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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【鍵③】


ルルゥさんの発言にカブラが身を乗り出してロムの入ったぬいぐるみを掴もうとし、カブラの後ろに控えていた悪魔族たちも武器を抜き血眼で駆け寄ってくる。


「なにしてやがる!」

「気でも狂ったのか!」


オルコさんとアンダカさんが悪魔族の人たちを次々に掴んで引き倒し、ネーロさんがサティナ様を抱えて颯爽とソファーから飛び去った。


ペティちゃんがどこからか取り出した凶悪なぬいぐるみを操って悪魔族を昏倒させると、今度はメイちゃんが顔のついた細長い不気味な人形を取り出して倒れた悪魔族たちを拘束していく。


ルフレの執事たちも応戦し、広い部屋は一気に戦場のようになる。敵味方ごちゃ混ぜながらも徐々に悪魔族が倒れていくのが見えた。


「ルフレ様、お怪我はございませんか?」

「少し汚れた」


武器を片手に襲いかかったカブラの頭をとんでもない速さで床に叩きつけたエリスさんは、その姿勢のままルフレにハンカチを渡している。


スチュワードはあっという間にルルゥさんの後ろに待機していて、マグダは少しだけ僕の近くに立っていた。


そこはもっと近くで守ってくれるんじゃないのか。微妙に距離がある……。


「カブラ!どういうことだ!」


悪魔族が全員拘束され、怒鳴るアンダカさんに頭を押さえつけられたままのカブラはプッと血の唾を吐く。


「そいつを返せ!ディーヴィ様のもんだ!」

「お前!ディーヴィの側に寝返ったのか!」

「寝返っただぁ?力のない女に忠誠を誓った覚えはねえ!ダヴィルやダヴァラを上回る力を持つディーヴィ様こそ真の悪魔族だろうが!」


悔しそうに唇を噛み、拳を強く握るアンダカさんは言葉にならないわめき声を出すカブラの背中にドスンと拳を落とした。


気絶したカブラから手を離したエリスさんに『すまない』と謝罪する。


「反乱が起きたときからサティナ様を前線で守っていたカブラがまさか……もっと警戒すべきだった」

「よくあることですよ。戦力差の読めない方で助かりました」

「……いやー、こんな怖い場所にいられないっすからオレはちょっと失礼させてもらうっす」


騒がしさが落ち着く隙をみて戦闘中にテーブルへ投げおかれたロムは煙を吐いてぬいぐるみから抜け出した。


薄水色の煙は部屋の天井に広がり、ゆらゆらと揺れている。


あ!契約が切れているから今のロムはどこにでも行けるんだ!見つけにくい幻霊族だから隠れられたらもう見つからないかもしれない!


「ロム!」


なにもできないとわかっている。でも引き止めたくて名前を叫んでしまう。そんなことでロムが止まるとは思えないけど。


焦る僕の心とは裏腹に薄水色の煙はまだ天井をゆったりと漂っていて、少しでも気持ちが届いたんじゃないかと期待した。


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