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ZEROミッシングリンクⅦ【7】ZERO MISSING LINK 7  作者: タイニ
第五十六章 世界は飛び交う、君の胸で

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11 四支誠でのミニ議論。揺れる人間は使わない。



四支誠の会館のカフェスペース。


「何で人間が乗って戦闘するんだよ?」


「乗りこむからドラマがあるんだよ!」

「何のために高い金使って、わざわざ人間が乗る物作るんだ?車でいいだろ。だいたいデカいロボって、一歩移動にしても被害範囲が増えるだけだろ。今のコマですらウザいのに。燃費も悪いし、敵地で沈没したら、マテリアル全部持ってかれるぞ。」


様々な作業を終えた時点で、ファクトはシェダルとDPサイコスターについて話を深めるはずが、場所の選択を間違えてしまった。



以前の論争。

『果たして戦闘時にロボットに人は搭載すべきか、しないべきか。』

と言う、ロマンにおいて結論のない議論をまたここでも始めてしまったのだ。


せっかくなら自分も、女子たちから学んだ人を囲い込む……でなく、包み込む女子力を発揮して河漢ではなく、落ち着いたカフェでシェダルにいろいろ聞き出そうと思ってしまったのが失敗であった。どうせ男だ。気を配るべきではなかった。


ファクトを見付けてみんな集まってきてしまったのだ。



ただ、太郎くんは少しは成長している。戦闘における経費への配慮や、人的被害があることの想定までできるとは。ファクトは少し感動するが、元いた場所でそういうことも言われてきたのだろう。希少なマテリアルを無駄にするなと。

「あのクソどもなら、ニューロスメカどころか乗用車の鉄板クズ一枚でもウハウハしてんだろうな。」

やはり太郎君は口の悪いことを言う。しかもみんなの前でおそらくギュグニーであろう話をしないでほしい。



解放されたロビー隅のカフェの少し奥まった造りの一角。


四支誠にはカウス長男のテミンだけでなく、学生のラムダやソイド、ソラ、他数人のアーツメンバーもいる。これではDPサイコスの話ができない。


少し後ろに一人で座る太郎君。眼鏡を掛けたストール巻きのあまり見たことのない男を、みんな藤湾学生だと思っている。今年で藤湾大学の学生はベガス校だけで万越えをしてしまった。知らない生徒がいてもおかしくないし、大房で響にひどい扱いをして大ヒンシュクを買った太郎君を見たメンバーは、今はラムダしかいない。

ただ、ソラはこの男もしょうもなさそうだという顔で太郎君を見ている。まさに正解だ。



「お兄ちゃんたちどうかしてる?本当にそうだよ。そんな(まと)が大きい物どうするの。」

テミンも話に加わって来きたのでラムダが乗り上げた。


「違うんだテミン!デカくても才能のあるパイロットが乗ったら素早い!もう才能!何でも寸差で避けられる!」

しかし太郎君は言いたい。

「ロボに当たらないで、戦車も壊せる強力な流れ弾が基地や街に当たったら困るだろ?そんなん、ほとんどミサイルだろ。クソかよ。避けずに的になれよ。でもって、倒れて被害拡大させんなよ。」

巨大ロボが避けた弾が居住地に向かったらどうするんだと太郎君は一見、人道的なことを言っている。弾が当たって倒れても被害は甚大だが。


「……でも、戦争する奴はとにかく戦争したいし勝ちたいから、非人道的なこともするし、武器も作るんだよ!それに対抗しなきゃ!」

「…だからそれも遠隔でよくない?なんでリモートしないの。」

他の小学生にまで言いくるめられる妄想チーム。


「僕だったら、遠隔と直乗りとどっちが自軍に被害が少ないかシュミレーションする!地上の荒野、人間がいる地域。宇宙空間……。それくらいできるよね?」

と、無垢な心でテミンが尋ねた先の女性が微笑んだ。


「そうですね。」

そうやさしく笑ったのは意外な人物、黒髪の輝くシリウスである。


シリウスはここでは正解に導くつもりはないのだろう。楽しそうに話を聞いている。


「しかもさ、ハンドルとかでコントロールじゃなくて、脳波操作やモーションセンサーの方が速く動けない?運動神経のいい人なら何でも避けられそう!」

モーションセンサーは人間が動くままにメカや画面が反応する操作だ。思考で動くものもあるが、まだ完全な軌道を追えない。

ムギの彼氏候補だった教官マリアスの四男アルが、これまた無垢な笑顔でそう答える。いつのまにかアルも小1。


「AIが一番早いよ。F-AI(ファイ)!」

F-AIは、見た目そのままを模するAIではなく、物の髄から情報を処理するフレームAIである。


例えば動く人間を描く場合、絵や動画から学ぶのではなく人間の骨格や習性など医学や生物学から判断する。自動車の衝突を防ぐのも、環境を判断し物を感知したという端的な情報でなく、そこは既に基本で、人間の生命及び安全が優先すべき社会情報だと理解して助ける方向に向かうのだ。画像や映像などフォント機能に変換していない文字の意味も判別理解しているし、助け方もマニュアル一本ではなくAIが状況判断をすることもできる。


