬉しいんだけど、なんだか色々と気になることもあって」


「気になること?」


「うん。陽翔のことだよ」


その言葉に、ゆうなはほんの少し黙り込んだ。表情が曇ったわけではないけれど、明らかに何かを考えているようだった。


「陽翔…」


俺の声が少し沈んだのを感じて、ゆうなは少しだけ首をかしげた。


「ごめん、奏汰。私も、陽翔のことをちょっとだけ気にしてた。でも、私たちがこうして一緒にいられることを、すごく大切にしたいと思ってる」


その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の中で温かい気持ちが広がった。ゆうなは本当に素直で、俺の気持ちをしっかりと受け止めてくれている。そんな彼女に、感謝の気持ちが込み上げる。


「ありがとう、ゆうな。俺も、お前が好きだってこと、ちゃんと伝えられて良かった」


「うん…私も、奏汰と一緒にいると、とても幸せだよ」


その言葉に、俺は嬉しさがこみ上げてきた。でも、その瞬間、また別のことが気になってきた。陽翔のことが頭をよぎる。


====


その日の夕方、文化祭の片付けが終わった後、まひるが俺たちに声をかけてきた。


「おう、お前ら、ちゃんと進展したみたいだな!」


まひるは俺たちに向かって、にやりとした表情を見せてきた。俺は少し恥ずかしくて、目をそらしながら答える。


「うるさいな、まひる。お前、なんでそんなに分かるんだよ」


「分かるに決まってんだろ。お前ら、微妙に照れくさい顔してるもんな」


「そ、そんなことないだろ!」


「はいはい、分かってるよ。お前らのことなんて、ちゃんと見てるからな」


まひるはふっと笑いながら言った。俺たちはそのやり取りに少しだけ笑い、緊張感が少しだけ和らいだ。


「でもな、気になることがあるんだよな」


「気になること?」


「うん、陽翔のことだよ」


その言葉に、俺とゆうなは顔を見合わせる。まひるは真顔で言った。


「陽翔が、どうしても俺たちの前に立ちはだかる気がするんだ」


「でも、まひる。もう決めたんだ。俺は、ゆうなと一緒にいるって」


「それは分かってるよ。でもな、陽翔がこれからどう動くか、私たちにも関係してくるかもしれない」


まひるの言葉に、俺は深く頷いた。確かに、陽翔がどう動くかによって、これからの俺たちの関係も変わるかもしれない。


====


その後、ゆうなと一緒に歩いていると、少し気になることがあった。陽翔が、こちらに向かって歩いてきたのだ。


「お、おい、奏汰、ゆうな」


陽翔が声をかけてきた。その顔には、どこか曇った表情が浮かんでいる。


「陽翔、どうした?」


ゆうなが、少し驚いたように答える。


「いや、ちょっと話したくてさ…」


その時、俺の胸の中で何かがザワザワとし始めた。陽翔が何を言いたいのか、全く予測がつかなかったからだ。


「お前ら、もしかして、もう付き合ってるのか?」


その言葉に、俺たちは一瞬沈黙した。陽翔は、少しだけ苦笑いを浮かべていた。


「俺、やっぱり、お前らのことが気になってたんだ。でも、もう諦めた。だって、お前たちの方が、お似合いだと思うから」


その言葉を聞いて、俺とゆうなは顔を見合わせた。陽翔の表情は、どこか切なさを含んでいた。


「ありがとう、陽翔。でも…私たちは、お互いにちゃんと向き合うことにしたから」


ゆうなが、少しだけ恥ずかしそうに言うと、陽翔は静かに頷いた。


「分かってる。俺も、もう大丈夫だよ。だから、二人とも、幸せにな」


その言葉を聞いて、俺の中にある不安が少しだけ消えた。そして、陽翔は背を向けて、ゆっくりと歩き去っていった。


====


陽翔が去った後、俺たちはしばらく黙って歩いた。その後、ゆうながぽつりと呟いた。


「奏汰、私、陽翔と少しだけ話してきてよかったと思う」


「うん、俺もそう思う。これで、気持ちがすっきりしたよ」


その言葉を聞いて、俺たちはまた手を繋ぎ直した。これから先、何が起きるかは分からないけれど、お互いに向き合いながら、一緒に歩んでいこうと決めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