帰還
私と継名が神の間に帰りつくと、綺麗な花を持った魔王が待っていました。
「女神よ。我が愛を受け取ってほしい」
私は花を受け取ります。
「どうして私の神の間に、魔王がいるのでしょうか」
私は犯人と思われる継名を見ました。
「結局、人間が勝ったのか、魔族が勝ったのか有耶無耶になってしまっていたから、引き分けていうことにして打ち上げをしようかと思ってな。今だけ入れるようにしておいて、準備させておいた」
「それくらいなら、まあ……。あとで、ちゃんとふさいでくださいよ」
なんというか継名の魔王の使い方が子分のそれです。
魔王が持ってきたであろう机には、豪華な食べ物がずらりとならんでいます。継名がどさりとソファーに座り机のグラスを持ち上げると、控えていたダークエルフさんがお酒を注いでくれていました。
私も同じようにグラスを持ちますが、ダークエルフさんは素通りして、魔王のグラスにお酒を注ぎます。
うぅ。なんでしょうか。この扱いの違いは。
ダークエルフさんにとって、魔王は上司なので、敬って当たり前ですが、継名は神として扱っているのに、私はもはや無視しているといっても過言ではありません。
……。
ちょっと待ってください。
今の私は、昔の私と違います。
前世の記憶があります。
恋心というものを少しは理解できます。
今までのダークエルフさんの行動をよく思い返してみれば、これは私に対する嫉妬でしょう。
つまり、ダークエルフさんは魔王のことが好き。
そうに違いありません。
理解しました。
私はダークエルフさんに近づいて、無理やり手を握りました。
「私はあなたの魔王への恋路を応援します!」
バシィ!
「ぎゃん!」
思いっきりほっぺたを叩かれてしまいました。
顔を真っ赤にして、ダークエルフさんは遠くに行ってしまいました。私はヒリヒリするほっぺたをさすります。
いったい何がダメだったのでしょうか?
見当もつきません……。
「お前はいったい何をしてるんだ」
「一番いい案だと思ったのですが」
「お前は乙女なのに乙女心がわからんのか」
継名が呆れています。
ダークエルフさんと魔王がくっつけば、ダークエルフさんもハッピー、私もハッピーで万々歳だと思ったのですが、やり方がまずかったようです。
「なにがあったのだ?」
どうやら魔王は、私の言葉は聞いていなかったようです。
「悪いが魔王、こいつがダークエルフを怒らせたらしい。少しなだめてきてくれないか」
「ああ、任されよう」
魔王がダークエルフを探しに行きます。
そうやってさりげなく二人っきりにして、仲を深めさせるのですね。
はあ。私はまだまだのようでした。
◇◇◇
魔王たちが帰った後も、私たちはゆっくりお酒を飲んでいました。
「継名」
「なんだよ」
「心配事が一つあるんですが」
「どうした?」
「上位存在が私たちのことを抹消しに来たりしませんか?」
「来ないな」
継名は、はっきり断言しました。
「なんで来ないってわかるんですか」
「今来ていないからだ」
「今後来るかもしれないじゃないですか」
「今来ていないのなら、来ることもないだろう」
「どうして?」
「上位存在とやらが、本当に賢い存在ならば、来ない方が得だと分かるからだ。俺がお前にあったときに最初に見せた能力覚えているか」
「変幻自在?」
「違う」
「え、何だろう。呪い返し?」
「それより前だ」
それより前? なにかありましたかね?
あ、そうか。
「次元斬りと超空間把握ですね」
「当たりだ。おれは、行ったことがある次元ならば好きに移動できる。上位存在が乗り込んできたならば、おれも上位存在の世界に自由に行き来できるようになることを意味する。それにやつらの測定器、お前らが言うステータスとやらに俺の能力は正しく表示されない。そんな未知な存在がやってこれるようになって暴れられたら大変だろう。どっかのだれかは呼んじまったから、俺は好きに暴れて、最高神まで倒してしまった」
「だれでしょう。そんなことをしたのは」
本当に見当もつきません……まあ、私のことです。
「上位存在とやらがさっきの戦いをみていたときのため、しっかりアピールしておいただろう。俺の世界の神々が対立ではなく友好を選んだことが得であったと、俺は売られたケンカは買うが、そうでなければなにかするつもりがないと伝えたつもりだ。見ていなかったとしたら、興味もないということだろう。どちらにしろ来ることはないな」
「そういうものでしょうか」
「絶体来ないとはいいきれないが、心配しすぎてもしょうがないだろ」
「そうですね」
ふと継名を見ると、お酒を飲みながら千里眼を使っているようでした。
「千里眼を使っているんですか?」
「ああ、最後に見ておこうと思ってな」
最後……。
確かに千里眼は次元を超えては見ることができません。
私も継名を真似して、千里眼で世界各地を見渡します。
太田勇者は、町娘に言い寄られているところをクライシアに見られて、冷ややかな目をして歩きさっていくのを慌てて追いかけていました。
南部の副将軍はリハビリだと、山に木こりに出かけていくのを魔法使いの女の子はトコトコと嬉しそうについていっています。
南部の将軍は、師匠の本を元に部下達を熱心に教育していました。
エルフの二人は結婚もしていないのに、老夫婦のような生活を送っていました。
魔王は城に戻っていました。
魔王はもともと皆に慕われ理性的でした。
争いがなくなった魔族の国は穏やかさを取り戻しつつあります。
王都はというと、戦で一番活躍したの彩水勇者は国に戻ったとき一悶着あったようです。
というのも、王様はお姫様のお腹の中に子供がいるとしり態度が一変、王様は子供部屋を準備したり、王妃様は子供服などを準備はじめて、孫を迎える準備をするので、王座を勇者に譲ると言い出す始末。姉たちの方が不満爆発で大変なことになっていました。
