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ZEROミッシングリンクⅦ【7】女たちが刻んだ大陸の紋様 ZERO MISSING LINK 7  作者: タイニ
第六十一章 時が紡ぎたいものは

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85 時には違う外部力



ファクトとしてはクレープ屋で起こった珍事をただ話したいというのもあるが、カーフの件をどう切り出すか、頭の中でグルグル考えたいたのだ。


「…何言ってんだ、ファクトまで。もう寝ろ。明日もあるだろ?」

「チコこそ何言ってるの?話逸らさないでくれる?まだ夜9時だよ?ターボ君ですら11時まで家の中走ってるらしいのに。」

「なら勉強するかラムダと遊んでろ。そもそもここの営業は9時までだ。」

「え……仕事したのに勉強もさせるとか鬼なの?ラムダはコンビニでバイト中。俺はチコと話に来たんだよ。」

「……今日は会議ばかりで疲れたからカーフの話は聞きたくない。」

「うわっ!ひどっ!これから河漢に行くつもりなのに?元気じゃん。」


スケジュールに入れていないのに、なぜファクトがこれからチコが河漢に行くことを知っているんだとカウスを睨む。

「知りませんよ。察したんじゃないですか?」

だいたいチコは人が少なく荒仕事の多い河漢に行きたがる。



「カーフが何か言ったのか?あいつ、なんでそんな女々しいことを……。」

「へー。カーフはファクトを信頼してるんですねー。何の弱みも吐き出しそうにないタイプなのに。しかも、直行。間髪おかず。」

あの会議後なのに、とカウスが楽しそうだ。北メンカルのガーナイトの件や、チコの立場、ベガスの事情、いろんなことを知っていてなおかつユラス人でもなく、人の話を流し聞き流してくれるのはファクトしかいないのだろう。


「あのさ、チコ。ムギの件もさ、カーフのおかげでどうにかなったんだよ?感謝してあげなよ。時々どこかに派遣するぐらい許してあげな。ベガスだけにいたら井の中の蛙になっちゃうよ。」

「ファクトに言われなくてもお礼くらい言いに行ったぞ。それ以外は許さん。」

「あんまり縛ると、あとで反動が来てグレちゃうよ。」

「構わん。」



ムギ、カーフ、ファクト。チコの話を聞かない三大問題人物である。


キファやレサトもそうだが、奴らはまだ国際問題と国境は越えない。キファは違う線を越えそうでヤバいが、そんな度胸はないであろう。





「……チコ、そいつは何なんだ…。」

離れた場から、うるさい学生が気になってしょうがないフラジーアがついにやってきてしまった。


「…そいつ?俺?こんばんは!アーツのスタッフです!」

フラジーアもここに来てから次々現れる学生が何なのかよく分からない。VEGAが後援しているアーツというのは聞いているが、こんなに学生子供が多いのかと驚く。実際大半は社会人なのだが、ユラス人から見ると半分は子供に見えるのだ。


彼らも一杯コーヒーを飲みに来たので、ファクトも飲むかと聞かれた。

「いいです。既に藤湾で3杯飲んで来ました。クレープどうぞ。毒は入っていません。」

と礼をしながら言うも、三佐と言われた男がファクトに甘いソーダを出してくれた。しかもアイスまで乗っけて。

「……ありがとうございます……。」

背丈は子供でないはずなのに、なぜか完全に子供だと思われている。ムギに甘いココアを出すと怒る気持ちを体験してしまう。


余計なことを言うなとチコに叱られながら、ガイシャスが許可を出しここにいるメンバーにクレープが出された。

「男性が多いしと思って、おかず系増やしておきましたよ。」

「ファクト、黙ってろ。」

「はいはいはいはい。」

といって袋を探る。


「チコは前、バターシュガーがおいしいって言ってたからこれ…と…、アーモンドバターアンドクリームと。あと、俺のおすすめ特殊形体カスタードブリュレ・オン・オレンジチーズ!オレンジってところが変形型。チコ、オレンジ好きでしょ?」

「…………」

好きと言った記憶がないのに、なぜそうなるといつも疑問しかない。


「チコ、ブリュレって知ってる?」

「知らん。」

「だめだよ!アンタレス青年女子の心を掴むなら、それくらい知っておかないと!プリン進化型。生クリーム入りで最後焦がすの。ほら、このパリパリの。」

1つ出してチコにあげる。大量持ち運び用に横倒しに作ってあり、さらに少し崩れているが、チーズクリームの横に硬めのプリンと焦げ目が見えた。


「これを可能にさせるのが、アイオス社トーチバーナ、コテ式変形可キャラメライザーボンベ仕様。

名前かっこよくない?最高炎温度摂氏1700度。太陽越えはしないけど、もう惑星っしょ。ホットジュピターだよ。アストロアーツも焦がし技するから、クルバト書記に報告しておかないと。アーツもすごい装備してたんだよ。カフェマシーンと鉄板と食洗器以外のマシーン知らなかった………」

アストロアーツはバイト女性も怖がらないように、電気アイロン型である。そもそも奴らはデザートなど気分でしか作らないので、メニューにあってもある物か現物を仕入れた物しか出さない。


