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悪魔

 悪魔と継名はどこか似ています。

 闇属性でありながら神格を持つ悪魔。

 妖怪でありながら、神格を持つ継名。

 見るものに畏怖を与える覇気。

 種類は違えど、黒く禍々しい羽。

 正邪混濁した雰囲気。

 私の第一印象は二人とも同じです。

 

 だけど、初めから明らかに違うのは、


 継名は助けるためにこの世界に現れ。

 悪魔は世界を滅ぼすために現れました。


◇◇◇

 

 私は悪魔に宣言します。


「創生神は私です。あなたも最高神様も関係ありません。この世界は私が導きます」


 悪魔は私を笑い続けていました。


「お前らが何思おうと関係ない。今から俺様に滅ぼされるだけなのだからな」


 継名が私の前に出ます。


「お前のおかげで謎はとけたが、お前は本当に腹立たしいな」


 継名の体から妖気が溢れています。

 本気で怒っています。

 悪魔は継名を見下すように笑っています。


「神レベル1程度の雑魚がなにを粋がっている」


「またレベルか、正直、聞き飽きたな。汐見のおかげで、大体の仕組みもわかってきた。お前たちのいうステータスとやらの本当の意味すら想像すらついていないやつに負ける気はしない」


 本当の意味とはなんのことでしょうか。

 ただ、今はそれを継名に質問する時間はありません。


「俺はこの世界の連中が気に入っている」


 継名は団扇を掲げ、悪魔に宣言します。


「お前がこの世界を滅ぼすというのなら、その前に俺がお前を滅ぼしてやろう」


「はっはっは。できるならやってみろ」


 悪魔は小手調べに大量の火球を放ってきます。


「何が闇属性だ。どう見ても火属性だろう」


 継名が妖気を込めながら、団扇を振るいます。

 風が火球を巻き取り、悪魔へと跳ね返していきます。

 悪魔は羽を翻し軽やかにかわしていきます。

 悪魔の翼は羽ばたくたびにぎちぎちと鳴り、まるで変形する前兆のようです。

 突然、継名の中からエネルギー、つまり妖気が膨れ上がりました。

 継名の姿がそれに呼応するように変わっていきます。

 髪の色は黒から白へ、目の色は逢魔が時の月の色のように赤く爛々と輝き、爪は血に染まったようなどす黒い赤にかわりました。


「継名が、変形するんですか」


「変形じゃない、変化だ。俺は妖怪だって言ってるだろう。妖怪としては、こっちが本来の姿だ。相手は格上だ。こちらも全力でいくぞ」


 継名は羽団扇を正面に構えました。 


「暴虐の爆風」


 継名の声で、大気が激怒した。

 膨大な妖気が、羽団扇を触媒にして、圧倒的な風を起こします。

 継名が初めて見せる。

 純粋な風の暴力。

 風には、継名の妖気が多分に含まれ、神殺しのスキルを発動していた。


「なかなかの威力だ、いつまで維持できる」


 相手の動きを完璧に封じこめてはいるものの、スキル効果かダメージは入らず継名の妖気ばかりが減ってる気がします。


「こんなのいつまでも保ちません。どうするんですか!?」


「大丈夫、切り替える」


 今度は神気が膨れ上がります。

 今度は白から黒へ、瞳は真紅から漆黒へ、継名はいつもの姿に戻ります。

 姿に優劣はないのでしょう。

 神気はこちらが操りやすいようです。

 今度は優しいエネルギーが満ちます。


「天照の神風」


 継名、光属性を含んだ風にきりかえました。

 穏やかで優しい風です。

 さっきの風と比べるとそよ風同然です。


「ぐ、なんで光属性の魔法が使える」


「やっぱりなこの技は、こっちの世界では光属性で認識されるのか」


 悪魔の反属性である光属性で、悪魔のアストラル体にダメージが入ります。


