表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ZEROミッシングリンクⅦ【7】女たちが刻んだ大陸の紋様 ZERO MISSING LINK 7  作者: タイニ
第六十章 僕の一歩はこれだけだけど

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/95

74 全ては集う、赤星に



ベガスマンションの一室。


チコの側近アセンブルスは、寝入った幼い子供の顔を見てそっとキスをしてから寝室を出る。一瞬起きそうになって慌てるも、直ぐにまた寝入った。


「起きている時は暴れん坊だけど、寝る時はよく寝てくれるから助かるよ。あとね、保育園で顔に少しケガをしたって。」

「ケガ?分からなかったぞ。」

二人はタウとイータ夫婦のターボ君は暴れすぎると呆れていたのに、生まれてみたら自分たちの子も似たよなものだった。今度は台所で子供の報告をするサラサの腰を抱き軽くキスをする。



そしてダイニングの椅子に座って装備を外していく。外側のプロテクターの一部は職場で外すが、それ以外はだいたい日常でも着けていた。サラサはいくつかの機械を持って来てアセンブルスの義体に装着し、数値を測って2カ月に一度の作業を始めた。


ほぼ音もなく滑らかにアセンブルスの背中から肩、そして頭蓋骨手前まで右上半身が開いていく。


右側前頭骨、頭頂骨などは義体だ。左の義眼もきちんとの脳神経と繋がっているか確認する。基本管理はラボでするが、日常やイレギュラーな時に自分で管理できるように決まった動作確認や簡易調整の訓練はしておく。遠隔でもできることもあるが、管理外のデータが入っていないかもチェックしていくのだ。


一体化義体やサイボーグのデメリットは接触部分の差異、肉体とのバランス差が出てくるところ、一般の医者には手に負えない場合があること。

そして一生どこかに体ごと監視、紐付けされることだ。場合によっては排泄や性行為まで分かってしまうこともある。消化機能がない場合も長く肉身部分を生かすために、結局は栄養摂取排泄の手順が必要になる。ただし、連合加盟国においては一定以上のニューロス化は基本禁止とされている。



全てが終わるとサーとまた体が戻っていく。見た目皮膚になっている場所は一見でニューロス化したと分からないほどきれいに繋がっていった。


「最近思うのだが…」

一息したアセンブルスが話し出した。

「……?」

「…こういうのファクトたちが喜びそうだな。」

「…………」

サラサが少し考えてしまい、それから笑い出す。ファクトは機械っぽい機械が好きだと言っていた。

「そういう想像もできそうだけど…どうかな……。普通はショックを受けると思うけど。とくにファクトは敏感だからそんな風には思わないと思うよ。」

ファクトが敏感?と思いながらもアセンブルスは静かに笑った。



サラサは機械化部分と別個に分けていたアセンブルスの髪を一つにまとめ直し、後ろの椅子に座ってそっとその背中におでこを落とした。


しばらく穏やかな沈黙が続く。




アセンブルスが最初に頭を割るケガをしたのはチコと出会ってから同じ作戦の中でだった。


まだチコの存在も知らず、プロテクターやマスクをしており細身の兵だと思っても女性とは知らなかった。アセンブルスは助けられたチームの中にチコがいたことは後で知る。その時負傷の頭部は普通の義骨に。


後に、その()が大怪我をして現われた時、異国の傭兵チコ・ミルクだと分かった。

一時期訓練を任され、非常に優秀で不思議な感じのするチコに傍惚(おかぼれ)れするが、周りには既にカフラーやカウス、その他の先鋭たちがいた。自身は大きな軍位はなくともチコに並べる位置に。けれどカフラーたちとの間には、それ以上の何かがあったことにアセンブルスはよく気が付いていた。

彼らは地位があるだけでなく、民族や世界を率いて行ける人間だ。



チコは?


