まひるの作戦会議
文化祭が近づくにつれて、俺とゆうなの関係も少しずつ進展してきた。でも、それに比例して、まひるの調子も上がり始めていた。どうやら、まひるはこの文化祭を「告白大作戦」の舞台だと考えているらしい。
放課後、いつものように教室で集まっていると、まひるが突然、俺とゆうなに向かってグルっと回り込んできた。
「おいおい、二人とも! いよいよ文化祭だぞ! これを逃したら、もう二度と告白のチャンスなんて来ないからな!」
俺とゆうなは顔を見合わせ、微妙に肩をすくめる。
「まひる、そんなに言われても…」
「お前ら、まだ準備不足だぞ! あと一週間しかないんだから、ここで本気出さないと後悔することになるぞ!」
まひるが真剣な顔で言うも、少し大げさに感じる。でも、その真剣さに俺も少し引き込まれていった。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
俺が訊ねると、まひるは満足げにニヤリと笑って言った。
「よし、まずお前、奏汰はちょっとイケてる男子になれ!」
「え? 俺が?」
「おう、だってお前、普段は地味な男子だから、ここでイケてる男子を演じろ! そして、女子たちを『カッコいい』と思わせるんだよ!」
「それ、無理じゃないか?」
俺は目を丸くしたが、まひるはさらに自信満々に続ける。
「無理じゃない! お前、イケてないわけじゃないんだから! 服装とか髪型とかちょっと変えれば、イケメンになれるんだよ!」
「でも、そんなの俺じゃない気がする…」
「それが大事なんだよ! 今までの自分を脱ぎ捨てて、新しい自分を出すことが求められてるんだ!」
まひるの言葉に、俺は少し考え込む。確かに、このままでいるわけにはいかない気もする。もっと積極的に、ゆうなに対してアプローチしないと、陽翔にそのチャンスを取られてしまう。
「分かったよ…でも、髪型とか服装なんてどうするんだ?」
「それは、私が教えてやるから心配するな!」
まひるは、どうやらすでに「イケてる男子」に変身するための計画を立てているようだ。その後、まひるの指示で、俺はちょっとした外見改革を始めることになった。
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「うーん、なんか、すごいことになってきたな…」
翌日、まひるが選んでくれたシャツを着て、髪を少しセットした俺を見て、ゆうなは驚いたように目を大きく見開いた。
「奏汰、なんか…ちょっとカッコよくなった?」
ゆうなの反応に、俺は少し照れてしまった。
「いや、そんな大したことじゃないよ」
だけど、実際に見てみると、確かにいつもの自分とは少し違う。シャツの色やジャケット、髪型のセットが、ちょっとだけ自分に自信を与えてくれる。
「でも…どうして急に?」
「まひるが言ってたんだよ。文化祭では、俺も少しはイケてる男子を目指すべきだって」
ゆうなは少し照れながら笑った。
「そうなんだ…。でも、すごくいい感じだよ、奏汰」
その言葉に、俺は思わず心の中でほっとした。確かに、外見を少し変えるだけで、こんなにも気持ちが変わるのか。
その時、まひるが突然教室に入ってきて、俺とゆうなの顔を見るなり、ニヤリと笑った。
「お、いい感じじゃん! さすが、私がセンス良く選んだだけある!」
その言葉に、俺は顔をしかめた。
「まひる、少し黙っててくれ…」
「はは、そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだよ!」
まひるは、ちょっとした仕切りをして、次の指示を出してきた。
「さて、次はゆうなだ! 君には、もう少し自信を持ってもらう必要があるな」
「え? 何をすればいいの?」
「お前は…そうだな、もっと自分らしさを出せ! その可愛さを前面に押し出せ!」
ゆうなは驚きつつも、まひるの指示に従って、少し照れながらも笑っていた。
「うん…分かった。ちょっと頑張ってみるね」
まひるの作戦会議は、予想以上に本気で、どこかコミカルだった。お互いに恥ずかしがりながらも、なんだか楽しい雰囲気になっていった。
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「まひる、ほんとにこんなことで大丈夫なのか?」
放課後、まひると俺は準備をしながら少し話していた。
「お前ら、何かを変えたら、何かが変わるんだよ! そして、今のままじゃ絶対に進展しないんだから、こうやって変えていかないと!」
まひるの言葉には、確かな自信が込められている。俺はその言葉を聞いて、改めて覚悟を決めることにした。
「分かったよ、まひる。やるだけやってみる!」
「それでこそ、奏汰だ!」
その日、俺たちは文化祭本番に向けて、少しずつ自分たちを変えていく準備を整えていった。思っていた以上に、こんなにも準備が楽しいものだとは思わなかった。
そして、心の中で誓う。これから、もっと積極的に、ゆうなに気持ちを伝えていこうと。