「継名さっきより効いてるけど、今度は威力が足りませんよ」


「分かってる」


 それに妖気の時よりさらに減衰が激しい。

 風の威力が弱く、悪魔が風を抜け出しました。


「次はこれだ」


 風により大気の魔力がかき集められていた。

 ステータスの魔力ゲージが、1000から一気に10000代まで跳ね上がります。

 滑らかに団扇を持つ手と反対の手で、魔法を構成します。


「風魔法」


 継名が魔力を一気に風に変換します。

 神気より威力が高く、合わせて使うことで妖気と同等の威力を確保しています。

 迫って接近戦を仕掛けようとしてた悪魔を押し返します。


「で、でも、このあとどうするんですか?」


 もう継名が使える、妖気、神気、魔力全部使い終わってしまいました。

 あとがありません。


「大丈夫、もう回復している」


 継名はまた妖怪の姿に変化始めました。

 敵を倒したいという殺意が妖気に変わり、皆を助けたいとい善意が神気に変わる。

 生きとし生けるものの生命力が魔力となる。

 悪意であっても善意であってもそれが心である限り、疲れて普通であれば尽きます。

 途中で自然エネルギーを利用する事で休むことができる。

 エネルギーを使い回すことによる無限ループ。

 継名は、こちらの世界にきて、誰一人として殺していません。

 憑依しているときに殺した経験値はすべて憑依した者にはいっています。

 経験値はなにも得ていないにもかかわらず、こちらの世界に来てから、魔法を覚えました。

 経験によって出会った頃より確実に強くなっています。


「こうなりゃ持久戦だ。何日でも何年でも何百年でも滅ぶまでつきあってやる」


 実際ダメージがまともに入っているのは、少し光属性を含んだ神気の攻撃のみ、妖気と魔力が起こす風はほとんど動きを阻害しているにしか過ぎない。

 いわばこれは封印魔法。

 ですが相手に多少ダメージが入っている以上、相手が回復する事をあきらめれば、死滅します。

 確かに持久戦です。


「魔力は自然エネルギーなのはわかっているんだ。風で大気中の魔力はすべて俺のものだ。保有量が莫大でも、回復できなければいずれ尽きる」


 風によって、悪魔の魔力の回復源を封じています。

 継名は、悪魔を舐めてはいません。

 格上に対する、完全にハメ技です。

 世界からあふれる魔力は継名にのみ注がれていきます。

 まるで世界が悪魔を倒してほしいと継名に力を渡しているようです。


「調子にのるなぁ!」


 悪魔を中心に闇属性の力の凝縮を感じました。

 また大量の火球が放たれます。


「何度こようと跳ね返してやる」 


 継名は再度団扇を構えました。


「この火球のメインの効果は攻撃ではない」


 巻き取ろうとする風に自ら吸収されていきます。


 獄炎化


 炎は風ですべてかき消しているのに、熱量だけが残り続けていきます。

 気温がどんどん上がっていきます。

 もう生物が生きていられる環境ではありません。

 私もアストラル体になっているというのに、どんどん体力が削られていきます。


「ぐ、まずい」


 継名は瞬時に妖怪モードからいつもの体に転化しました。

 妖怪の体より、いつもの方がアストラル体には向いているようです。

 継名はバチンと団扇を閉じたまま、妖気を込めます。


「真空裂破」


 そのまま刀のように振るうと、大気が割れて熱を含んだ空気と、他の空気を混ざらないように対流させているようです。

 私の元に普通の温度の空気が流れ込みます。


「その程度、こっちがどれだけ火属性の連中と戦って勝利してきたとおもうんだ」


 火属性の魔法は継名が完全に抑え込んでいます。

 この調子なら悪魔に勝てます。

 私がそう思った時です。


「ふざけやがって。勝った気か」

 

