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主人公は僕じゃない  作者: きゃんゆう
第一章 夜の国
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【条件②】


「早速で申し訳ございませんが、血を頂いてもよろしいですか?」

「え、もう?」

「すぐに済みますので」


白くて柔らかい手が僕の手を掴む。ルルゥさんのあまり長くない親指の爪が僕の手首をスッとなぞると、痛みは無いのに血が勢いよく流れ出した。


「うわっ!」


その血は重力を無視してルルゥさんのもう片方の手のひらの上に球体状に集まり、小さくキラキラ光る宝石のようなものに変化した。


「はい、終わりましたよ」


柔らかい手が離れると手首の出血や傷は嘘みたいに消えていて、宝石になってしまった血がコロンと僕の手に乗せられる。


「これは保存方法の一つで血液の結晶化です。液体のまま小瓶で保存もできますが、すぐに摂取できるので吸血鬼族は非常時用にこれを身につけてる方が多いんですよ」

「これを身につけるんですか」


この僕の血の結晶をルルゥさんがつける?なんか、なんというか……悪趣味だ。


宝石で着飾るルルゥさんを想像したけど、着飾る宝石全部が僕の血なのは……ちょっと嫌だなぁ。


「あの、少し前スチュワードさんに『いいタイミングで貴方が現れた』的なことを言われたんですが…なにかあるんですか」

「……。とても個人的なことなのですが、カル様にも関わることですので……そうですね、どこから説明しましょうか」


僕が返した宝石を手で遊びながらルルゥさんは困ったような顔をした。


さらりと流れる黒髪から覗く伏せがちの赤い瞳に、キラキラ光る赤い宝石が映っていてとても綺麗だ。


「夜の国は魔力が強く、統率力の高い種族が他の種族を統治する国です。私のお父様が当主を務めるヴァンブラッド家の吸血鬼族と、ディモニア家の悪魔(デビル)族が主な種族となります」

「二つだけなんですか」

「昔はそれぞれの種族が自由に暮らしていたのですが、食糧難や種族間の領土問題などで争いになったため、二種族が協力して統治したそうですよ」


国の規模もどれだけの種族がいるのかも知らないけど、二種族で他を統制するのはとても大変そうだ。


他を圧倒するほど強かったってことなんだろう。国のトップが二人いるのはそれはそれで争いになりそうなものだけど。


「昔はお祖父様と悪魔族の先代が友人関係にあったので両家の関係は良好だったんですが、お祖父様がお父様に統治権を譲られてから交流が途絶えてしまい、互いが治めていた種族も徐々に関係が悪化しつつあります」

「交流をとらないだけでなんで他の種族が悪化するんですか?」

「互いの情報が流れなくなると種族に関する悪い噂が飛び交い、本当に必要としているものがわからないために流通が滞り、その状態を利用して得をしようとする者達が現れます。吸血鬼族と悪魔族のどちらかが国を統治するべきという意見もありますが、それは難しくて」

「難しい?トップが二人いるより一人のほうがいいと思いますけど」

「いろいろ理由はありますが、どちらかの種族だけだとパワーバランスの釣り合いがとれないんです。統治する種族とその他全種族が対立したときに片方の種族だけでは数と力で押し負けてしまうので」


僕の村に村長はいたけどなにかするわけじゃなくて、『村長』と呼ばれていたお爺さんって感じだったからそんなもんかと思ってたけど、実際は上の人っていろいろ考えてるんだなぁ。


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