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ZEROミッシングリンクⅦ【7】女たちが刻んだ大陸の紋様 ZERO MISSING LINK 7  作者: タイニ
第六十一章 時が紡ぎたいものは

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90 ロボットも結局はただの女

最後にお知らせがあります。



「ラスー。」


同期のインターンに呼ばれたラス・ラティックスは、能天気そうな男に振り向いた。


「ベガスの資料項目見たか?視察の内容確認しとけよ。」

「……はあ、俺じゃなくていいのに………。」

「なんで?行きたくないのかよ。旧設備のリノベーションで回してんだぜ。そんで中央区よりきれいとか見た過ぎる。」

「………。」

あんなにベガスをこき下ろしていたのにと世間に呆れるが、ここまで来て否定し続けるのもタダのいちゃもんだと一応は受け入れた。


アンタレスのメカニック開発地域の拠点の一部が、ベガスに来ることになってしまったのだから仕方ない。



ファクトとリゲルの幼馴染、ゲジゲジ眉毛で眼鏡のラスは結局SR社でもベージン社でもなく、インフラ設備の建造メカニック会社に方向を決めた。今の会社で技術や会社の仕組みを経験して、自動車企業系のニューロス会社に行きたいと思っている。

どちらの会社に行っても、結局『ファクトの親友』がついてくるからだ。しかもトップアンドロイドからの名指し。


「なんでそんなにベガス嫌なわけ?みんな見学行きたがっているのに。」

「……。」

ファクトもいるし、シリウスもいるかもしれないから。

「移民が多くてヤバいけどさ、ユラス人は思ったより雰囲気いいって聞いてるし。」



カストルとチコ・ミルクの事業どころか人間性まで批判してきた世の中は、旧設備を活かしながら最新のインフラを築いていくベガスと、ボロボロの巨大地下構造を抱えながら都市再建をして行こうとする河漢に、過去はもう忘れたかのように注目が集まっていた。

SR社が中心で入っている技術とコネに繋がりたいのははもちろん、参入すれば巨額なお金が動く。そして、都市機能が老年を迎えようとするアジア最大の経済都市、アンタレスの再建モデルにもなるのだ。



技術や事業だけでなく、既にたくさんの人が住み、たくさんの利権が絡む中で、どう人間を動かして来たかにも世界の関心が集まっていた。

しかも、基本自分本位で世の中に関心が薄そうな若者たちが動いている。もちろん世界を見れば、やる気や公益心のある若者はいくらでもいだろう。



けれど、なぜかベガスが最初に選んだパートナーは大房であった。


大房は正直、イキった若者たちがストリートなことをしてカッコいいと思っている上に、就職難。かわいい子がいればナンパされ、中小企業と個人商店、ジャンク屋が多い上、無駄に勢いもあるのかおじさんの見栄しかない。ゆえに税収も少ない。というほどにしか知られていない町だ。

つまり、何の注目も浴びていなかった。何なら大都市の巨大スラム、河漢の方が世界中に知れ渡っていたほどだ。

なお、河漢の人口は公式調査よりはるかに多いし、増え続けている。



「河漢とかも入れるんだぜ。」

同期は楽しそうだ。


河漢の場合、既存市民が数十万人いる場だ。これこそ独裁政権でなければ簡単に土地から人を追い出せないであろう。もちろんアンタレスでは強制施行に多くの手順が要り、いくらスラムでも早々に手出しはではない。

中央区だけで2千万人規模の人間がいるため河漢はその比でもないし、新都市という平地が横にあったため流動が可能であったとはいえ、何十年も放置されてきたのだ。しかも行政区域を跨いだ移動。アンタレス市の区は、地方の州違いに相当するほど毛色が違う場合もある。とくに西区河漢と中央区。どうやってその垣根を越えたのか。


ただ、アンタレス全体を見れば、直ぐに手直しが必要だと思えるほどの危機感も後退感も一見して分からず、都市機能の移動という選択はないと思えるほどまだ街は元気だ。


そういう意味では、一般市民のベガスへの関心は興味本位しかなかったが、街や国、世界を動かしたり管理する側から見れば、50年100年、数百年先を見通していくための重要な資料であった。



ラスはもう一度心でため息をつく。

あんなに好きでワクワクしたニューロスアンドロイド。


その頂点シリウス。


ニューロスが作る未来に関心がなくなったわけでもない。

シリウスが嫌いになったわけでもない。



なのに、世界を動かすべき彼女たちは、なぜか心星博士夫妻の息子、ファクトに興味を持つ。その子息という理由は大きいだろうし、モーゼスとしては人質にもなるとでも思っているのだろうか。



ただのアンドロイドの()()()()()()()()()()()にも、嫌気がさす。



人間のように作ったニューロスヒューマノイドは、情報の海を持ち、最高に知的で最高に崇高なプログラムを組み込んでいる。


なのに、結局は崇高でも何でもなく『ただの女』だった。


まるで世間の悪を知らないように微笑むあの顔の中には、女の情を秘めている。


世間はそれを知らないのか。

モーゼス・ライトも人間に(かしず)いているようで、腹の底で男を笑っていそうな気がする。


その事実に、腹の中からどうしようもない怒りと嫌悪が湧き起こる。




ラスは女性なんて大して知らなかったし、別に個人的な関りも敵意もなかったが、彼女たちは自分にそういう顔を見せたのだ。


自分の中の何かを汚されたようで虫唾が走った。




世界トップ企業の極同士のトップアンドロイドに構われる立場。これは企業面接時の大きな関心になるとは思ったが、受けた企業には話してはいない。そうしたらきっと、()()()裏表のある顔で『心星子息の親友』『シリウスに個人的に話しかけられる彼の友人』である自分を見るだろう。