 悪魔から、全方位に怪闇線が放たれたました。

 怪光線ではなく、怪闇線。

 世界を塗りつぶす、闇の波動。

 無音無動作で放たれた怪闇線は、大地を焼き、空気中の微生物までもが死に絶える滅びの闇。

 質量はなくただひたすら、滅びの方向に進んでいきます。

 私を守ってくれていた継名の風の防御壁を貫通して私に当たります。

 肉体を持たないアストラル体である私の体からも痛みがくる。

 痛みが一瞬で信じられないほど、大きくなり私は、声にならない叫びをあげた。

 え、もしかしてこれ死ぬ⁉

 継名は、反属性ではないため、アストラル体であれば、ダメージは軽微です。

 私は反属性である闇属性のエネルギーの塊を浴び、アストラル体が崩壊を起こします。

 攻撃範囲が広すぎて、継名も回避できていません。


「どれだけ魔法の種類があるんだ。初めて見る魔法で対処がわからん。おいイミュー大丈夫か」


 継名が私を呼びますが返事をする余力すらありません。


「使いたくなかったがそうも言ってられないな。服従魔法」


 ふり絞るような継名の声が私の体の奥底に響き渡る。


「使えなかったんじゃ……」


 服従魔法が強制的に働き、癒やしのちからが無理やり引き出される。


「完全回復だ!」


 崩壊と再生が永遠とも思える速さで繰り返される。

 完全回復。

 私自身では、うまく扱えない回復魔法の究極。

 分かってる。

 継名がやりたくてやってるんじゃないことぐらい。

 こうでもしないと今すぐにでも、私が死んでしまうから、


「く、苦しい、痛い助けて」


 死んでしまった方がましなぐらい、強力な激痛と苦痛が押し寄せてきます。


「くそ、ひよったか。やっぱり俺はこれでやらないと」


 継名は団扇を納め刀に手をかけます。


「頑張れ、イミュー回復魔法がつかえて、相手のステータスが見えるお前だけが頼りだ。軽微な変化は俺にはわからないから、ダメージがあいつに通るか、よく見ててくれ」


 継名がボロボロになりながら、全身に力を入れる。左手で、鞘を握りしめ、右手で刀を握る。抜刀術の構え。


「はっはっは、無駄だ。俺様に物理攻撃はきかない」


 悪魔が叫びます。


 継名が刀を強く強く握りしめるとスキルが浮かびます。 


次元切斬(あらゆる次元すら斬る能力)


「俺に切れないものは無い!」


 継名の言葉に呼応してスキルが変化していきます。


「俺様にそんな攻撃効かないぞ」


 継名が悪魔の言葉構わず踏み込ます。

 スピードは継名が圧倒的。

 一瞬で悪魔に詰め寄ります。

 悪魔は反応できないが、避けるまでもないといった余裕の表情をしていました。

 継名の刀が悪魔に放たれます。


[絶対切斬]

[斬撃無効]


 継名の刀が悪魔にふれた瞬間、二人のスキルが火花を散らします。

 最強の矛と最強の盾。

 そんなものは存在しません。

 お互いのスキルは相殺されて、単純な攻撃力と防御力の勝負になり、、、、。

 飛び退いて離脱してきた継名が声を荒げた。


「ダメージは通ったのか」


「全然ダメです」


「具体的にいえ」


「一瞬だけ、1だけ入ったように見えましたけど、すぐ回復しました」


 その1はこの世界における継名の攻撃力です。

 たったそれだけが悪魔に通ったようにみえました。


「これで無駄なのがわかっただろう! おとなしく死ね!」


「1でも通れば十分だ」


 継名は、呼吸を整えて悪魔を見据えた。

 極限まで神気が高まっていく。

 下げた刀に殺気が集まっていく。

 全身から妖気がほとばしる。

 世界から魔力が風にのってかきあつまっていく。

 今度は使い回すのではなく。

 いろいろな力が全て一つの方向性に収束していきます。

 継名は踏み込むと、上段から刀で切りつけます。

 今度は悪魔は武器を出して、防ごうとしましたが、継名は武器ごと切り裂きます。


「なぜ切れるんだ。セルシレスでできた武器だぞ」


 悪魔が神々に伝わる伝説の金属名を口に出します。


「なんだその金属名は、俺の刀は鉄製だぞ。武器の気合いが足らないな」


 継名の全力で相手にダメージが通るようになりました。

 たった1しか入りません。 

 悪魔の闇魔法は私たちのアストラル体を蝕み続けています。

 お互いノーガードで攻撃しているようなものです。

 継名の翼は骨がむき出しになり、アストラル体なのに焼けただれたままの肌が継名が劣勢だと伝えています。

 私の魔力が足りていないのです。

 私は自分の回復しかまともにできています。


「いい加減にしろ。勝ち目なんかないだろ。諦めろ」


「逆境こそが俺を強くする」


 継名は諦めません。

 継名にとっては自分の世界でもないのに。

 次元を切れば、逃げ出すことはたやすいのに。

 まるでやってみせているように。

 

 誰に?

 もちろん私にです。


 継名も無敵ではありません。

 相手の強さが上回れば、負けるのです。

 悪魔は継名より強い。

 継名は限界です。

 少しずつですが、スピードも落ちてきています。

 このままいけばじり貧で負けます。

 私が何とかしなければいけないのです。


 いままで、いっぱい継名に習ってきました。

 きっと何か逆転の一手があるはずです。


 継名からしたら、私は土属性だと言っていました。

 私が知っている土属性の使い手は、彩水勇者と副将軍と一緒に修行した女の子ぐらいです。

 

 私は二人の魔法を一つずつ思い出していきます。


 たしか女の子は『大地の恩恵』というスキルが使えました。

 そのスキル名の前には、『天啓』とついていました。

 天啓とは……

 天啓とは神が与えたスキルということ。

 継名が土属性のスキルを与えられるわけがありません。

 つまりあれは私のスキル?


