【傲慢】
「僕を連れてきたのは邪神様か聖霊様のどちらかってことなんですよね。どちからに話を聞けたりできませんか?」
「世界のバランスを崩すような出来事や、興味深いものがあれば魔神様はお姿を現してくださるのですが……邪神様と聖霊様はいつお姿を見せているのか私にはわかりません」
他の神様だからわからないのか、そもそもそういう神様なのか。それだけ聞くとなんて不真面目な神様なんだと思ってしまう。
「この世界の創造神だぞ?人間のお前ごときがお呼びできるわけないだろう」
「今回は姫様が吸血鬼族ということもあり、わざわざ来ていただけたのです」
ルルゥさんの両側から呆れた声が飛んでくる。僕の後ろに立つトゥイーニーさんも僕の肩を叩いてやれやれというふうに首を振った。
もっと優しい言葉をくれてもいいんじゃないか。
「ディモニア家との顔合わせには時間がございますので、私とマグダで魔神様に頂いたリストを元に人間の食事を用意してまいりましょうか」
「それはいいですね。カル様、お腹に空きはございますか?」
そういえばあの白いのを少し食べただけで、食事らしい食事はできてなかったなぁ。食べたものの量を思い出すと途端にお腹が減ってきた。
「はい、まだまだ食べられま――」
――――バキィッ!
広い部屋に響く破壊音と飛んできた破片に言葉が止まる。慌てて破片から身を守ろうと顔を腕で庇ったが、目の下辺りに熱を感じ、触ってみると指先に少量の血がついた。
何事かと音のした方を見てみると、さっきまであったはずの扉が粉々に砕けている。
そこには破壊した扉を踏みつけて不敵に笑う男が立っていた。紫混じりの暗い赤髪を手櫛で整え、グレーの鋭い瞳はルルゥさんを睨んでいるようだ。
スチュワードとマグダは男からルルゥさんを守るように立ち、トゥイーニーさんはどこへいったのか姿がない。
「よぉ、お前がヴァンブラッドの女かよ。魔力の低い厄払いを押しつけられるなんてオヤジも舐められたもんだよなぁ?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。ヴァンブラッド家の長女、ルルゥ=ローゼン=ヴァンブラッドと申します。ディモニア家次男のディーヴィ=ディモニア様ですね」
ルルゥさんがソファーから立ち上がり丁寧なお辞儀をすると、ディーヴィと呼ばれた男はその姿を見て不機嫌そうにふん、と鼻を鳴らす。
「わたくしは礼儀正しいでございますわよってか?ヴァンブラッドはディモニアの権力狙いみてぇだが当てが外れたな。もうディモニア家なんてものはねぇんだよ」
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