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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【観戦③】


意外だったのはエリスさんの戦い方だ。綺麗でスマートに優雅に戦いそうなイメージだったけど、全身を血で汚しながら目を真っ赤にさせ、牙を剥き出しながら他の執事たちと一緒に戦場を駆けている。


ゴブリンの血が手元で変化して、鎌になったり剣になったりしているのを見ると少し心がわくわくする。


「ルルゥさん、吸血鬼族の戦い方ってあんな感じなんですか?」

「基本的には自身の血を操作して肉体の強化をし、相手の血を使って武器を精製します。あくまで基本的にはなので、それぞれ得意な分野で戦うことが多いですね」

「得意な分野?」

「はい。ルフレ兄様であれば魔力操作、ヴォルスト兄様でしたら肉体操作、私は他の方に力を分け与えるのが得意分野です」


メイちゃんペティちゃんのパペットで運ばれてきた負傷者が馬車の周りで寝かされると、白く淡く発光したのち立ち上がって慌ただしく戦場へ戻っていく。


「これがルルゥさんの回復ですか?」

「マグダの守護結界内で回復魔力を使っているので、入った方は瀕死であろうと回復します。ただし私の魔力が尽きるまでなのですが」

「大丈夫なんですか!?」

「ええ、ですからこうして補給させていただいているのです」


差し出したままの僕の左手は気がつけばルルゥさんの右手と恋人繋ぎになっていて、伸ばされた僕の人差し指をルルゥさんはちゅうと吸った。


どうやら人差し指の先端に傷があるらしく、そこから血を吸っているようだ。僕の血が喉を通るとルルゥさんの瞳は濃い赤色になるけど、あのキラキラした輝きはない。


回復に魔力を使っているからなんだろうなぁ。


「あの、魔力って尽きたらどうなるんですか?」

「完全に尽きてしまうと立ち上がれないほどぐったりします。魔力尽きた状態で無理矢理に使用すると魂を削って魔力に変換します。それが続けば死んでしまいますね」

「尽きたことあるんですか?」


僕の指を吸うルルゥさんと目が合った。ちゅっと音を鳴らして指から唇が離れるとどっちも唾液で濡れていて、その光景になぜだか体がむずむずする。


それもルルゥさんの表情を見るとピタリと止まった。そこにいつもの安心させる笑顔はなく、濃い赤色が二つ僕を見ている。


「ぁ……」


――――バチュン!


急に頭上で濡れたなにかが叩きつけられる音がして、上を見上げると潰れたゴブリン数匹が守護結界に張りついていた。


少し遠くにいるマグダがルルゥさんにぶんぶん手を振っているので、投げたかなにかしたんだろう。


「ふふ、楽しそうですね」

「そう、ですね」


楽しげにくすくす笑うのはいつものルルゥさんで、途端にぶわっと額や背中に嫌な汗が浮かんだ。


あまり深く考えないほうがいいと本能が言うので、僕は手を繋いだまま戦場へ視線を戻した。


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