【村】
「えっと……ロムさん?聞いてもいいですか?」
窓からの急落下から安定した飛行になり、気持ちに余裕がでてくると僕は気になっていたことを思い出した。
「ロムでいっすよ!なにが聞きたいんすか?」
「あの城の使用人ってなんであんな感じなんですか?」
声をかけても邪魔してみても無反応で、僕の目から見ても明らかにおかしかった。反応できない状態なのか、僕達がなにかよくわからない状態で見えてなかったのか、どちらにしろ普通じゃない。
「あー、あれね!当主のダヴィル様と主従契約してるんで、当主が死んだときの動きのまま契約解除できずに働き続けてるんすよ」
「契約……その契約を解除するにはどうしたらいいんですか?」
「契約者の縁者ならって聞いたことあるっす」
「他に自由に動ける人はいないんですか?」
「ヒト……変わった単位使うんすねー。自由に動けるのは契約を結ばなくても忠実に動く配下だけっすかね。オレはサティナ様が逃げるときに気絶させられて、多分ディーヴィ様に契約解除されちゃったんでこうやって動けてるっす」
別に契約した本人じゃなくても関係者が解除できるなら、サティナ様を見つけて契約解除してもらえばあの城の人達は自由になるんじゃないかな。
じゃないと恐らくずっと同じことを死ぬまで繰り返すことになるんだろう。
「あの小屋の鎖はなんだ。貴様がサティナ様の所有物として捕まって、牢屋ではなく当主の部屋に放り込まれた理由も言え」
「小屋は主従契約の従者が主人の意に反して契約を解除した場合、強制的に捕らえるものだったはずです。お父様も同じものをお持ちでした」
「そんな感じっす!小屋がある部屋だったんで放り込まれたんだと思うっす!」
「で、たかが従者の貴様だけそこに放り込んでいたのはなぜだ」
「……。え、なんででしょう?」
表情が変わらないはずのぬいぐるみが、とても困ったように悩むポーズをとる。『むむむ』と小さく唸るロムを見て、ルルゥさんは愛らしそうに目を細めてくすくす笑っている。
「サティナ様を見つけたら城の方々の契約を解除していただいたのち、ディモニア家の当主としてヴァンブラッド家と共闘し、ディーヴィ様を罰しましょう。ロム様も協力していただけますね」
「戦力になるかは怪しいっすけど頑張りますよ!」
「カル様はずっと私といてくださいね」
そう心配しなくてもいいのになぁと思ったが、美しいルルゥさんとキレ顔のマグダを見て何も言えずに頷くだけにしておいた。
「カルさんってお嬢さんの恋人っすか?」
「貴様!ふざけるな!この!八つ裂きにしてやる!」
「ひ、ひえっ!こわっ!」
「そうですね……恋人よりも大切な存在なのでロム様もカル様のことをよろしくお願いいたしますね」
「なっ!我が主も!そんな!そんな下等劣等種を!恋人よりもなどと!」
「あら、そろそろ村ですね。マグダ、騒ぎにならないように上手にお願いします」
……ルルゥさん、お願いだからこれ以上マグダを刺激しないでくれ。……お願いだから!
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