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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【独壇場②】


強さに怯えて逃げ出す敵と果敢に立ち向かう敵をまとめて吹っ飛ばしていくマグダ。個人対軍勢だった激しい戦いがみるみる勢いをなくしている。


「スチュワードやマグダみたいに強い種族って少ないんですか?」

「どうなんでしょうか。同じ種族でも魔神種・邪神種・聖霊種によって違いはありますし、私は全ての種族を知っているわけではないので詳しくお答えするのは難しいです」

「あの戦いを見てるとルルゥさんの従者が最強に思えるんですが……」


相手の数が少なくなってきたからか剣で鮮やかな手遊びをしつつ、大股で歩きながら敵を追い詰めている。悪魔族や獣族はもちろん、ボギーと名乗った魔獣族もマグダが近寄るたび集団で襲いかかるけど、見事に全員空中で赤い霧になって散っていった。


入る器を無くして空で漂っている幻霊族は戸惑うようにうろうろしたり、互いにひそひそ話し合ったりしている。


ディーヴィの姿は見えないが、こんなにされてしまったらきっとものすごく困っているだろう。


「ディーヴィ様が反乱を起こしてそれなりの軍勢に仕上げたのはいいのですが、正直この程度でヴァンブラッド家に侵攻するのは無理です。仮に強い種族が控えているのだとしても、ここまで極端に兵力を減らすのはおかしいです」


最後の一人を地面の染みに変え、敵を全滅させたマグダは髪をさらりとかきあげてこっちに歩いて戻ってくる。


あれだけ空中や地面を汚したのにマグダ本人は服も含めて全身汚れ一つない。そんなに乱れていない身なりを整えて、ルルゥさんに褒めてもらおうと嬉々とした表情で歩いていたマグダは、その瞬間なにかに気づいて空中に飛び上がった。


「ル、ルルゥさん!あれ!」

「回復しきっていない者は後方へ退避しろ!オルコ、ネーロ、ノイルもなるべく赤い地面から距離をとれ!メイとペティは空中用パペットで援護の準備!」


状況を口にする前にアンダカさんの大声が結界内に響いた。


マグダが宙に避難すると空でうろうろしていた幻霊族が地面に向かって吸い込まれるように消えていき、赤く染まった大地がバキバキと恐ろしい音を立てて割れていく。


地面から黄色と黒の稲妻が走り、恨みがましい女性の泣き声と怨念のこもった男の唸り声が辺りに響くと同時に割れた大地のあちこちから真っ黒の手が現れた。


地面から這い上がるようにして出てきたのは僕の身長の倍以上ある人型の大きな化物で、異様に膨らんだお腹が最初に目についた。額に短い二本の角と自分を貫きそうなほど鋭い口から生えた牙、濁った黄色の瞳はどこを見ているのかわからない。


「あ……あ、いや……」

「終わりだ……みんな死ぬんだ!」


五体の黒い人を見たみんなが急に騒ぎ始め、我先にと押し合いながら結界の外へと逃げていく。


アンダカさんたちは黒い人を見て固まったまま動かず、ルルゥさんは痛いくらい僕の手を強く握ってくる。


あれは、なんだ?


.

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