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ZEROミッシングリンクⅦ【7】ZERO MISSING LINK 7  作者: タイニ
第五十六章 世界は飛び交う、君の胸で

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19/95

18 総本山に突入



そこにノックと共に入って来た人物に一気に緊張が走った。


「いらっしゃいました。」

出入り口の護衛と少し話しをして、数人と入って来た人物。


サダルメリクであった。



ユラスや一部の面々が立って挨拶をするが、サダルは礼を返して後は手で止めた。そして、なぜか壁際席中央付近、妄想チームの端に座る。

「……。」

え?と周辺がビビる。


『もう少し有能そうな人たちの側に座ってほしいのですが。』

と、口にはしないがみんな思う。妄想チームは背中が緊張するし、振り向けない。振り向いたら殺される。

正直、ユラス陣営のユラス軍の方々は怖い。慣れたベガスサイドの顔を出す面々と違って、覇権争いでアーツまでコロすのではないかという気迫がある。しかも彼らは笑顔もあまりないし、気付いている者は気付いている。

無表情のサダルより、その後ろに程よく笑顔で接しながら控えている側近のメイジスの方が恐ろしい。ヤバい系である。そんな気がしてならない。取り敢えず大人しくなる妄想チーム付近。



「…あの……。チコさん。旦那があっちにいるので向こうに行った方がいいのでは?」

サルガスたちの方に座っているチコに、一応シグマは言っておいた。

「なんで?今はアーツだろ?ここの顧問なんだが?」

「いや、ユラスと東アジアの共同事業でもあるし、その総決算ですよ。」

「………。」

はあ?とチコはまた嫌そうな顔をする。


最近黙っていたみんなの代弁者シグマだが、こっそり言ってしまった。

「いつもいるわけじゃないのに、旦那に寄り添いたいとか思わないんですか?」

「仕事中だろ。」

「アーツの顧問より、議長夫人の立場を優先させてください。ベガスとしてもユラス移民を抱えている関係上そっちの方が重要です。正直、ゼオナスさんもいるし今こっちも層が厚いんで。」

聴こえているゼオナスも頷いた。アーツもサラサが休暇でも仕事が回るようになったのだ。既にこれまでのメンバーも運営や指導側に回っている。



「そもそもサダルは一人で仕事ができるし、分業した方がいいだろ?」

「前から何度も言ってるけど、こっちも今は層が厚いし、分業とかでなくチコさんは夫婦で動いた方がいいと思うけど?」

遂にシグマ、タメ口に戻る。

「何のために夫婦分散して仕事してるんですか?もう、アジアとユラス別々で動いてんなら、会った時ぐらい仲良くしないとユラス側のアジアに対する印象が悪くなるし。イメージ作戦くらい成功させてよ。」

「……はあ?だから仲悪くないって言ってんだろ?」

「チコさん、なんなの?そこまで旦那嫌いなの?」

「…嫌いじゃなくて、するべき目的において結婚したし、一旦仕事は果たしたから次の目標に移りたいんだよ。」

「次の目標?」

シグマは訝しくチコを見た。これは様々な意味にとれる。


しかしチコは誰もが想定外のことを説明する。

「……今、変わっていくすごくいい時期だろ。まずはリギルが斜め懸垂を50回できるようにまでして……。セオもせめて学童の補助要員くらいになった方がいいし。」

「………。」


セオは第1弾の妄想メンバーの一人。ラムダと違って、妄想メンバーの中でも孤立しやすい内気、コンプレックスの塊のような男だ。しかし譲れない信念があるので時々目も上げずに陽キャにも楯突き、本人は知らないがそこはみんなの賞賛を浴びている。


