やっと届いた想い
文化祭が終わり、校内は静けさを取り戻しつつあった。すっかり片付いた教室で、俺とゆうなは二人きりで椅子に座っていた。周りの喧騒とは裏腹に、俺たちの間には穏やかな空気が流れている。
「奏汰、今日は…本当にありがとう」
ゆうなが少し照れくさそうに言った。その言葉に、俺は思わず微笑んだ。
「いや、こちらこそ。俺、ずっとゆうなに伝えたかったことがあったんだ」
ゆうなの顔が少し赤くなる。どうやら、俺の気持ちをずっと待っていたのだろうか。
「でも、俺も…まだ伝えられなかったことがあってさ」
「え? 何?」
「今日、文化祭の片付けのとき、陽翔と話してた時のこと。あのとき、少しだけ迷ってたんだ」
ゆうなは静かに聞いてくれる。
「迷ってたって?」
「俺は、ゆうなが陽翔のことを気にしてるんじゃないかって心配だった。陽翔がいい奴だから、ゆうなが彼を好きだって言われても、全然おかしくないって思ってたんだ。でも…ゆうなが俺を選んでくれたって、確信できて、今はすごく安心してる」
その言葉に、ゆうなの表情が柔らかくなる。
「奏汰、私、陽翔のことは本当に友達だよ。それ以上でも、それ以下でもない。あなたと一緒にいることで、私が一番幸せだって思ってる」
その言葉を聞いて、俺の胸の中にじんわりと温かい気持ちが広がった。ゆうなの瞳は、まっすぐに俺を見ていて、もう何も不安に感じることはなかった。
「俺も…ずっとゆうなが好きだった。何度も言おうと思ってたけど、なかなか言えなかった。でも、今なら言える。俺は、ゆうなをずっと愛してる」
その瞬間、ゆうなの顔がぱっと明るくなった。
「奏汰…私も…」
その言葉が出る前に、ゆうなは僕に近づいてきて、突然顔を寄せた。俺は驚きつつも、そのまま目を閉じると、ゆうなの柔らかな唇が自分の頬に触れた。
「ありがとう、奏汰。私もあなたが好き」
その言葉に、俺の心は完全に打たれてしまった。今まで、言葉にできなかった気持ちが、こうして繋がったんだと、実感できた。
「これからも、一緒にいてくれるか?」
「うん、ずっと…」
ゆうなは、微笑みながら答えてくれた。その笑顔を見た瞬間、俺の中で何かがはじけたような気がした。
====
夕暮れの校舎の窓から差し込む柔らかな光が、二人の周りを包み込む。もう、何も怖くはない。どんな困難が訪れても、俺たちは一緒に乗り越えていけると信じている。
「そういえば、まひるにはちゃんと報告しなきゃな」
俺がふとそんなことを口にすると、ゆうなはクスクスと笑いながら答えた。
「うん、まひるはきっとすごく喜ぶよ」
「まひる、あの調子だからな。でも、いつも助けてくれてありがとうな」
「まひる、きっといろいろ考えてくれてたんだろうね」
ゆうなが真剣にそう言うと、俺も思わず頷いた。確かに、まひるは物事の本質を見抜くのが得意で、俺たちが迷っている時も、いつも上手く導いてくれていた。
「まひる、どうしてもお前のことが気になるって言ってたけど、今となっては…本当にありがとうって思ってる」
俺がそう言うと、ゆうなは頷きながら「まひるも、ちゃんと幸せにならないとね」と微笑んだ。
====
放課後、校庭にはほかの生徒たちがちらほらと帰り支度をしている。その中で、まひるが俺たちの元に歩いてきた。
「おお! お前ら、ちゃんと報告する気になったか!」
まひるは腕を組みながら、ニヤリと笑っている。その顔を見た瞬間、俺はまた少し恥ずかしくなったが、同時に嬉しさがこみ上げてきた。
「まひる、ありがとうな。おかげで気持ちを伝えることができたよ」
「それは良かった! 私もやりがいがあったってもんだな!」
まひるは、少し照れた様子で俺たちに向けて親指を立てる。
「でも、これはまだ始まりだぞ。私たち、これからもっと素敵な思い出を作っていこうな!」
その言葉に、俺たちは思わず顔を見合わせて笑った。
「うん、これからもよろしくな、まひる」
「もちろん! 俺も、二人の幸せを見守ってるから!」
その後、三人でしばらく話していると、夕日の光が校舎をオレンジ色に染めていた。その温かな光の中で、俺たちはまだまだ続く高校生活の一歩を踏み出したのだ。
====
そして、数日後。俺たちはお互いの気持ちを確かめ合い、さらに絆を深めていった。陽翔とのことも解決し、まひるが言った通り、僕たちにはまだ多くの冒険が待っていた。
これから先、どんな困難があっても、俺は絶対にゆうなを守りたい。二人で一緒に乗り越えていけると、今なら確信している。
「ねえ、奏汰」
「何?」
「これから、ずっと一緒にいてくれる?」
「うん、もちろん」
俺たちは手を繋いで歩きながら、未来を一緒に描いていくのだ。