【実話怪談】長い箸
このお話は実際に私が体験したお話です。6年ほど前の話なのですが、実はその時もここに投稿しています。ただ、怪談としては書いていなかったのでまた新たに書き直して投稿しようと思った次第です。
6年前の9月に叔母が病気で亡くなりました。まだ40代でした。家がとても近く、歳の近いいとこがいたので叔母の家にはしょっちゅう通っていました。いとこ家族と出掛けたり、晩ご飯をご馳走になったり、叔母とも仲良くしていました。
危篤ということで私を含めた数人の親戚が病院に集められ、叔母を看取りました。私が着いた頃にはすでに意識がなく、心電図だけが僅かに揺れている状態でした。
しばらくするとまた別のいとこが来ました。変わり果てた叔母の姿にショックを隠しきれず、いとこは泣きながら病室を飛び出してしまいました。その直後に叔母は亡くなりました。私も泣きました。先生の言葉で初めて叔母の死を実感したからです。いとこの前で涙を見せたことはありませんでしたが、わんわん泣いてしまいました。みんな泣いていたのでおあいこです。
そこからは信じられないほどスムーズに進みました。葬儀屋がものの数分で到着し、叔母の遺体をいとこの家に運ぶと言って、数人で運んでいきました。
それから叔父が先生と少し話して、我々はいとこの家に向かいました。
あとは普通にお通夜をやって葬儀を出して、全部無事に終わりましたが、お通夜が1番辛かったと記憶しています。やはり年齢が年齢ですから、みんな信じられないんですよね。
全てが終わったその夜、私は奇妙な夢を見ました。
普段は何もない私の自宅の冷蔵庫の前が黒い壇になっていました。周りに比べてそこだけ1段高くなっているんです。
そしてその上には、髪の長い女性が仰向けで寝ていました。顔には白い布が被せてあったので誰かは分からなかったのですが、起きてから私は叔母だと直感しました。
叔母は動いていました。右手に持った異様に長い箸で何かを取ろうとゆっくりと手を動かしているのです。
ここで目が覚めました。文字で見るとなんてことのない夢かもしれませんが、私は夢として映像で見ているので、とても不気味で恐怖を覚えました。正直今でもトラウマになっています。
怖い夢を見た時は誰かに言うと良いという話を聞いていたので、すぐに同僚に話しました。
すると同僚が、「それ、天国で使う箸だよ」と言いました。私は天国で使う箸が何なのか分からなかったので、詳しく聞きました。
同僚の説明によると、天国に行くような人は優しいから長い箸でお互いに食べさせ合うが、地獄に行くような人は自分のことしか頭にないから箸が長すぎると食べられない、というものでした。
私はそんな話は聞いたこともなかったのでゾッとしました。しかしよく考えると、これは「天国に行けたよ」という叔母からのメッセージだったのかもしれないな、と思いました。
5年半前の私は「短く持てばええやん」「なんなら手づかみで食べればええやん」などとのたまっていましたが、これはそういうことではなく、お互い助け合うことの大切さを解いた話なのだろうなと今では思っています。
ちなみに私は過去に『夢殺人』というこの夢をテーマにした話を書いています。すごい神経してますよね、私。
夢殺人を読み返す度に夢で見たあの映像が蘇ります。あの光景は本当に不気味だったのです。禍々しさすらありました。本当に叔母なのか? という疑念もありますが、違ったら怖すぎるので叔母ということにしておきます。
実際にあれを見たのはこの世で私だけなので、この怖さが100%で伝わらないんだろうなと思うと少し悔しくなります。思い出すだけで鳥肌が立つんです。いつか脳内の映像が他人に送れるようになったら、私は真っ先に全世界の人にこの夢の映像を送って全員にトラウマを植え付けたいと思っています。