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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【第二局面】


話している途中で何人も悲鳴や叫び声をあげながら結界内に逃げ込んできたり、パペットが泡を吹いて気絶している人を運んできたりと一気に騒がしくなった。


戦場では狂ったように高笑いしながら敵味方関係なく襲いかかっている人や、戦意どころか生きる意志を失って自ら命を断つ人が何人もいる。


敵の攻撃と味方の混乱でみんな手がいっぱいで、助けに行ったアンダカさんやノイルさんが狂った仲間に刺されながら結界内に何人も運んでくる様子を見て、ルルゥさんはぎゅっと目を閉じた。


「……私の従者に敵を殲滅するように伝えてきていただけますか。私の従者以外は結界内に戻ってきてもらってください。なるべく助けられそうな方もお願いします」


その言葉にエリスさんは頭を下げて、まだ傷が癒えていないのに再び戦場へ駆けていく。


「ルルゥさん……」

「結局私は力を使わせる方法でしか解決できないみたいですね」

「それはいけないことなんですか?」

「強すぎる力はいろんな問題を引き起こします。スチュワードもマグダもトゥイーニーも、もちろんカル様にも代わりはいません。もう判断を間違えて失いたくないのです」


『もう』と言ったのが気になってその部分を聞いてみたくなったけど、きつく目を閉じているルルゥさんを見てそれを能天気に聞くほど僕の心は図太くない。


恐怖での混乱は精神的なものだからか回復魔力ではすぐに戻らないみたいで、泣きながら逃げ込んだ人も気絶して運ばれた人が目を覚ましても嗚咽と悲鳴が止まらない。


「おいおい……なんでこんな泣き叫んでんだ?落ち着け!落ち着けっておい!なにがあったんだよ」


収拾がつかない事態にオルコさんが兜をガシガシ掻く。あまりにも酷く混乱している人は殴って気絶させたり、縛って拘束してくれている。


負傷者と混乱状態の人を連れて、血まみれのアンダカさんとノイルさんも結界内に入ってきた。仲間を殴ったり縛ったりしているオルコさんを見て二人ともドン引きの表情だ。


「オルコ……趣味もほどほどにな」

「俺とアンダカにはするなよ」

「バカ言ってんじゃねえ!ギャーギャー騒ぐから大人しくさせてんだろうが!」


犬系の獣族の頭を掴んで引きずる姿は控えめに言って残忍な殺し屋のようだ。傷だらけの二人もオルコさんを手伝って混乱した人を寝かせると、その辺にある布切れで全身についた血を拭う。


淡く発光しながら回復する仲間や自分たちを見て、アンダカさんは腕組みをした。


「ノイル、ボギーという集団に聞き覚えはあるか?マントの中の姿が確認できず、それぞれがボギーと名乗っている」

「……いや、聞いたことがない。正気に戻ったやつになにをされたか聞いてみたが、どうやら見た者の一番恐怖する姿になっているらしい。まぁ恐らくそれだけじゃないだろう」

「お前はどうだったんだ?」

「俺は母親が見えた。ガキの頃は結構怖かったからな……お前はどうなんだ」

「戦っているときに相手なんか見てるわけないだろ」


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