【対面③】
「ディーヴィ家に寄生するお前達も、ヴァンブラッド家の血袋も足を引っ張ったら容赦しねえからな」
しばらく険悪な空気で睨みあったあと、カブラと呼ばれた怖い人は仲間の悪魔族のところに戻っていった。
「あははっ、カルのこと血袋だって!悪魔族至上主義って昔のダサい悪口しか知らないから仲良くなれないんだよね」
血袋って悪口だったんだ……ここに来てから悪口言われたことなかったからピンとこなかった。
「カブラ達はディモニア家当主に永遠の忠誠を誓ってきた家系なんだ。当主の器じゃなかったサティナ様は眼中にもなかったのに、今じゃあの感じだからな」
「悪魔族全体がサティナ様の味方なんですか?」
「いや、正直かなりまずいぜ。魔力重視のヴァンブラッド家と違って、ディモニア家は統率力重視でな。ディーヴィが反乱を起こしたとき、当主が管理してた村の半分ほどがディーヴィについた」
「半分!?妙なカリスマ持ってるなーとは思ってたっすけど……そこまでっすかねぇ」
「確かにおかしい話だ。流通・農園・武器庫と傭兵舎の管理者が揃って向こうにつきやがったからな」
「はぁ!?重要な村ばっかじゃないっすか!」
「まーそれもサティナ様だけの戦力の話で、ヴァンブラッド家の支援があるならどうにでもできるよ。ボクもオルコも強いし、悪魔族の配下達、配下や村の管理者と契約している傭兵もいるからね」
ここに居なくちゃいけないのはわかっているけど、どうにも居心地が悪い。三人の会話を聞き流しながら、僕は助けを求めるようにちらっとルルゥさんを見た。
向こうではルルゥさんとサティナ様が真剣な顔で話をしていた。時折微笑むルルゥさんと表情を変えないサティナ様を見ていると穏やかに話し合いは進んでいそうに見える。
マグダは時間が止まっているんじゃないかと思うほど不動だけど、相手の怖い人はルルゥさんが口を動かすたびに拳を握ったり、眉間にしわを寄せたりと不満そうだ。
「あの怖い顔してるおじさんはアンダカだよ。悪魔族で最強で、ダヴィル様が当主になったときからの配下で、ダヴァラ様の幼馴染みで、ディーヴィとサティナ様の世話係」
ネーロさんが僕を覗き込むように軽く身を屈めてにやっと笑う。まずい……話を聞いてないのがバレた。
「おい、こっちのことを話しすぎだ」
「問題ないよ。どうせディモニア家はヴァンブラッド家の支配下に置かれるし。今知るのも、あとで知るのも同じでしょ」
「ヴァンブラッド家の支配下?なんだそれ」
怪訝な表情をするオルコさんにネーロさんは肩をすくめて答える。
――――ダンッ!
「ふざけるなっ!!」
答えをはぐらかしたネーロさんにオルコさんが詰め寄ろうとしたところで、向こうから硬い壁を力任せに殴る音と怒鳴り声がした。
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