秘密の話、君のとなり
週明けの月曜日、俺とゆうなはいつも通りに学校へ向かっていた。だが、今日はどこかいつもと違う気がした。なんとなく、日常が特別に感じる。この感覚が、新しいスタートを象徴しているのだろうか。
「奏汰、今日は何か予定ある?」
ゆうなが、学校の前で立ち止まりながら俺に聞いた。その質問に少し考えてから答える。
「今日は特にないけど、なんで?」
「じゃあ、放課後、ちょっとだけど付き合ってくれないかな?」
ゆうなは恥ずかしそうに顔を少し赤らめながら言う。その様子がまた可愛くて、思わず笑みがこぼれる。
「もちろん、何がしたいんだ?」
「秘密。終わってからのお楽しみ」
ゆうなのその言葉に、俺は少しドキドキしながら頷いた。彼女が何を考えているのか、少し気になるけれど、何でも一緒に過ごしたいという気持ちの方が強かった。
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放課後、教室を出ると、まひるが一足先に校庭を歩いていた。今日は、まひるにしては少しだけ珍しく真面目な表情をしている。
「あれ、まひる。どうしたんだ? 今日は珍しいな」
「お、奏汰、ゆうな。ちょうどよかった」
まひるは立ち止まり、俺たちに向かってにっこりと笑った。
「実は、私ちょっと相談したいことがあってさ」
「相談?」
ゆうなが疑問を浮かべながら、まひるに視線を向ける。
「うん、実は…私、ちょっと気になる子がいるんだ」
まひるの言葉に、俺もゆうなも驚きの表情を浮かべる。
「まひるが? そんなの初めて聞いたな」
「そりゃ、そうだろうな。でも、なんかさ…うまくいく気がしないんだよな」
「どういうこと?」
ゆうながまひるに尋ねると、まひるは少し恥ずかしそうに言葉を続けた。
「いや、実はな、その子…陽翔なんだよ」
「陽翔!?」
俺とゆうなは、同時に声を上げた。まひるが陽翔に対して抱いている気持ちなんて、想像もしていなかったからだ。
「お前、陽翔に!? なんで?」
「だってさ、俺、陽翔のこと…気になってたんだよ。最初は気づかなかったけど、最近になってさ、なんか不思議な気持ちになってきて」
まひるは照れくさそうに目をそらしながら言った。俺もゆうなも、しばらくその言葉に驚き続けていた。まひるが陽翔に抱いている気持ちが、まさかこんな風に展開するとは思わなかった。
「でも、陽翔は俺たちに対して、もう何も感じてないんじゃないか?」
俺が少し心配になりながら聞くと、まひるはうなずいた。
「うん、私もそう思ってる。でもさ、どうしても気になるんだよ」
その言葉に、ゆうなは少し黙って考え込み、やがて静かに言った。
「まひる…自分の気持ちを大事にしてほしい」
その一言が、まひるの心に届いたようだった。
「うん、ありがとう。少し気が楽になったよ」
「でも、これからどうすればいいのか、まひるにはわからないんだろう?」
俺がちょっとだけからかいの口調で言うと、まひるは顔を赤くしながら言った。
「だってさ、陽翔って、結構気難しいし…それに、私がもし告白してフラれたら、どうなるか…って考えたら、ちょっと怖いんだよ」
その言葉を聞いたゆうなは、少し考えてから、真剣な顔で答えた。
「まひる、告白するなら、自分がどうしたいかをしっかり考えないとダメだよ」
「それが難しいんだよ、ゆうな。私がどうしても陽翔に…」
まひるはそこで言葉を切り、顔を上げた。
「わかった、ちょっと勇気を出してみるよ」
その言葉に、俺とゆうなはそれ以上何も言わなかった。ただ、まひるの決意が伝わったからだ。
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その日の夕方、俺とゆうなは、約束通りに放課後の時間を過ごしていた。ゆうなに言われた通り、少し気になることがあったのだ。
「ねえ、奏汰、少しだけ寄り道してもいい?」
「もちろん、どこに行きたいんだ?」
ゆうなはにっこりと微笑んで言った。
「ちょっとだけ、秘密の場所があるの」
その言葉に、俺は興味津々になったが、どこに連れて行かれるのか全く分からない。しかし、ゆうなの笑顔がとても楽しそうだったので、自然とワクワクしてきた。
「楽しみにしててね」
ゆうなが言ったその一言が、なんだかとても大切に感じた。二人で歩いていると、ゆうなが前を歩きながら、時折振り返って微笑む。
どこに行くんだろう、という期待が膨らむ一方で、俺たちの間には少しだけ不安もあった。二人だけの秘密、何か大きな一歩を踏み出すような予感がする。