彼女がどういう人間なのかは分からない。

知っているのは普通とは少し違う、元傭兵だという事だけだ。


「チコ、ユラスは規則や上下関係が厳しくて大変だろ。」

「いえ、とくには。」

チコから見れば、厳しいながらも規律があり、女性が守ってもらえる軍隊は今までになく恵まれた場所に思えた。傭兵時代、男と並ぶほど強くなるか男に完全に依存する以外生きる道はなかったのに、ここは女性たちが自由で、男性と力差はあれど対等に見えた。



その後アセンブルスは、サダルが出て来たことで実質だけでなく気持ちも全てを諦め、その代わり自身を捧げた。


アセンブルスがチコを思慕し、それでも側近でいられたのは、一緒になれない代わりにサダルが捕虜になりチコが一人になった時点で、命を掛けて議長留守の間、夫人を守ると約束したからだ。

実際その後、チコを庇って負傷し半身に大打撃を受け強化ニューロス化となった。アセンブルスも優秀だったため全体強化候補の話もあったが、それは辞退した。了承してしまうと中央ユラス軍の管轄から外れてしまうこともある。チコも既にSR社からも軍からも離れていた。




あの頃を思うと、孫ぞいられない今の生活。


隣りにいるサラサ。


「ま、心配顔で「それもうサイボーグじゃないの?…」くらいは言われそうだけどね。変な顔で。」

サラサは呆気に取られながら言うファクトを思い浮かべ、仕方なさそうに笑った。まあ、サイボーグではあろう。クルバトノートには何と書かれるのか。





タイナオス捕虜からの議長解放の前時期、アセンブルスは議長帰還調整のために一時ユラスにいた。


その時にチコが正体不明の男により重体。

生きた心地がしなかったし、チコに自由を許したのはアセンブルスだ。責任は大きい。


あの頃のチコが虚ろなのは知っていたが、元々どこに心があるのか分からない人だったので、まさか生きることの意味さえ失っているとは思わなかったのだ。自身の存在がユラスのためにならず身を引いた方がいいと思っていたのだろう。そしてシェダルの出生も知って気持ちが緩んだのか。勝てない相手ではなかった。


ただ、それも浅はかではあったが。


残される方の身にもなってほしい。

今思い出しても身が縮む。何か一つの差で、シェダルの気分一つで、もうチコはこの世にいなかったかもしれなかったのだ。



「ファクトには感謝だな。父親が見付かっただけでも、チコ様に死ねない理由ができたから。」

バベッジ族長血統の子孫を自分たちの陣営で死なせるわけにはいかない。チコにもそれくらいの重みは分かるだろう。

正血統のチコの父親をベガス陣営まで連れてきたのはファクトだ。族長たちですら存在も知らなかったのに。



サラサとアセンブルスにはそれぞれ機密があるが、共有できる話をすり合わせていく。

「………アルゲニブの動きは?」

アルゲニブは東アジア外相だ。

「モーゼスに噛んでいるのは間違いないけれど………、吊るし出すにもう少し確定したものが欲しいって感じかな。彼の前時代の先祖がメカニック生体で相当なことをしているみたい。あと、サイドビジネスで加虐な趣味のお手伝い。直系が途切れたから傍系でも影響が出れるんだと思う。霊線が完全にその代に被ってる。」


サラサが図を示しながら説明していく。彼の先祖は人の売り買いをしていたのだ。しかも、時代錯誤の相当非人道的な。明るい髪、紫と青緑の目のチコに執着していた東アジア外相である。

「……精算してこなかったのか?しかもなぜ今更…」


普通、罪を犯した代で服役や賠償をしたり、そうでなくとも子孫も含め周囲に貢献した生き方をしていくことで、あらゆる絡みは徐々に相殺されていく。


誰もが数代辿れば犯罪者や人を蹂躙し、歴史を間違えた先祖に当たるのだ。


けれど皆がそれに対応するわけではない。周りの環境や孝徳において清算されていくからだ。けれど、彼の先人たちは権威に隠れながらその生業をやめなかったし、悪趣味をやめるために自身と戦おうともせず、世の中や他の似た者に責任や負債を転化してきた。


「ずっと逃げ切って、家系も偽っていたみたい。曽祖父の代は西アジアのテレスコピィの近く、倍孫(バイソン)。」

「…ベージン社の本拠地か……。」


「さらに父の家系が北メンカルとギュグニーに繋がっている。

前時代の代も、東アジアに来たその子孫も情報多過時代の完全な孤立世代。みんな自己中心的に生きてきて、来るものが来たかな…という感じ。同民族や親族は大事にするんだけど、あんまりいい方向ではなかったかな…。」

いわゆる権力を使った身内びいきな世代を数代続けてきたらしい。




今、最後にアジアに全てが集まろうとしている。


善いものも悪も、最良の者も、最悪な全ても。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