 そう思いついた瞬間私は大地に手をつけます。


 私のスキルに『大地の恩恵』が浮かび上がります。

 今度は私が言う番です。


「なんとしてでも、助けます」


 この世界の魔力を大地から引き出します。

 ただでさえ崩壊しかけていたアストラル体にひびが入っていきます。

 私にだって命より大切なものがあります。

 この世界を守りたいという気持ちです。

 だから、その気持ちまるごと継名に託します。


「エターナルヒーリング」

 

 魔法の力が継名にすべて注がれます。

 継名の翼が本来の漆黒さを取り戻します。

 体だけでなく、継名の心にも魔力が注がれていきます。


「やるじゃないか、イミュー」


 心のエネルギーこそが、妖気であり、神気であり、継名の力の源です。

 継名が力強く、踏み込みます。

(スピードアップ)(スピードアップ)(スピードアップ)(スピードアップ)(スピードアップ)・・・・・・・・・・。


 スキル覚醒。


[神速]×[無限斬撃]×[絶対切断]


 次の瞬間、継名の姿が、かききえました。

 姿は捉えられない、だけどステータスを見ていた私には、また継名の[絶対斬撃]と[斬撃無効]がぶつかって相殺されたのが見えていました。


(ダメージ1、ダメージ1、ダメージ1+1+1+1、1、1、1、1・・・・・・・)


 とらえきれないほどの速さでたった1だけのダメージが悪魔に加算されていく。

 悪魔の回復力が焼け石に水としか考えられないほど、HPが減って行くのが見える。


「がああああ、何が起こっているんだ。なんで俺様にダメージが与えられている」


 悪魔のHPが減っていく。恐ろしい速さです。


「どこだ、あいつはどこにいるんだ」


 悪魔はとらえきれない、でも私には分かる継名は悪魔の側にいて攻撃し続けています。


「ならば、あいつから殺すまでだ」


 悪魔と目があいました。

 そこにはさっきまであった余裕はどこにもなく、単純な殺意にもえていました。

 悪魔は翼を広げます。

 が、広げた瞬間に引き裂かれます。

 地に落ち、攻撃的な爪を伸ばそうとする。

 が、伸びた爪先から順番に切られていく、八つ裂きなんか生ぬるい、元素すら超えて、存在をみじんに切られていく。

 悪魔のHPが千を切った瞬間に、突然高圧的な殺意が消えました。

 諦めたのかと思ったら、

 突然、継名の背中に視界を遮られました。


 死の定義

 

 悪魔が死を撒き散らす。

 世界が死に覆われていく。

 さっきまでの単純な闇の攻撃とは違う。

 死と闇による精神汚染。


「死ねえええぇ」


 悪魔が叫ぶ。単純な魂の叫び。


「かかったな」


 継名が悠然と悪魔を見据えた。

 そう継名には状態異常系の能力は効かない。

 継名の精神が汚染されるとき、スキルが発動する。


[呪い返し]


 最強の鏡。

 そこに矛盾は存在しません。

 自分が放った極限の死を自身で受け取ります。

 悪魔はうつろに存在していました。

 もはやまだいるとしか形容できません。

 すでに精神が死んでいるのでしょう。

 継名が刀を振り上げました。

 スキルが発動します。


[絶対切断]


 私にも見える速度で振り下ろされた刀が、悪魔にふれると存在自体も滅ぼし尽くしました。

 これですべて終わりです。

 私たちはこの世界を守り切りました。


 刀を納刀した継名が見たことない表情をして私に駆け寄ってきます。

 それが私が見た最後の景色でした。


 そう継名に『は』状態異常系の能力は効かない。

 私には効果は絶大です。


 わかっていますよ。

 わかっています。

 継名は礼節を大切にするひとですから、

 お願いするときは、ちゃんと頭をさげて言葉にしないといけません。


「継名、あとはおねがいしますね」


 えへへ。

 私結構頑張りましたよ。

 ちょっとはいい神になれたでしょうか?

 知ってますか?

 私は本当は褒めて伸びるタイプなんです。

 継名は褒めてくれますか?

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