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世界創生の意図

 私は上空を見上げました。


「ぐうぅうう」


 魔王が呻いています。 

 助けたいと思いますが、手の打ちようがありません。

 それでも何とかしたくてステータスを見てみます。

 レベルが1000に達した魔王のステータス表示はなぜか。


神レベル1


 と表示されていました。

 どこかで見た表示です。

 あれは確か……

 継名のステータス表示と同じです。

 それが意味するところは……。


 つまり継名のレベルは、

「どうしたイミュー、なにかわかったのか?」


 いつの間にか隣に来ていた継名がきいてきます。


「レベルが1000になると、神レベル1になるようなのです」


 つまり継名はレベル1000ということ。

 それはそうですよね。

 レベルの数値があまりあてにならないとはいえ、継名がただの1なわけありません。

 きっと端数は表示もされないのでしょう。


「私のレベルは1000に到達していないので、レベルには神とついていません」


 私は久しぶりに自分のステータスを見ました。


レベル852

神 イミュー


「私の場合は、レベルの前ではなく、名前の前に神と表示があります」


 継名はふむとうなずきました。


「この世界において神格と、神レベルは別物なのか」


「だからなんなんだって感じですけど、強さの基準にはあまりなりませんし」


 私のレベルは気づいたときには、このレベルで変動していません。

 攻撃魔法はほとんど使えないので、戦闘力は皆無です。 


「いや、強さの基準にはならないが、世界の仕組みを紐解く情報としては有効だ」


「それはどういうことですか?」


 継名が答える前に、

「があぁああ」

 魔王がさらに声を張り上げました。


 なにも知らない魔族達は、うろたえています。


 次の瞬間、魔王から魔力が吸い上げられ始めました。

 魔法が形成されます。

 見慣れた魔法です。


 あれは私がよく使う、

「召喚陣!? どうして、魔王の体からあんなものが」


 呪いの正体は、強制的に召喚陣を発生させるもののようでした。

 魔王は抵抗しているようですが、呪いの強制力の方が強いようです。


「イミュー、あれはなにが召喚される?」


 継名が、私に質問してきます。


「わ、私にも何が何だか」


 ですが、継名が私に質問してきた意味は分かります。

 あれは規模は違いますが、いつも私が使う召喚陣と同種のものです。

 魔王はほとんどの魔力を吸い上げられてしまいました。

 魔法陣が完成し光輝きます。

 召喚陣の中から何かが現れようとしています。

 呪いから解放された魔王は、なけなしの魔力で魔法を放ちますが、召喚陣にはじかれてしまいます。

 焼け石に水といった感じです。


「魔王! 正気に戻ったのなら魔王軍を退かせろ」


 継名が魔王に向かって叫びます。


「だが……」


 魔王は、抗議しようとしますが、勇者との戦いで消耗し、さらに魔力をほとんど失いました。

 呪いによるバッドステータスは消えていますが、戦える状態ではありません。


「召喚陣から出てくる奴の相手は、俺がしてやる。部下達を巻き込まれたくなければ急げ」


「すまない」


 魔王が頭を下げ軍の方へ飛んでいきます。

 魔王が撤退していくのを見送ると、継名が抜刀します。

 戦う前から、刀を抜くのは初めて見ます。

 継名は、魔法陣から出現始めた存在を感じ言いました。


「どうやら手を抜いて勝てる相手ではなさそうだ」


 継名は召還が終わったタイミングで大地が揺れるほど、踏み込みました。

 スキル神殺しがステータスで赤く輝きます。

 上空からの超高速で攻撃します。

 回避不能の神殺しの一撃です。

 召喚者の影を刀が確実に捉えました。

 なのに継名の攻撃は抵抗なく通り過ぎてしまいました。


「殺すつもりで切ったのに、手応えがまるでない。どういうことだ」


 私の目に相手のスキル情報が表示されます。


スキル 

 神殺し 死の概念 闇夜の付与 斬撃無効 獄炎化


 なんですかこの物騒なスキル名は、詳細まで見る余裕がありません。

 ただ攻撃が通らない理由はわかりました。


「継名、敵は、斬撃無効です」


 アストラル体だから効かないのではなく、そもそも斬撃無効ということは、切るという行為自体が通らないということ。

 継名は舌打ちすると納刀し、団扇に持ち替えました。

 召喚陣が消えたところから声が聞こえてきます。


「ふざけやがって、召喚される途中で攻撃してくるとか常識を知らないのか?」


 召還者は、憤慨していました。

 継名は召還者を嘲笑しました。


「相手が身動きできないときに攻撃するのが常識だろ」


 ようやく、召還者の全貌が見えてきました。


「これだから、光の悪魔どもは昔からそうだ。常識を知らない」


 六枚の蝙蝠のような羽を背中に生やした人物が現れました。

 魔族の間で伝わる神の姿をしています。

 それに闇属性の恐ろしい量の魔力を感じます。

 私はステータスを確認します。


神レベル30

神 ローミッシュ

 

