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(5)

全10,000字ちょっとの習作です。

よかったら、1週間お付き合いくださいませ。

「・・・ふァああ。若いの、調子はどうだぁ?・・・っと、直ってるじゃねぇか!」


二刻ほど経って、バルクが欠伸とともに酒場の中に入ってくるや、「そういや、こんな明るさだったなぁあ!懐かしいぜ、がっはっは!」と、安定した明るさに満足そうに笑った。そして、


「もう少し時間が掛かるかと思ったが・・・ふむ。エヴリンの勘は馬鹿にならんぜ」と立派な髭を扱きながら何やら得心している。


「・・・よし、十分な仕事ぶりだ。これなら、他所にも紹介してやれる。中々どうして、魔導技師と宣って、まともな腕の奴は少ねぇからなぁ?」


「腕が立つのは、軒並み都市管理機構に囲われちまうってのもあるけどな」と、バルクが口にした。

フォージには、蒸気機関だけでなく魔導機関も無数にある。その全てを維持するには、相応の人員が必要なのだ。


「ところでお前さん」

「?」


報酬を受け渡ししな、バルクが思い出したように問い掛けた。


「遺跡荒らしもやるんだってな。ということは、ソイツは飾りじゃあるめぇな?」


くいっと顎をシャクった先には、全長四尺ほどの古式ゆかしい錬氣小銃オーラ・ライフルが転がっている。


オーラ・ライフルという魔導具は、何も特別な物ではない。弾薬要らずで荷物を圧迫しないため、昨今の旅人の標準的な護身装備の一つだ。

もっとも、個々人によって扱いの巧拙は当然あるが。


「まあね。荒事にも、それなりに対処してきたつもりさ」


クロウは、如才無くそう答えた。

というより、旅人といえば、どちらかといえば魔導技術より荒事処理の方を得意とするものが多いだろう。


「ふむ、ならもう一つ、明日の用事を頼まれてくれんか?」


「酒場で扱う食材を狩りに、ワシの弟子どもを行かせようと思うんだがな」と、バルクは続けた。


「へえ。飯が安いのは、そういう理由か。営業努力というやつだ」


鉄の歯車は、酒も飯も安い。昨晩の飲み食いだけでも、クロウにはそれが分かった。


「まぁ、そんなところだぁな。それでだな、連中に初めて任せる大型の魔物だから、オーラ・ライフルでちくと援護してやって欲しいのだ」


「ズドン」とバルクが空を撃つ真似をした。


「そりゃ、俺の豆鉄砲で役立つなら吝かじゃねえが・・・何を狩らせる気なんだい?」


食い出があって、この辺りの荒野に出る大型の魔物というと、あの大物しか思い当たらない。すなわち・・・


「ルフだ」

「うんうん、そうだよな。この辺りの大物といえばルフ・・・って、おい!」


事も無げに言い放ったバルクに、クロウは思わずツッコんだ。


「なんだ?」

「なんだ、じゃねえよ!ルフなんて、なんで好き好んで狩りに行かせるんだ?!」

「歩留まりがいいからだが?」


「デカけりゃデカいほどいいぞ」とバルクはクロウの抗議を聞いていない。

魔鳥ルフは、積極的に人を襲うことは無いが、縄張り意識が強く、風の魔法を巧みに操る難敵だ。


「まぁ、弟子たちもそれなりの遣い手だ。お前さんは、奴らの連携に合わせて、適当に援護射撃をしてくれりゃいい」

「簡単に言うが、そういうのが一番難しいんだよ・・・」


クロウは、がっくりと肩を落とした。

とはいえ、ルフを狩る場面になどそうそう出会すものでもない。見聞するには面白そうだという気持ちも湧く。


「遠間から牽制するだけなら」と条件を出すと、「うむ、それで構わん!」とあっさり話は纏まった。

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