ニューロスメカニックはその進化版である。


そして、何をもってSクラスと判断するかは情報処理、ボディー、動きなどメカニック会社によってある程度差は出るが、SR社はさらにその上の判断力を持っているのだ。

いずれにせよ、下町ズは普通バイクのAIにも勝てる判断力はないと自負している。



「シリウス~。今度ウチのクラスに来てよ~!シュミレーションしよ!!人間とAI対戦とかも見てみようよー!」

早速やる気なテミンは、シリウスを自分の学校のクラスに誘った。話すことが大房キッズとは全く違うと思う大房ズ。それに、戦争被害にあいベガス来た子供たちもいるクラスでそんなことはできんだろ、と大人は思うのだが、オミクロンはちょっとおかしいのか。テミン自身やその周りも犠牲者が多いのに。


小1と言えば最近まで園児。

ママがいないと登校もできないと泣いている子もいる時期だ。なのに、大房の中高学生くらいの話をしている。いや、大人でもしない。大房一般小学生はゲームをしても、自分が企画、開発、指揮官側に回るという発想はあまりないであろう。



そこではファクトは気が付く。シリウスもいるし、みんな公認でSR社に入れるチャンスではないのか。


「俺、シュミレーションの被写体になろっか?この前パンチングマシン、全部避けれた。」

運動神経においては、SR社の社員に負けない自信がある。唯一彼らに勝てる分野だ。

「そんでさ、普通のコントローラーでゲームめっちゃできるのアギスだからさ、アギスにはハンドコントロールで。」

ここにはいないが元ゲーマーアギス。ただ彼はすでに家庭持ちで仕事もある。


「ひとまず、演算でいいよ。 」

つまらないことを言うテミンをファクトは責めた目で見た。

「…演算なんて結局AIじゃん……。」



しかし、ロボット革命大好きラムダはやはり譲れない。

「シリウス~。でもこれは人間のロマンのドラマなんです~。」


泣きそうなラムダに、シリウスはちょっといたずらな反応をしてみた。

「実際戦場に行くのは、人型でない方が多いですからね…。状況にもよりますが、基本人も乗りませんし。そうなると結局は情報収集力があり戦略に強いかったり、資材と技術力のある方が勝ちます。」

「……」

「それに戦争に関わる中核が、大儀なく個人の感情で動いても困りますし。それが歴史を決めるのだから、感情的過ぎる人を選択しないなどパイロットも慎重に選ばれます。」


実際の戦場は感情のドラマは少ない方がいい。可能な限り相手が早めに白旗を立てられる状況で、戦争終結を最優先させるのだ。少なくとも連合国では、莫大な予算を掛けた戦闘機などを一時の感情で流してしまう人間には使わせない。

「………。」

シリウスが仲間になってくれなくて寂しい妄想チームたち。



つまり、パイロットにしても揺れる人間は使わない。


霊性師によっても洗い出しをして、人間を使う場合はできる限りその可能性を小さくする。


先祖数代を見て異常者、犯罪者、重度の精神病患者、強い怨みを持ってきた者はどんなに才能があって本人は普通でも、選ばれないこともある。とくに痴情は全て洗い出す。

独裁国家ですら、パイロットに権力を乗っ取られることを恐れ、むやみに能力の開発はしない。だからシェダルも可能な限り、社会的欲求のない大人にされてきたのだろう。


家系に重罪者が多くても選ばれる場合は、先祖のそれに勝る安定性や公益心を持ってきた人物である時のみ。そういう家系から急に崩壊とは全く逆の人間が生まれることが稀にあるのだ。


チコのように。



普通、マイナス要因を積み続けた家系は絶家に向かうのだが、きっと歴史のどこかで、誰かが必死に一本の糸を天に繋いできたのだろう。


そして、一つの家系で、時に一人の人間の中で、天敬と反目がずっと戦ってきたのだ。



ただ、このままだと『カーマイン家』も、

『ジアライト・バベッジ』も、ここで血そのものは途切れてしまうことになる。


そして、ナオス長兄も。




●ムギの彼氏候補のアル

『ZEROミッシングリンクⅠ』41 宴

https://ncode.syosetu.com/n1641he/42/(最後です。)


●前回の大型ロボット議論

『ZEROミッシングリンクⅤ』

探し中


●大房民に印象最悪の太郎君。

『ZEROミッシングリンクⅤ』7 夕方の大房

https://ncode.syosetu.com/n1436hs/8/

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