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ZEROミッシングリンクⅦ【7】女たちが刻んだ大陸の紋様 ZERO MISSING LINK 7  作者: タイニ
第五十八話 あなたが欲しくて

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45 見付けた宇宙の人



『ロワイラル。赤ちゃんを抱いてみる?』


やっと結婚に落ち着いた元娼婦の女が、ロワイラルに赤ちゃんを抱かせてくれた。昨年、結婚の祝福を貰った姉さんだ。


『ひいっ。』

かわいいというより、怖くて未知だ。こんなにも小さな赤ちゃんは抱いたことがない。

『はは!』

姉さんが笑う。かなり引け腰で抱いたけれど、しばらくして自分の懐に形だけでも収まってホッとする。


正直、初めて抱いた新生児はよく分からなかった。


けれどカラが楽しそうに聞く。

『ロワイラルもいつかお母さんになるのかな?なりたい?』

『…なりたい……。』

そう、とカラはにっこり笑う。ほとんどの人は知らなかったが、この頃カラは流産し体も少し弱っていた。


『天に子供を残したいの。いつか誰かが、尊い誰かが、聖典歴史の結末を見られるように………』

ロワイラルはそう続けてにっこりともう一度赤ちゃんをみる。



その結末はきっと人類の結末。


『人類はここまで来たんだよって、最後に親なる神様に伝えたい…。』


敬虔な家系だったロワイラルは、この地に桃源郷を作りたかった。

結末は終わりではない。新しい始まり。


そして、桃源郷は天のどこかではない。この地球に作るのだ。人の努力で。空想や幻想なんかじゃない。天啓と科学と理知において。

もうすっかり地球は疲れきってしまったけれど。



びぃっと、抱いている赤ちゃんが泣きそうになりロワイラルも「うわっ」と驚くので、みんながまた笑う。


けれど、赤ちゃんは泣かずにクシャっと笑うので、かわいいなと思った。




いつかきっと――



きっと――



私も……






ね?





ファクトは振り向く。


――誰かがこっちを見た気がする――





―――



関係者しかいないラボの礼拝室にたった一組。手を繋ぐ二人。


あの人に、あの母さんと呼んだ人に……来てほしかったと思う。



目の前の人は――





――ファクト!


どこかで低く重みのある声が響く。社長?






