【飯】
外に出てみるとスチュワードとトゥイーニーさんが綺麗なお辞儀を披露していた。外に出るなりマグダも二人にならんで頭を下げ、丁寧なお辞儀を見せる。
いや、綺麗なお辞儀を見せたいだけじゃないのはわかっているんだけど。
「ヴォルスト=ローゼン=ヴァンブラッド様よりお言葉を預かってまいりました」
ヴォルスト?名字が一緒だからルルゥさんの家族だろうか。
「『領地内のことはこちらに任せて外を片付けるように。ルフレがそっちに向かうから邪魔なものは片付けて指示を受けろ。あとのことはルフレの好きにさせておけ』と」
「そうですか」
「ディーヴィの偵察部隊は一度ヴァンブラッド家の領地内に侵攻しましたが、ヴォルスト様によって殲滅されています。軍勢のほとんどは領地の狭間に待機したまま動いていません。サティナ様の捜索部隊が動いていますのでそちらを片付けておきますか?」
「今、どの辺りまで来ていますか」
「ダヴィル様とダヴァラ様が管理されていた村を回っているようです。残るはこの村と北の村くらいでしょう」
「では一度サティナ様と一緒にディモニア家の城に戻りましょうか。トゥイーニー、カル様に食事をしていただいてください。スチュワードとマグダは私とサティナ様のところに戻りましょう。ロム様は私と一緒にきてください」
声を揃えて返事をした二人とルルゥさんがまたロムを抱えて家の中に戻っていき、僕はトゥイーニーさんとその場に残されてしまった。
「カル、来てください」
耳をぴょこぴょこさせて早足で歩いていくトゥイーニーさんの後ろをゆっくり追いかけてみる。そういえばトゥイーニーさんって敬語使ってたっけ。
「あ、トゥイーニーさん!そんなに堅苦しい話し方じゃなくていいよ」
「……じゃあ、カルもトゥイーニーでいい」
「わかった。で、どこ行くの?」
どんどん村の賑やかな場所へと近づいているようだ。なにを売っているのかわからないけど、周りを見た感じ市場っぽい。
悪魔族の人以外にも市場にはマントをつけた人達や僕と変わらない人達、羊のような全身もふもふの人もいれば金属みたいにつるりとした体の人もいる。
「魔神様に教えてもらった食べ物を食べられる店がある」
「どんな食べ物?」
「ファンダング」
それはどの部分の説明なんだ…名前なのか材料的なものなのかわかんない。せめてどういう系なのか教えてほしい!
トゥイーニーはくちばしを付けて髪から鳥のような羽が生えている個性的な人の店に僕を引っ張ったかと思うと、そこに並んでいる大きめに丸められた茶色の団子を指差した。
「ファンダング!美味しくて丸いやつ!五つください!」
「はいよ!おや、お嬢ちゃん戦獣族かい?珍しいねえ。お兄ちゃんは……なんだ?魔獣族とかかな」
「珍しい?戦獣族って珍しいんですか?」
「魔神種のはずだけど魔神種の獣族と違ってあんまり見かけないからなあ。夜の国と水の国の近くのどっかに居住区があるらしいけど……お嬢ちゃんはそっから?」
「多分?場所わからない」
「まぁ最近治安が良くないらしいから里帰りすんなら気をつけな。ほい、お待たせ!」
薄い木みたいな皿に乗ったファンダングと指くらいの棒を渡されると、トゥイーニーは店の人に銅貨をジャラジャラ渡して頭を下げ、人通りの少ない路地の箱に腰かけた。
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