【赤い人】
黒鬼衆という相手を無くし、まだ目をギラギラさせたままのトゥイーニーが大股でこっちに歩いてきている。
「あー、こんなことならボクの跡継ぎさっさと作っとくんだったなー」
「なにもう死んだ気でいんだよ!なんとかなるかもしれねえだろ!」
「いやぁ、あんなの見といてそれは無理でしょ」
結界用パペットがこっちを守りつつ、攻撃用と足止め用と捕獲用のパペットが歩みを止めようとするけど、トゥイーニーの乱暴な蹴りに全て空中分解されてしまった。
分解されるのがわかっていたメイちゃんはパペットに仕込んでいた爆弾を砕けた衝撃で散らばらせて、トゥイーニーが範囲内にいるうちに爆破させる。
「……っやば!気をつけて!」
タイミングを合わせたはずなのに爆発した場所に赤い姿はなくて、どこに行ったのかときょろきょろしていたら頭上からドンッと鈍い音がした。
結界に四つん這いで張りつく野性味溢れるトゥイーニーに、ルルゥさんは困った顔をする。
「コントロールできているわけじゃなさそうですね。マグダ、トゥイーニーを止められますか」
「スチュワード無しではどちらかが死にます。攻撃力を考えると私の方がやや不利でしょう」
「強さを考えると、まずマグダを殺しにくるでしょうから、皆様は逃げられそうなら逃げてください。私とマグダで少しでも長く引き留めておきます」
「いや……でも……」
申し訳なさそうに口を開くアンダカさんに、ノイルさんはメイちゃんとペティちゃんを抱えさせた。
「戦いが一段落したんだ。お前はメイとペティを連れてサティナ様の護衛に戻れ」
「なぜ俺を逃がそうとする!オルコでもネーロでもいいだろ!もちろんお前でも!」
「オルコは鬼族、ネーロは戦獣族でどちらも悪魔族より耐久力がある。俺は腰痛が酷くてな、メイとペティを抱えられない」
わざとらしく腰を擦るノイルさんをアンダカさんがすごい形相で睨みつける。
少しの間沈黙していたが上からメリメリと結界が破れる音と、その隙間から手のひらがねじ込まれてきて、慌てたノイルさんはアンダカさんたちをトゥイーニーから一番距離のある場所へと移動させた。
まだ無事な荷車にアンダカさんたちを押し込むと、ペティちゃんが荷車にパペットを繋ぐ。
「俺が死んだら組合は息子が引き継ぐ。長男のノイロンは組合の運営担当、次男のノイロフは人事担当だ。あとは任せたぞ」
「なん!?お前!息子いたのかあああ!!」
急発進する荷車からアンダカさんの叫びが聞こえた。ノイルさん…秘密にしてること多いんだなぁ。
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