【対面】
「オレ、なんの役にも立ってないっすよね?」
メイちゃんがサティナ様を呼びにいっている間、ロムは居心地が悪いのか申し訳なさそうだった。
「いえ、疑われるのはわかっていましたから。こちらから攻撃することなく、私達が協力者であると伝えるきっかけが欲しかったんです」
「オレがちゃんと説明できなかったから、マグダさんがメイちゃんに……」
マグダは帽子の女の子を近くのイスに座らせたあと、自分にくっついている人達を乱暴に引き剥がしている。
腕を折ったり、トゲを折ったりしているので辺りには『バキッ!』とか『ゴキッ!』の乱暴な音が響いている。他の人が見たら誤解しそうだ……。
「怪我一つしていないので大丈夫ですよ」
「メイちゃんとペティちゃんはサティナ様専属の護衛なんすけど……すごいっす。相手にもしてない」
「私にはもったいない程の自慢の側近ですからね」
主に褒められているとも知らず、邪魔なものを外し終わったマグダが自分に刺さっていたトゲを観察していると、メイちゃんが入っていった家の扉が静かに開く。
扉から怒った顔のメイちゃんが出てきて、マグダを少し睨んだあとルルゥさんに軽く頭を下げた。
「サティナ様から面会のお許しがありましたので案内します」
扉に戻っていくメイちゃんのあとに続いてマグダがペティちゃんを抱き上げて歩き出し、その後ろにルルゥさんとルルゥさんに抱えられたロム、そして僕が続いた。
家の中は普通の民家みたいにテーブルやイスが置かれていて、床の複雑な模様の絨毯を捲ると下に続く階段が現れた。
「サティナ様に敵意のある行動をされた場合、命の保証はできませんから」
案内に従って下に下に階段を下りていくと、その先はかなり広い部屋になっていて、何かの薬品棚や大量の書物が入った本棚がずらりと並んでいる。
よくわからない液体が構造の複雑な機械で作られていて、雰囲気は怪しげな研究室だ。
その研究室のような場所には悪魔族の強そうな男性が数人と黒い猫耳が生えた細身の男性が一人、この場の誰よりも大柄の鎧が一体あって僕達をじっと見つめている。
「お待たせしました。ヴァンブラッド家のルルゥ=ローゼン=ヴァンブラッド様とその従者です」
メイちゃんに紹介されてルルゥさんが丁寧なお辞儀をすると、悪魔族の男性達の奥から、ショートカットでいかにも頭の良さそうな眼鏡の女性がスタスタ歩いてきた。
肌の色は僕やルルゥさんとそれほど違わないが、頭から紫色の捻れた角が生えている。
「サティナ=ディモニアです。ヴァンブラッド家を疑って実力を試したことを心から謝罪したします。申し訳ございませんでした」
「いえ、お気になさらず。同じ状況であれば私も同じことをしたでしょう」
「……ディーヴィの反乱を止める為に協力してくださると聞いておりますが」
「はい。できることがあれば全面的に協力させてください」
穏やかなルルゥさんと冷静なサティナ様が真面目な話をしているのを見てから、僕はルルゥさんに抱かれたままのロムを見た。
え?このいかにも仕事が出来そうで真面目そうな秘書っぽい女性がこのぬいぐるみを?僕が思っていたサティナ様は幼い女の子だったんだけど……こういう可愛いのが好みなのか。うーん、それはそれで有りな気がしてきたな。
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