 ステータスにはなぜか神と表示されていますが、姿は私が噂で聞いた悪魔そのものです。


「光の悪魔? 悪魔はそちらでしょう」


 どうして私が悪魔呼ばわりされなくてはいけないのでしょうか。


「昔からそうだお前ら悪魔どもは、俺達を不意打ちで虐殺してきたくせに、絶対許さない」


「え、それはどういうことなのですか」


 悪魔から答えはなく、継名が言った。


「お前ら、光と闇は戦争しているんだろう? おまえらは敵のことを悪魔と呼ぶだけだろうよ。風の俺からしてみたら、光と闇はただの明るさの違いでしかないがな」


 悪魔は、継名をみて言いました。


「お前光属性ではないな。しかもこの世界の住人とも雰囲気が違う。それで風属性とか、天然物か」


 天然物ってなんでしょう。天然物の反語って、えーと養殖?


「よそ者がなんでそいつらの味方をする」


 悪魔が継名に問います。


「俺はこいつ『ら』の味方なんかしゃない。今はこいつイミューの味方だ。正直、光と闇の戦争なんて興味もない。大人しく引いてくれないか?」


「はっはっは。俺様がどれだけこの世界が熟れるのを待っていたと思うんだ。きけない相談だな。俺がこの世界の住人を食い尽くしてくれる」


「お前が光属性の神を恨むのはわかるが、お前はどうしてこの世界は狙う? この世界の住人は関係ないだろう」


 継名も理解できていない様子です。


「そんなのは、そこにいる光の悪魔が世界創生をする同じ理由だ」


「同じ? 私は最高神様に指示されただけで……」


「自分が何のためにしてるかも知らずに世界を創生しているのか」


 悪魔は私を嘲笑します。

 ですが、なんのためなど考えたことはありません。


「あなたは私たちは何のために世界創生しているというのですか?」


 思わず私は、悪魔に質問していました。


「強くなるための、経験値の養殖に決まっている」


 経験値の養殖?

 意味が分かりません。


 ただ私は最高神様に

「勇者をレベル1000まで育てて連れてこいと言われただけで……」


「なるほどな。世界一つまるごと利用した蟲毒か」


 継名は納得したようですが、私は継名のいう蟲毒の意味すらわかりません。


「つまり俺様は、お前らの親玉が食べる直前に、世界を丸ごと食べに来たのさ」


 食べる?

 経験値を得るために?

 私の創生した世界の住人を殺す……。

 私はようやく意味がわかってきました。

 最高神様は私たちに、自分が強くなるために、勇者を育てさせていたということです。

 つまり、私が育てた勇者を最高神様に連れて行ったら……


 殺される。


「そんな、そんなの嘘です」


 継名の予想では兵隊が欲しいと、そういうことだったはずです。


「勇者はあなた方と戦うための兵隊ではないのですか」


「レベル1がいくらいたところで、俺たちに敵うとでも? むしろ経験値になるだけだろう」


 悪魔がはっはっはと笑います。

 悪魔が嘘をついていないことはなんとなくわかります。


 ただ私は認めたくはなかった。 

 私は勇者だけでなく、この世界丸ごと不幸にするために、世界創生していたなんて。


「私は……そんなことって……」


 心が絶望に沈んでいきます。


「イミュー」


 継名が私の名前を呼びます。


「俺はお前が世界とちゃんと向き合ってきたことを知っている」


 継名の言葉が私の心に希望を与えます。


「他人の意図なんてどうでもいい。お前はお前の気持ちが向く方に進めばいい」


 継名が私の背中を押してくれます。

 そうです。

 私は最高神に言われて創生した世界ですが、それはきっかけにすぎません。

 どんな意図があって私に指示を出したかなんてもう関係ありません。

 私は私の望むままに世界を創るだけです。

 なぜなら、

 私がこの世界の創生の女神なのですから。

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