「こっちは定番形体チョコバナナ苺イン・アイス。苺は旬で味が変わるけど、バナナはだいたい同じだからバナナが超基本形、安定供給、量産ナンバーワンかな。バナナね。

これはカスタム・白玉装備抹茶塗装。こっちは重量型コーヒーゼリー大福装備。

店員さんと盛り上がって、限定オプション・果物刻んで全混ぜも作った…。あの時他のお客さんが来なければ、隣の屋台と条約結んで海老チリと蟹の二重層・オン・ロブスター作ろうって作戦練ったんだけど……。

って………チコ、カスタードブリュレとかけっこう乙女なんだね!」

「余計なことを言うなと言っているだろ!」

黙って聞いていたチコに叱られる。勝手に選んできて自分の好みにされるというウザいことまでしているので仕方ない。



「で、何か言いたい。簡潔に言え。二言で済ませろ。早く寝ろ。」

「チコさ。みんな行かなくていいって言ってるのに自分も他大陸や河漢に行くんだからさ、カーフにもアジアラインの責任少し持たせてあげなよ。ガーナイトや南メンカルの生徒も預かってるんだし。」


「………三言以上を言うな……。」

先言われたことを、また言われて気持ちの行きどころがない………が、今は表に出さない。

「そんなスマートなボキャブラリーないし。だから今、読書訓練してるんだよ。俺。」

「あのな……私が仕事をすれば早く済むこともあるだろ?」

「それ言ったらカーフも一緒だよ?」

「………。」

カウスが正に!という反応をして………いないのに、チコにはそういう反応をしたように思え、足をガツッと踏んでおく。

「うおっ。何ですか?チコ様!痛いです!

「そんなブーツ履いて痛いわけないだろ!!」

「私に当たらないで下さい!」


「はあ……」

ファクトとはまともな会話にならなくて、ため息しかない。この適当さがカーフの気分転換にちょうどいいのだろう。


「分かった……。考えておく。」

チコは気が抜けて力なく答えた。

「え?ほんと?!」

「カウスさん覚えておいてね。チコが嘘つかないように!」

「私はチコ様の奴隷ですので、矛盾していようがチコ様の言葉通りに動きます。」

カウスも言うことを聞かないくせにとチコは思うが、言ったら負けである。


「ガイシャスさんも!あ、ここにいらっしゃる皆さまも!」

周りはわけが分からないが、取り敢えずOKしておく。

「は~。ユラスの皆様、いつも反応が良くて好き。」

初めてベガスに来たメンバーは戸惑っているが、ファクトにそれは目に入らない。


「まあいいや、よろしくお願いします!」

「ファクトも勝手なことするなよ。先に報告してから行動しろよ。」

「チコありがと!!」

机に頬杖をしていない方の手をとって両手でブンブン振ると、振り回されながら急にチコが力ない素の顔になった。

「…………」

行こうと思ったファクトが顔を(かし)げる。

「……?」



「………なんか久しぶりにファクトと面と向かって話した気がする。」

「そう?会ってたし、先まで顔逸らしてたのに?」

「そうか?」

「そうだよ。」

「あ、これ見て!」

ファクトがデバイスで何かを見せていると、しばらくして思わず破願した。

「これ手だ。はっきり分かる!でもどっち似だろ?」

カウスが覗き込み、なるほどという顔をした。


ミザルのお腹の中の動画だった。もういつ生まれてもおかしくない。


一通りチコに見せて、言いたいことだけ言って立ち上がる。

「では!皆さまお疲れ様です!自分、寝ないけど給水所の友人を見に行ってきます!いま、ペットボトル配布数カウント100本越えてます!!」

と、勝手に敬礼をしてまた出て行ってしまった。


「あれ?ファクト?」

戻って来たマイラと偶然にもすれ違う。

「あーー!!!マイラさん!お久しぶりです!!クレープ余ってたら食ってくださいね!」

「え?ファクト??」


「…………ん?」

何か忘れていたチコ。

「?!あっ!!!!私も給水所行かないと!!」

と、思い出したようにチコも立ち上がるも、遅番の女性兵たちに止められていた。


マイラといえば、チコがいるのに気が付いてそこを去った。




突風のように現れ、突風のように無意味なことを喋くり、突風のように過ぎていく男に、ベガスを知らないメンバーは頭がハテナになっている。面会時間が過ぎた駐屯に勝手に来て、挨拶はするのにきちんと自己紹介もしないし議長夫人に馴れ馴れしいありえない距離感。一応関係者のリーダークラスは、24時間特警や軍に打ち合わせに来たり連絡を取ることを許されてはいるが誰なんだと思う。



そして、ベガス駐在に先のうるさい男の苗字を尋ねてハッとする。


『心星ファクト』


あれが、ポラリス博士の息子、チコの弟かと。義体に関わっているメンバーはポラリスと面識がある者もいる。顔は全然違うのに、性格はどこか似ていた。



●なぜがオレンジ好きになっている

『ZEROミッシングリンクⅠ』20話 森の香り

https://ncode.syosetu.com/n8525hg/22/


●オレンジが好きな人

『ZEROミッシングリンクⅠ』24話 金色のメモリー

https://ncode.syosetu.com/n8525hg/26/






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