そして、ずっとそれが自分に付いて回るだろう。

シリウスたちが本当に構いたい、肝心の博士息子はただの学校教師を目指しているだけなのに。



「…あー。なんで!!」

いきなり呟くラスに同期がビビる。

「お、大丈夫か?仕事し過ぎか?突然キレたりするなよ?ラスは優秀だからな!インターン最後まで一緒に頑張ってくれよ!」

同じ能天気層でも、あいつとは違う。悪い奴ではないと思うが、心星家と食事をする仲だと知られたら執着されそうだ。


心でため息をつきながら、二人で休憩に向かった。




***




ユラスのおそらく東方、荒野の研究所。

チコの父テニアは寝たきりの女性をそっとのぞき込んで、ショックを受けていた。


「……誰だと思います?」

女性のスタッフが静かに聞く。


研究所の奥の美しい部屋で横たわる女性は、自分の妻と同じ色の髪をしていた。

明るいブラウン。

最大限きれいに手入れしてあるが、一部は植毛の毛なのか。


「…レグルス………」

「?」

思わずそう漏らして、サダルとシャプレーは小さく反応してしまうが、その髪を触ろうとしたテニアは手を降ろした。



そしてはっきり口にしたのは違う女性。

「………ロワイラルですか?」


「?!」

その場にいた全員が声にはしないが騒めく。



「顔は違うけれど…多分ロワースの娘、ロワイラルですね。」

「…………」

ロワースとロワイラル。完全にオキオル共和国虐殺拉致事件に関わる親子の名だ。

テニアは暫く無言でその顔を眺めた。


もし整形をしていなくても、元の顔が分からないほど引きつり細くなってしまった女性。一部が生体ニューロスのため、連動して痩せこけてはいるが肉親との段差が見える。よく見ると肉身部分の根元に白髪が見えた。


「なぜそう思いましたか?」

一人が尋ねる。

「ロワースと同じ系統の霊をまとっています。それから……後姿が見えます。まだ少しだけ小柄な。

この姿を知っています。」

机に向かって必死に勉強する少女。


「バイシーアの集落は比較的自由でしたから、ロワイラルと……同じ歳のタイラが、女性たちに看護や医療を習う姿をよく見ていました。タイラは黒髪で、細くてスラっとしていました。足が大きかったので背も伸びたんじゃないかな……。

レグルス・カーマインとロワイラルは似た明るい髪色だったので、二人が一緒にいると母子や姉妹のようだとみんな言ってよく笑っていました。」


「………」

一同、信じられない。

こんな所に当時を知る人物がいたなんて。彼女はまだ中学生だった。


同時にテニアも信じられない思いでいた。

外交官一家にギュグニーを脱出した人物がいたなんて。



「彼女は……幸せでしたか?」

突然シャプレーが思いがけない質問をした。


「…………。少なくともバイシーアのところでは幸せそうでした。ひどく廃れた所だったし、水も少なくて…溜まった洗濯に追われる今時途上地域でもないような生活をしていたのに、よく笑っていました。歯磨きの真水さえ準備できない日もあるような所だったのに。」

「……。」


「生体になるものを持ち出せばよかったですね。」

彼女たちの物理的の証になる。髪の毛、指紋、血液。

けれど、彼女たちは所在になるものの持ち出しを拒否し、テニアもそれを尊重した。


今思えば少なくとも大人たちは、その地に骨をうずめる決意をしていたのかもしれない。

外部の人間と結婚したレグルスと子供たちを送り出し。


もしくは情報が洩れて、襲撃されるのを恐れていたのか。シーキス牧師でさえ、自分の手元を離れたら誰が裏切り者か分からないと言っていた。あまりに危ういことを人に任せても責任は持てなかったのだ。幾つかの婚姻書を運んだテニアも、全てを信頼されていたわけではないし、女性たちの場にいつも混ざれたわけでもない。

とくに、教室の子供たちは多少隠されるように生きてきた。


それが守られることにしろ、虐待にしろ、ギュグニーでは当たり前の風景だったのだ。



「……少しだけ。顔に…触れてもいいですか?子供たちのお姉さんで、私にとっては娘のような立場の子でした。」

「……ええ。」

シャプレーが静かに頷いた。




いつもご訪問ありがとうございます!


何度も休む休む詐欺のようなことをしてきましたが、しばらく本当にお休みします。本業の繁忙期はまだ先ですが、少しお話をまとめたいと思っています。


ストーリーの全体像や最後は決まっているのですが、初期構想より変更したところと最後に向かう連結がまとまらずにいます。少し、現実に照らし合わせ過ぎて自由度がなくなってしまい、終盤に必要な設定に持ち込みにくくなってしまいました。


そのため、もう少し内容が熟してから書き進めていきます。<(_ _)>



その間、短縮版を進めていくか、もう1つ、少し大きめの物語があるのでそれを始めていくか悩み中です。本編修正は進めていきます。もしかしたら名前や名称など変更されることもあるかと思います。



●なお、『ZEROミッシングリンク』の登場人物イメージ画がイラストデイズさんにアップしてあります。

https://illust.daysneo.com/illustrator/nekorea/

#ZEROミッシングリンク、にて。


中の人がなまぐさなので、気が向いて動き出したら新たなキャラが更新されるかと思います。



そのうち突然復帰するのでよろしくお願いいたします!


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