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両想いの距離感

文化祭の季節が近づいてきた。どの学校もそうだろうが、文化祭の準備はクラスやクラブの団結力を試される時期だ。祭りのような熱気が、教室や廊下を駆け巡っている。


「おー、ついに文化祭の班決めだな!」


俺は、朝のホームルームでそう言いながら、ややテンションが上がっていた。だって、文化祭が終わったら、少なくとも一つは自分の気持ちを伝えるイベントが終わる。少しだけ解放される気がして、前向きになれる。


だが、その時――


「奏汰、うちらと同じ班になったよ?」


ゆうなが、少し照れくさそうに言った。その顔が、また妙に可愛い。


その瞬間、俺は思わず顔が熱くなるのを感じた。ゆうなと一緒に同じ班になるなんて、これってどう考えても一大イベントだろう。でも、まひるが何かを察したように、すぐに俺をからかう。


「おお、奏汰、なんだか顔が赤いよ? まさか、隣の席だからってドキドキしてるとか?」


俺は、慌てて顔をそむける。


「ち、違う! そんなわけないだろ!」


「ふふふ、言い訳するところが可愛いね」


まひるがにやりと笑いながら言ったその瞬間、先生が班決めを進めるために教室内を見渡した。俺は、心の中で深呼吸をしてから、改めてゆうなを見つめた。


(これで、文化祭は絶対に素敵な思い出になるんだろうな)


――とはいえ、その後、やっぱりゆうなと、2人きりになる時間を意識してしまう。もちろん、まひるがいるから、ずっと一緒にはなれないけど、自然とゆうなと接する時間は増えていく。なんだか、それが嬉しくて、でも、ちょっとドキドキしていた。


====


「おい、奏汰。今日も、結構無理してるんじゃないのか?」


昼休み、まひるが俺の隣に座り、ちらっと視線を投げかけてきた。


「無理してるって、なんで?」


「だってさ、あんなに顔が赤いってことは、やっぱり少しは緊張してるんだろ?」


その言葉に、俺はまた顔が熱くなった。


「そ、そんなことないって!」


「いや、だってさ、俺らから見てもお前、明らかにテンション高すぎなんだよ。普段はもっと冷静だろ?」


まひるの言葉は、俺の心をぐっと突き刺すような感覚をもたらす。確かに、普段ならこんなにテンションを上げることはない。少し恥ずかしさを感じながらも、俺は、あえてまひるの目を見て言った。


「だって、ゆうなと一緒の班だし、せっかくの機会だし……」


その時、まひるの目が一瞬、真剣になった。


「奏汰、ちゃんと伝えたんだよな? 自分の気持ち」


その言葉に、心の中でビクリとした。


「伝えた……って?」


「お前、ちゃんと告白したんだろ? もし、ゆうなが気づいてなくて、他の誰かに告白されちゃったら、どうすんの?」


その一言が、胸の中に重くのしかかる。


確かに、告白のタイミングを決めたとはいえ、あの日以来、特に何も進展していなかった。俺が告白したからと言って、すぐに気持ちが伝わるわけでもないのだ。しかも、陽翔があんなに積極的にゆうなに近づいてくる中で、俺はどうすればよかったのか分からなくなっていた。


「それは……」


「お前、グズってると、絶対取られるぞ」


まひるの言葉が、またもや突き刺さった。


その瞬間、俺は強く決意した。自分の気持ちを、きちんと伝えるべきだと。今のままでは、何も進まない。


====


放課後、文化祭の準備が終わると、俺は思い切ってゆうなを呼び止めた。


「ゆうな、ちょっといい?」


ゆうなは少し驚いた顔をして、立ち止まった。


「うん、何?」


「俺……お前のことが気になっている。でも、どうしても言えなかったんだ。でも、今は、もう迷っている場合じゃないと思うから、ちゃんと言うよ」


その言葉を口にした瞬間、ゆうなは一瞬だけ固まった。しかし、すぐにその顔がふわっと赤くなり、目を合わせて言った。


「私も……ずっと」


その瞬間、俺の胸は高鳴り、言葉が詰まった。


「え?」


「でも、気づいてくれなかったから…」


その瞬間、俺の心は、言葉では表現できないくらいの感動と安堵で満たされた。


そして、気づくと、俺たちは自然に手を繋いでいた。


「ありがとう、奏汰」


「いや、こっちこそ、ありがとう、ゆうな」


その時、俺たちの間に、何も邪魔するものはなかった。


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