――ここを誰かと歩けたらよかったのに――




私もそこで――



――にっこり笑うの――





――「ファクト!」





「!?」


ガバっとファクトは身を起こした。



「は?」

「…」

少し固まっている周囲の皆さん。



「は??」

と、ここがどこか思い出せないまま……


世界がガーーーーーーーと動いていく。


「待った!ちょっと待った!社長止めて!」

「は?」

今度はシャプレーが何のことだと戸惑うが、サイコスの事かと気が付いた。


「…止め方など分からん。」

「えっ!マジっすか?!」

と、迷っているところに、なんとなくシャプレーが指をパチンと鳴らした。


「は!」

「…どうだ?止まったか?」


両手で顔を覆うのをとどまり、そのまま手のひらを見つめ世界が動いていないか確認する。

「……」

「…あ。」

「『あ。』?」

ファクトの一言に、博士たちも息を飲む。


「多分大丈夫です。止まりました。」


はあー、とみんなの緊張がゆるんだ。



「……良かった…。」

「社長。私たちは全然分かりませんでしたが?」

先より増えていた社員たちがよく分からない顔で見ていた。


「……ファクト、何か飲みますか?」

アンドロイドスピカに気を遣われる。

「…サイダー下さい。」


サイダーが上手い。

ぐびぐび飲んでおく。きっと質のいいメーカーのだろう。……とそういえばSR社は飲料部門もあった。とりあえずコラーゲンとかビタミンとか入っているのだ。

「10分ぐらい経ってます?」

「いや、1時間だな。」

「1時間?!」

なるほど、周囲の状況が変わるわけだ。

自分のことながら驚きすぎる。サイコスや霊性の中に入ると時々時間間隔がなくなる。



そしてふと、自分の目の前にいるバナスキーを見た。



目を開けたまま人形のように横になっている女性。


懐かしい。

今は、どこかで見てきた面影のある人。



「…何か分かったか?」

シャプレーが聴いた。


「そうですね……。ギュグニーから来たと思います。」

「それは話している。」

「確定したってことですよ!」

何の成果もないような言い方をされるので、少し怒ってみた。何かよく分からない苦労はしてきた気がするが。


「……正直…」

「正直?」

博士たちが乗り出す。


「あまり覚えていません!」


「え?」

「……曖昧です。誰の世界で、誰の目線なのか多分たくさんい過ぎて……。」

「……。」

周りががっかりしている。実際ファクトはあまり覚えていない。とにかく曖昧な世界であった。全部が全部覚えていない。



「でも、いろんな女の人がいて………」

「女の人?」

「なんかいっぱいいるよね。」

「…そ、そうだな。」

そうなのか分からないが、ファクトに合わせる博士たち。


「子供がほしい………」


「………。」

周囲が静まる。

「子供?」


「赤ちゃん。ほら!子供がほしいって言えば赤ちゃんだよ!」

「…………」

みんなしーんとして変な顔でファクトを見ていた。


「は?!あの!違う!俺じゃなくて!女の人たちが!」

「女の人たちが?」

「女の人たちが心星くんの赤ちゃんがほしいのか?」


「っ違う、俺は彼らの世界にはいない!!」

口々に言う博士たちに反抗する。そんなラムダの読む様な小説的展開、あるはずがない。

「心理層の話なのか?」


「でも、意識層で心星くんと出会って惚れた可能性もあるだろ。」

「違いますっ。俺も惚れそうな筋肉隆々の人たちがいるので相手になんかされません!」

軍人がいっぱいいたような気がする。自分が女なら、絶対自分には惚れない。あんなファーコックにタメを張れそうな武器に凄技の使い手がいたら、自分は売れ残るだろう。それに生き残るなら軍人か権力者を選ぶ。自分なら。

と、ファクトはまだ、女性はファイティングゲームや戦場映画に出て来そうな人に惚れると勘違いをしている。ファクトの認識は、回転蹴りや旋風蹴りができる人間の方ができない者よりモテる、ゲームで無双する者がモテるというものだ。あとは時々カフェに行く。サルガスやタラゼドで、男のモテどころはそこでないと何度も学んだはずなのに、根底で女性を理解していない。



「……そうなのか?」

「そうです!」

恐ろしい。ここでも年上女好きの変態扱いをされてしまいそうだ。ユラスでもそうだったが国境を越えてまでこんなことになるとは。


「……紙のメモとペンを下さい。」

「デバイスではだめか?」

「紙がいいです。」

我が儘を言うと、スピカがサッと準備してくれた。デバイスに書くと何でもかんでも情報を吸い取られそうなので、アナログ一択である。

「覚えていることをメモしていきます。」

「………」

博士たちがみんな覗いてくる。

「見ないで下さい!」


「…字が下手だな…」

「絵も下手だぞ?」

「それは火星人なのか?」

「見ないで下さいってば!!」


「本当にポラリスにそっくりだな……。顔はミザルなのに…。」

ミザルなら「一度で分からないの?」と、冷たく罵るであろう。

「その顔でその性格、違和感ありまくりだ。」


話しがズレている上にまだ覗くので、ノートを自分の胸に隠した。

「父と一緒にしないで下さい。あんなに無敵じゃありません!けっこう悩むんです…。」

あの父と一緒にされてはたまらない。



バナスキーは、きっとギュグニーから来たのだろう。

それは間違いない。そしてきっとオキオル共和国駐在ジライフの外交官関係だ。当時、東アジアはかなり情報インフラが進んでいたが、南欧や東欧、北方国やその近辺、関連国はまだ遺伝子情報がきちんと収集されていなかった。国境でも指紋程度でかなり雑だ。しかもデジタル以外の生体データがない。

