【魔竜】
「それくらいなら問題ないな」
「ええ、問題ありません」
ルフレとルルゥさんの言葉にサティナ様たちは唖然とした。
「おいおい、待ってくれよ。全員を死地に送るつもりか」
「んー、まだ死にたくないんだけど」
ガシャンガシャンと鎧を響かせて詰め寄ってきたのはオルコさんで、ネーロさんは肩をすくめて後ろに立っている。
「問題ない。数だけの話なら十倍かもしれないが、戦力という話ならこちらが上回っている」
「……相手は悪魔族と獣族、魔獣族に幻霊族だぞ。幻惑術で撹乱されて力で潰されるのがおちだ。だから厄介なんだろうが」
「ルルゥの配下は規格外で、僕の配下は強者揃いだ。そこに少しそちらの戦力を足せば余力が残るくらいだろう」
ディモニア家側のみんなの視線がルルゥさんとスチュワードとマグダに注がれる。僕への視線は『え?お前も?』と言いたげなものばかりだ。
いやいや!僕は戦力外ですから!実は強いとかもなく、戦ったら普通に死んじゃうからね!
「メイドの姉ちゃんはメイとペティからそれなりの強さだと話は聞いてる。だがよ、爺さんとカルはどうなんだ?強そうには見えねえ」
「カル様は私の庇護下にあるだけなので戦いませんよ」
「お、おう……やっぱ弱っちいのか。そっちの爺さんは?」
オルコさんが指差したのを見て、スチュワードはルルゥさんをちらりと確認する。
「いいですよ、お疑いなので知っていただいた方がいいでしょう」
「お許しがでたので名乗らせていただきます。私はこの世に二体いる魔神種竜族の魔竜のうちの一体、名をスチュワードと申します」
「え?は、ああああ!?」
「そ、んな、ええええっ!?」
途端にオルコさんを筆頭に驚きの声が上がった。うるさそうに顔をしかめるルフレの耳をエリスさんがそっと手で塞いでいる。
魔竜ってこんなに驚かれるものなんだ。
「なんでこんなとこに!?ヴァンブラッド家はなにをして魔竜と契約したんだ!」
「失礼ながらアンダカ様、私はヴァンブラッド家でなく姫様の忠実な配下にございます。ですが、あまり詮索なさいませんよう」
「世界を完全に破壊できるという六体の竜族の一体か……ボクなんか失礼なこと言ってないよね?大丈夫?」
「いやいや!お前は大丈夫だろうが!こっちは今さっき爺さんを強そうに見えねえと言ったばかりだぞ!」
大慌てでスチュワードから距離をとるオルコさんとネーロさんを見て、ルルゥさんはくすくす楽しそうに笑った。
「私の頼もしいスチュワードとマグダとトゥイーニー、そしてカル様がいれば怖いものなどありません。皆様のお力添えをよろしくお願いいたします」
そう言葉を締めくくったルルゥさんだったが部屋のざわめきは治まらず、みんなが冷静さを取り戻すのにもうしばらくかかってしまった。
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