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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【独壇場】


結界に砂煙が当たってなにも見えなくなったが、その砂がじわじわ赤くなるにつれてオルコさんが『お!』と声を出す。


「この辺は砂粒みてえに細かくなった肉片か!えげつねえな」

「……口に出しちゃうのがオルコの悪いとこだよね」


前の方にいた何人かが口を押さえて後ろに走っていく。僕もボギーからのダメージがない状態で、目の前で人が砂みたいになったら吐いてしまうかもしれない。


なにをどうすればそんなことになるのか…この世界の強さはデタラメだ。僕が知っている帝国の兵器でもここまでの集中的な火力は出ない。村を丸ごと雑に消し飛ばすくらいだったはず。


人間がこんな世界にいたら当たり前だけどすぐに死ぬ。生き残れるわけがない。なんでこんな世界に来てしまったんだろうと悩みが脳内をぐるぐるする。


「お?なんだ?早いお帰りだな」


細かい肉が飛ぶ赤い結界の外にゆらりと人影が映り、スチュワードが汚れた白い手袋を外しながら結界内に戻ってきた。あとからトゥイーニーも入ってきて二人とも馬車の上に飛び乗りルルゥさんの近くで片膝をついた。


「どうかしましたか」

「ルフレ様より出国の件で呼び出しの連絡を受けております。私を指名されておりますがどういたしましょうか」

「竜族だから安心してほしいと皆様に戦力不足の件で説明しているのに…このタイミングでスチュワードを呼びますか」

「あの程度であればマグダだけで事足りるでしょう。それどころか獲物の奪い合いになりそうでしたのでトゥイーニーは下がらせております」

「マグダの戦力は不安要素ではありません。とりあえずルフレ兄様のところへ向かってください」


スチュワードは音も立てずに馬車から降りてルルゥさんに一礼すると、そのまま城の方向へと走っていった。エリスさんも同僚になにか伝えるとスチュワードを追うようにして結界から出ていってしまう。


普通の小走りなのにあっという間に見えなくなるんだなぁ。


「スチュワードに嘘をつかせてはいけませんよ、なにかあったんですか」

「申し訳、ございません……」


顔を上げようとしないトゥイーニーは膝をついたままルルゥさんに謝罪する。スチュワードの嘘って『獲物の奪い合いになるからトゥイーニーを下がらせた』って言ってたことだろう。


同じメイドでもマグダと違ってトゥイーニーには優しいんだなぁ。


「たくさんの敵がいて、気持ちがわーってなってしまって……こわくて」

「マグダはあんなに楽しそうなんですけどね」


もうすっかり収まってしまった砂煙の向こうではマグダが地面を赤く染めていた。銀色が煌めくと敵が宙を舞い、落下途中で塵のように細かくなって地面に降り注いでいる。


幻霊族に憑依する器を与えないようになるべく細切れにしているのか、大きくても腕手のひら程度の欠片しか落ちていない。


本当にマグダだけで事足りるんだ……。


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