襲撃事件後、連合軍でなくオキオル軍が入ったため、死者の生体も残していなかった。彼らは中立だが未成熟だ。

デジタルは捏造の可能性もあるので、生体と両方必要だ。



ファクトは思い出して整理しようとする。


当時まだ中学生だったのは、データの中のロワイラルとタイラ。二人とも茶系の髪、ストレートの髪も同じで、身長も160センチ弱ほどで似ている。


「…あの…。中学生の時のことなんて覚えてないんですけど、女の子って中学で身長止まります?」

「まだ伸びるだろうが、早いと小学生で止まるな。」

「え?っそうなんですか?」

自分のことも覚えていないけれど、アーツに来て数センチ伸びたので女性の成熟の早さに驚く。


けれど、一人の子はモデルのように背が高くなっていた。

「バナスキーさんは身長何センチ?」

「165だ。」

響と同じくらい。


「……バナスキーさんは…多分………」

ファクトはホログラムに出したオキオル共和国襲撃事件、行方不明者のリストを出す。


「ロワイラルさんで違いないと思う。ロワースの娘さんだよ。」

「…っ。」

外交官の名前を指し示すと博士たちが騒めく。最後の方はよく覚えている。母さんと呼んでと言って抱きしめた時のことを。


「みんな一緒にいたんだ。途中からカラって人がいなくなってるけど……でも分からないや。死んだのか、みんなの意識から消えただけなのか。」

「!?カラ・カーマインか?」

「他の外交官たちは生きているのか?!」

博士が乗り出した。

「…どうだろ?そこまで分からないけど……。生きているのかもしれないし……」

死んだ感じはしなかった。


ただ、別れただけだ。

でも、生きているとも限らない。これ以上残った人間の意識には行けなかった。


当時の状況が漏れていないということは、もう一人国境に向かったタイラはどうしたのだろう。国境越えができなかったのだろうか。出来ていたなら、SR社や東アジアはもっと外交官情報を把握していたはずだ。証言者がいるのだから。



……テニアおじさんなら知っているだろうかと、ファクトは思う。


奥さんのことをある程度知っているのだ。アジア側の人間ではないから東アジアには知らせなかったのかもしれない。おじさんのいた国が連合国とはいえ、何でも連合国で共有しているわけではない。それぞれのカードがある。


細かい生死は分からないけれど、SR社も把握して黙っているのかもしれない。

少なくとも、ギュグニー内には多くの連合国の人間が入っているし、ギュグニーからも子供として養子に出している。


「……。」

なんか、いろいろ言わされてるけど、知ってんじゃないか?と言う顔でシャプレーを見る。

少なくとも、チコたちが来た時点でいろんな情報が入るだろう。何人も逃げてきたのだ。答え合わせをさせられているのかもしれない。

「……なんだ?」

「…いえ。何でもございません。」

同じ無表情でもシャプレーはサダルのように悪どい顔もせず悪どいセリフも言わないが、一応従順にしておく。ここはSR社の庭だ。砂漠に埋められたら困る。



ファクトは話すのをやめて、分からなくなる前に覚えている名前を書き出す。

1人にいくつもの名前があったようで混乱する。


「………」

あれ?


そしてニッカがいた気がする。幼いニッカ。


「ん?」

なぜ?ニッカはファクトと同じ年。まだチコが3歳ほどの時期は生まれてすらいないのでいるはずがない。

誰かの記憶か意識が混乱しているのか。


あの時誰の目線だったのか。


ニッカを知る人がいたはず。

自分?女性たちの意識を垣間見たのはファクトもである。


いや違う。


「………。」



それから、だいたいの人は黒髪か茶髪なのだが見覚えのあるあの茶髪。


宇宙の人の後によく出てくる人、あのブラウンヘア。

宇宙の人ではないか。



やっぱりテニアの奥さんが宇宙の人なのか?




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