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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【飯②】


トゥイーニーの隣に座ると、棒を刺した団子をぐいっと口元に押しつけられる。大きさ的に口に入らないというのをわかってくれ!


「ちょ!自分で食べられるから!」

「三つあげるから二つはトゥイーニーの」

「わかったわかった」


団子を受け取ってかじってみると、香ばしい匂いと濃い旨味が口の中に広がる。味も食感も肉に近いかもしれない。


たまにカリカリと薄いなにかが混ざっていて、それが噛むたびにジュワッと別の旨味を出してくる。これ相当美味しいぞ!


「夜の国で量産されてるヨナキドリをミンチにして丸めて焼いてる」

「このカリカリのは?」

「豆をどろどろにして油で揚げたのを小さくしたやつ」


棒を使わず両手を使って肉団子をかじっているのを見ると村長が飼っていた飼育用ねずみを思い出す。尻尾が長くて小さくて可愛かったなぁ。


飼育用は果実を食べるから可愛いんだけど、遺伝子操作を受けた帝国のねずみは人間の死体をエサにしていると聞いたことがある。


……もうあまり考えないでおこう。


「さっきのヴォルストとルフレって誰のこと?」

「……。カルはヴァンブラッド家に関わる者でも領民でもないから、そのお名前はなるべく口にしないほうがいい。どうしても命を捨てたいのだとしてもせめて敬称はつけた方がいい」

「え、嘘……そんなに?」

「ヴォルスト=ローゼン=ヴァンブラッド様はご主人様の兄様で次期当主。歴代当主よりも魔力がある。ルフレ=ローゼン=ヴァンブラッド様はヴォルスト様の弟で良くも悪くも変わり者」


トゥイーニーと同じタイミングで一つ目を食べ終えて、まだ食べたりないので二つ目をかじる。


「偵察部隊を城に誘導して処理しつつ、ルフレ様を待つとスチュワードが言ってた。血が必要だから人間にファンダング食べさせるとも言ってた」

「戦うんだからそうなるよね……」

「このあとカルの服と道具を買いにいく」

「服と道具?なんで?」

「ルフレ様が来られたら匂いで人間だとすぐばれてしまうから。なるべく臭いのを買う」

「うえっほ!ごほごほっ!」


びっくりして思わず噎せてしまった。急に臭いのとか言うな!


「魔獣族になるのが一番騙せる。見た目似てるから」

「疑われないかな」

「ヴォルスト様なら無理。ばれたらきっと生かしたまま死ぬまで血を絞られる。ルフレ様ならご主人様が誰と一緒にいても興味ない」

「仲が悪いの?」

「ルフレ様の興味は世界全体にあって、一人一人はどうでもいい感じ?」


トゥイーニーも詳しくはわからないのか、うーんと首を傾けて二つ目を食べきった。僕はまだ二つ目の途中だけど、持っていた皿で最後の一つを片方だけ大きく二つに分けて、大きいほうをトゥイーニーに渡す。


『わーい!ありがとう!』と大きな目をきらきらさせて受けとると、最後の一つをむぐむぐと食べ始めた。動物のふれあいと小さい子の食事が混ざったみたいですごく癒されるなぁ……。


わ、ほっぺたがぷにぷにだ。ぷにぷにだ!


「むー!つつくな!」


いやいや!柔らかいほっぺたが悪いと思う!


.

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