【観戦④】
スチュワードとマグダは圧倒的だった。スチュワードは掴んだゴブリンを武器として使い、潰れたら次、潰れたら次と取り替えている。
服を汚さないよう気をつけているのか、手持ちの武器がなくなると首を折ってなるべく出血を抑えたり、死体や血溜まりや泥を避けて歩き回っている。竜にならないのかと不思議だったけど、味方が巻き添えになるからなのかと勝手に納得しておいた。
マグダはまず僕の目に見えない。銀色の光が一閃したなぁと思ったら、ゴブリンがあちこちに飛んでいく。ビタビタビタッと上から嫌な音がしたけど見ないでおこう。
普段持っていないはずの細身の銀色の剣が右手に握られていて、多分それを使って吹っ飛ばしているんだろう。頼むから周りへの迷惑を考えてほしい。
「だいぶ少なくなりましたね」
「これで終わるとは思えませんが、一段落しましたね」
みんなの大暴れでようやく終わりが見えてきたかという頃、周りにまばらにあった林から次々と誰かが出てきた。
様々な動物の頭をした兵士は恐らく獣族だ。防具をつけた悪魔族の兵士も一緒にいる。一部無表情で武器を構える人がいれば、ケラケラ互いに談笑しながら進む人もいる。
マントやフードで姿を隠しているのが魔獣族かな?見たことない種族もわらわらいて、みんな濁った目をしている。
空に漂っているロムと似た種族は幻霊族だろう。ざっと数えて二十人くらいかなぁ。
「ルルゥさん……」
気付けばゴブリンよりも多い兵士たちが集まっていて、僕は不安になりルルゥさんの手をぎゅっと握る。
最後のゴブリンが倒されて負傷者を運びながら後退するけどなにもされない。飛び道具で攻撃されたり、攻めかかってきたりするのかと怯えたけどなにもない。
みんなが馬車の周りに集まって回復を進めていても軍勢は攻めてくる様子はなく、なにを考えているのかわからなくて不気味だ。
「今、トゥイーニーが強制契約を解除するために契約書の場所を探っています。スチュワードとマグダが契約者を隔離し、戦闘に巻き込まれないよう解除するつもりです」
「隔離など……そんな簡単にできるのですか」
アンダカさんがゴブリンにかじられていた左腕を擦る。もう傷はないけど気になるんだろう。
「ええ、スチュワードは強くてマグダは速いですから」
「いやぁ?そいつぁどうかな?」
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