「……なぜそれをチコさんが?」

「だって、みんな忙しいから顧問の私が個々の教育を……」

「あなたも本来仕事が多い人だし、だいたい顧問ってそういう人じゃないと思うんですけど。運営の補助側であって業務執行者は俺らですから。」

タチアナも我慢できなくて話に加わってしまう。


「そもそもな。ユラス(むこう)も層が厚いんだ。正直私の出る幕がない。」

「………。」

何を言い出すんだとみんな思うが、今チコ(この人)に何か言っても無駄だろうと気が付く。自分がユラスの中心と気が付いてないないのか、敢えて目を伏せているのか。


「こういう時代の中にいなければさ………リギルや………セオとでもよかったな……」

「は?」

「はい?」


チコがもう一度言う。

「結婚。」

「はい??」


みんな「はい?」以外言うことがない。

聴こえていないふりをしているユラス陣営らしきユラス軍もさすがに意表を突かれた顔をしている。


チコたちと妄想チームの間のさらに後方に隠れるようにいたリギルも固まっている。

「………。」


は?俺?冗談?俺でもいいとかおかしいの?

バカにしてんのか?


と、心でツッコむリギル。

この大衆の面前で、自分と結婚でもいいとか。冗談にしても後味が悪い。

「………おもしろくない……。」

下を向いてギュッと拳を握る。



斜め懸垂50回のために結婚するのか。


セオに至っては……ここにいない。知らない陽キャ大集合の場所に来るわけがないのだ。大房民でない第4弾が大量に来た時点でセオのハートは既にキャパオーバーである。


しかし、これまたなぜかリギルの横に座っているエルフ陽烏(ようう)が、こっそりリギルにアドバイスした。

「チコ様、多分本気で思っていますよ。そういう人です。」

「………なんにしろおもしろくない…。」

一応美人枠と思われるチコと、その周りにいるハイスペックな人間に囲まれて自分が馬鹿のようだ。



だが、リギルは考える。


自分の片横には陽烏、反対にはKYシャム。そのさらに横には素朴でかわいいムギがいてサンドイッチを食べている。ムギの前では怒りたくない。なんとなく。

ここで怒ったらこの前の病院で自分を貶めた兄ランスアの時と被ってしまう。しかも今回の方が聴衆が多いし層が濃すぎた。


よく考えたら似た状況のさらに濃いバージョンである。



さて、別にすごく好きでもないが転生、憑依小説をいくつか読んだ自分ならどう行動すべきであろうか。


したら絶対に話が進まないのは『同じ行動』をした時である。もしくは『同じ気持ちのまま』の行動。

それをすると、ループ地獄に陥る。


自分が有能キャラならその道にも救いがあるかもしれないが、どの人生でも3()歩いて底なしの池に落ちる自信がある。人前に晒されて、何度も苦痛と屈辱で死ぬのは耐えられない。


そして、聖典で学んだ。人は何かを乗り越えないと次のステージに行けないのだ。何もせずに、身も心も痛まずに、良いものだけを得ることはできない。

あれ?ゲームで学んだのか?ゲームも所定の条件をクリアしないと、全面突破はできない。一応セコい裏技はあるが、それは開発者やすごいゲーマーに追従して得られるものだ。


ならばそう。


こういう時は、前のように怒って数日部屋に籠ってはダメなのだ。自分関係なく世界は進んでいくし、そういう人生を今までずっと歩んできた。


そろそろ変わるべき潮時だ。何かが満ちている。



ここはどこか。

かつての敵の………総本山ではないか。


まさか、こどおじ部屋に籠ってネットで悪評を書きまくっていた、悪口の対象の総本山側に行くと誰が予想したか。しかし来てしまった。

ある意味、時間の巻き戻し、転生レベルにレアな話である。それに、未だにユラスやベガスの悪行動画を消していないので、チコに殴られたり嫌味を言われない分、ここは自身にも非があると考え我慢しようと気持ちを切り替える。


今は素直に心療内科にも通い、イライラや憤激を抑える薬も飲んでいた。



なら、するべきことは決まっている。


今までと()()()()()()()のだ。



●総本山に悪口を書きまくっていた頃

『ZEROミッシングリンクⅤ』66 ローの弟

https://ncode.syosetu.com/n1436hs/67


●前回兄ランスアにさらし者にされた件

『ZEROミッシングリンクⅥ』70 どこもかしこも相性が悪い

https://ncode.syosetu.com/n2119hx/71


●越えなければ終わらない永遠のループ

『ZEROミッシングリンクⅥ』 96 永遠のループ

https://ncode.syosetu.com/n2119hx/97


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