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明日菜


ーなんか、東京に行くことになっちゃった。


私は村上くんと話が終わって、歩きながら思う。真央も村上くんも、


ーあの日、の私を見てる。


ー見たくない。


はっきり村上くんはそう言ってたけど、東京に行ったら、そりゃあ、私なんなより、たくさんの美少女がいるだろうけど。


ーどこにいても目立つわよ?とことん目立ちましょう!


矛盾してない⁈


とは、思うんだ。目立ちたくないから、南九州の片田舎を離れて東京に行くのに、


ー目立ちに行くらしい。


でも、あの人なら、


ー私なら守れる。


そう不思議な力強さで言ってくれたのも、覚えてるし、村上くんのことは、認めてくれた。


ー彼氏がいてもいいのなら。


あの身勝手な怒りを、わかっちゃった。


ー村上くんにはメリットがないのに。たぶん、デメリットしかないのに。


それでも、


ー優しいね。私のストーカーは、ほんとうに、優しいんだ。真央も村上くんも、なんのメリットもないのに。


私はそっとまだ夜空を見上げてる村上くんを振り返っる。村上くんは、


ー見たくない。


って言った。ふと不思議に思う。


ーなにを見てきたの?


お姉ちゃんが、命名した、カエル。あの冬の屋上からはじまった、たくさんのアシスト。


直接会って、話したのは、今日がはじめてで、


ーわりと、ろくでもない初対面だった。


村上くんには、まったく悪気がなかったは、わかるけど。


ーはじまりが、あいうえお作文、ってナニ⁈


そりゃあ、日本が誇るひらがなのいちばん最初の文字だけど。


母音だし?


たんに発語しやすかったのかな?村上くん。不思議な調音、母音。


ーどうして、あいうえお?


は、子供なら誰でも疑問に思うけど、いつのまにか馴染んでしまう。


ー国語は問題に答えがあるから、問題文をよんだらいい。


国語の教師の常套句で、不思議とそう先生たちが言うなら、その通りで、


ー思い込みはめちゃくちゃ大事。


漢字のヒントすら、問題文にあるけど。


ー先生、推理作家になりたかったの?


あいうえおの、いちばん最初の1文字。


ーあ。


はじめのくせにむずかしい、


ーあ。


を、よりマシかなあ?


おはよう。おはよー。おはよを。


はじめて、使い分け他人たちは、耳がよかったのかなあ?私の脳裏に地下鉄で少し不安定だった真央の姿が星を見上げる村上くんに重なっていく。


少し独特の匂いや風や光や音は、それでも私はすぐ慣れた。そういうものだと思えるけど。


ー見たくない。


あの言葉を口にするくらいに、見た、のかな?


ー見たくない。


だって体験してないと、そんな言葉はでない。だって過去形だよね?


星空を不思議な瞳で見上げてる村上くんは、そのまま空気に混ざってしまっても、驚かないくらい、あやふやで儚く私にはみえた。


ふと思う。


ー見たくない。


そう村上くんや真央が思うなら、私だけが、


ー見なくていいんだよ?


そう私を守ろうとしてくれる、ふたりに伝えられるのかな?


ー私なら守れる。


守ってほしいは、ないけど、


ー私にも守れるの?


たくさんのアシスト。雨の日にこっそり現れては、人しれず姿を隠すのに、隠せない輝きを、儚さに泣きそうなほど、きれいな、


ーホタルの光。


不思議ない蛍光。


たくさんの光があるのに。


ー光が辛いんだ。


地下鉄の真央の姿を思い出す。


それでもこの世界で生きるしかないなら、


ー私が東京に行ったら、守ってあげられるのかな?


見たくない。


なら、


ー見なくていいよ?


そう教えてあげられるのかな?








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