革命がとかなんとかにはならずにうまい方向にはいったようでした。
お姫様の人気と政治的手腕は悪くなく、こちらも着実に平穏を取り戻しつつあります。
コロセウムなどは、建築に着手予定らしいですが、かわいいものでしょう。
悪魔と戦った戦場はだれも住めない死の地帯になっていました。ですが、人間と魔族のいい感じの境界線になっています。
なので、落ち着くまでは、このままの方がいいかもしれませんが
どうするかは、おいおい考えなければなりません。
まだまだいろいろありますが、概ね私が継名と出会った時よりはいい世界になっている気がします。
一緒に千里眼で見ていた継名がいいました。
「さて、そろそろ帰るか」
継名は私が召還陣で無理やり呼び出しただけで、帰るべき元の世界もあります。
「恋人はいないんでしょう?」
思わず私はそんなことを言っていました。
初めて継名を召喚したときの条件に未婚かつ恋人がいないと入っているので、いないはずです。
「恋人はいないが、家族はいるしな」
「家族!?」
「血の繋がりはない拾い子の娘がいる。もう随分大きいし、面倒見なければいけない歳でもないが、たまには帰ってやらないとな」
「初耳なんですけど」
「はじめて言ったしな」
なんでそんな重要なことを今いうのでしょうか。
「ほら、あと、新しい世界創世をしたかったのでは?」
「結構、お前といろいろやって満足したし、また今度な」
私は、次の言葉を探します。
どうやら自分が引き留めようとしていることに気が付きました。
私はなんだか捨て犬のような気分になってしまいます。
「イミューにこれを渡しておく」
私は棒状のものを受け取ります。
両端を引っ張ると刃がでてきました。
「小刀?」
「上位神が攻めて来ることはないだろうが、他の悪魔は襲って来るかも知れないからな。何かあって対応しきれないときは、助けを呼びに来いよ」
私は一目見てわかりました。
小刀には継名の妖気が込められています。
きっと思いっきり振れば、継名の世界に行けるのでしょう。
全部の問題がきれいさっぱり解決したわけでもないのです。
ちゃんと対策もかんがえて、帰る準備をしてくれています。
帰る準備をしているということは、
帰ることが決定的で悲しくなってきます。
継名がいなくなると不安です。
なんとなく、ずっといてくれる気がしていたので、動揺してしまいます。
「ほら、まだ不安があるというか」
私は素直に気持ちをいってみることにしました。
「大丈夫。お前はもう立派な神様だ」
そういってくれるのはうれしいのですが……。恋しているわけではありませんが、継名がいなくなると寂しくなります。
きっと次あうのは、100年後とかでしょうか……。
「イミュー、また俺の最高神に、神格もらいにいかないといけないから、お前に事情説明してもらうからな。ちゃんと言葉考えておけよ」
「えっ? あ、はい」
「あと俺の神社の祭りとか、創生魔法役立ててもらうからな」
「はい」
「あとは、砂漠の町で飲んだ酒もまた飲みたいから、準備しといてくれ」
「ちょっと」
「あとはエルフのところで使った痺れ薬、俺の世界でも再現してみたいから、量がほしいな」
「いやだから」
「魔力の発生を俺の世界でも疑似的にできないか研究を」
私は継名の言葉をさえぎりました。
「だからそんなに覚えられませんって」
やっぱり、相変わらずポンコツだなといった目で見てきます。
「急ぎではないしな。次くるまでに一つくらいは、頼むぞ」
「はい。任せてください」
なんか結構頻繁にくる感じですね。
継名にとっては距離なんてあってないようなものですからね。
お酒切らして、お隣さんちにお酒のみにお邪魔する感じなんでしょう。
私は自然と笑みがこぼれました。
「用がなくても、遊びに来るからな。俺がいなくなったからって、自堕落女神に逆戻りするなよ」
「はい。がんばります」
「それに、イミューも、暇なときは遊びに来るといいさ。いつもいるとは限らないがな」
確かに継名じっとしているところは想像できません。
継名のことだから、きっとあちこち行って、勝手に助けたり、戦ったりしているんでしょう。
これまでも、これからも。
今じゃ信じられないけど、最初は殺されかけたんでしたね。
最初から、甘やかされたのであれば、私はいまだにダメダメだったかもしれません。
そういうのも含めて、継名に1から10まで教えてもらったようなものです。
継名は刀で空間を斬りつけます。
次元が裂けて、継名の世界が少し見えました。
「またな」
継名がひらひら手をふります。
「はい。また会いましょう」
私は一礼しました。
継名が消えた後を私はしばらく見つめていました。
よしと拳を握りしめます。
決意を新たに自分の世界を眺めました。
何か困ったことがあれば、おいしいお土産でも持って、教えてもらいにいきましょう。
召還するのではなくて、自分から足を運んでお願いするのが、礼儀というものです。
まだまだ自分ひとりですべてを解決できるほど、立派な神ではありません。
こんなポンコツな私だけど、神だから、今できることを全力で頑張って行くしかありません。
世界を平和にするより、平和な世界を維持する方が難しい。
そんな気がします。
だから、頑張らなくてはいけません。
私の世界創世は、これからもまだまだ続いていくのだから。
それに目標があります。
今度は私が継名のように、他の神の世界創世を手伝えるような、
もっと立派な神になれたらいいなと思います。
本編は終了です。
お読みいただきありがとうございました。
イミューと継名の物語いかがだったでしょうか。
転生する側ではなくて、転生させる側の成長物語書いてみたくて、書き始めました。
最後まで行けてよかったです。
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